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第11章 逃避の刑
第96話 僕達の世界
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ティエラと向かい合う様な形で席に着き、僕は話を始める。
僕の与える究極の絶望に関しての話だ。
「まず、死が全ての人間にとっての不幸だという認識こそが間違いだ。君と僕とではまず決定的にその認識が違う。時には死が生を上回る絶望に変貌する事だってある」
「何、宗教? 馬鹿じゃないの」
僕の言葉に、ティエラはパンを頬張りながら不快感に満ちた表情を浮かべる。
生と死に関しては、様々な見解がある。人それぞれの信仰が異なる様に、解釈も多種多様。
僕の持論もその内の一つに過ぎない。だが、僕にとっては確実な真実であり、答えであった。
「生きていれば、良い事がある。よく凡人共が口にする言葉だ。だが、果たしてそれは真実か? 全ての人間に対して……当てはまる言葉か?」
「まぁ、あんたみたいな人間には当てはまらないかもね」
ティエラは何の躊躇い無く吐き捨てる。だが、その通りだ。世界は平等では無い。僕の様な人間にとっては生き辛く、息苦しく、苦痛に満ちた空間でしか無かった。
僕と同じ様に醜く、弱い立場の人間からすれば、僕の言葉の意味を理解する事が出来るだろう。
「ああ、そうだ。では、葵はどうだ?」
「……?」
そして、この僕の言葉を……葵も知る事となるだろう。
世界とは非情だ、立場が変われば世界も変わる。まさに葵がそうではないか。
吹山 葵……姉と比べて引っ込み思案ではあったが、生真面目で成績も良く、容姿も優れていた。周囲からも将来を期待され、これからの人生は間違い無く有望なものだっただろう。
……僕に出会い、全てを壊されるまでは。
「誘拐され、薬漬けにされ、脳を弄られ欠損し、数々の傷と重い障害を負った彼女の人生に……光はあるのか?」
僕という人間により葵の立場と人生は一変した。薬物に塗れ、脳は破壊され、一人では生きられない程の廃人と化し、身も心も壊れ果て……葵の世界は変わった。
そして、その弱者へと堕落した葵に対して……この世界は優しくは無い。
「世の中には反吐の出る様な偽善者が腐る程いるじゃない。そういう連中にとっては『自己満足』の為の良い道具になるでしょ」
ティエラは半笑いで言う。
弱者へ自己満足として手を差し伸べる人間は確かにいる。
自身より弱く、惨めな存在を嘲笑いながら、自己満足の為にだけに手を差し伸べる様な輩が。
だが、そんなものもアテにはならない。
「そんなものは最初だけさ。報じられる事も無くなり、飽きられればそんな連中も途端に寄り付かなくなる。残るのは、心無い差別と迫害だけ」
「それでも……家族や友達は」
「表向きはそうかもね。けれど、家族や友人を巻き込み空虚に生き長らえる事は、果たして幸福なのか?」
僕の言葉に、ティエラはパンを頬張る事を止める。
自我も理性も無く、周囲を巻き込んだ末に肉の塊として生き長らえる事は……果たして幸福なのか?
「心も無く、ただ苦痛に苛まれながら、周囲を不幸にしながら生きる事が果たして幸福か? そうなれば考えるだろう。死んでしまいたい、死んでおくべきだった……と」
この世に無償の愛など存在しない。
僕によって壊された葵を、見返りも無く献身的に支える人間がいるか?
そして、多くの人間を巻き込み、失望させながら生きる事に……葵は耐えられるか?
どちらも無理な話だろう。そんな綺麗事が通じる様な世界ではない。
「生きていれば、いつかは救われる、茜はそう思い込んでいるからこそ葵を逃がした。だが、それは間違いだ。僕達の生きる世界は……そんなに優しくは無い」
僕はパンの欠片を飲み込み、ティエラへそう告げた。
僕の与える究極の絶望に関しての話だ。
「まず、死が全ての人間にとっての不幸だという認識こそが間違いだ。君と僕とではまず決定的にその認識が違う。時には死が生を上回る絶望に変貌する事だってある」
「何、宗教? 馬鹿じゃないの」
僕の言葉に、ティエラはパンを頬張りながら不快感に満ちた表情を浮かべる。
生と死に関しては、様々な見解がある。人それぞれの信仰が異なる様に、解釈も多種多様。
僕の持論もその内の一つに過ぎない。だが、僕にとっては確実な真実であり、答えであった。
「生きていれば、良い事がある。よく凡人共が口にする言葉だ。だが、果たしてそれは真実か? 全ての人間に対して……当てはまる言葉か?」
「まぁ、あんたみたいな人間には当てはまらないかもね」
ティエラは何の躊躇い無く吐き捨てる。だが、その通りだ。世界は平等では無い。僕の様な人間にとっては生き辛く、息苦しく、苦痛に満ちた空間でしか無かった。
僕と同じ様に醜く、弱い立場の人間からすれば、僕の言葉の意味を理解する事が出来るだろう。
「ああ、そうだ。では、葵はどうだ?」
「……?」
そして、この僕の言葉を……葵も知る事となるだろう。
世界とは非情だ、立場が変われば世界も変わる。まさに葵がそうではないか。
吹山 葵……姉と比べて引っ込み思案ではあったが、生真面目で成績も良く、容姿も優れていた。周囲からも将来を期待され、これからの人生は間違い無く有望なものだっただろう。
……僕に出会い、全てを壊されるまでは。
「誘拐され、薬漬けにされ、脳を弄られ欠損し、数々の傷と重い障害を負った彼女の人生に……光はあるのか?」
僕という人間により葵の立場と人生は一変した。薬物に塗れ、脳は破壊され、一人では生きられない程の廃人と化し、身も心も壊れ果て……葵の世界は変わった。
そして、その弱者へと堕落した葵に対して……この世界は優しくは無い。
「世の中には反吐の出る様な偽善者が腐る程いるじゃない。そういう連中にとっては『自己満足』の為の良い道具になるでしょ」
ティエラは半笑いで言う。
弱者へ自己満足として手を差し伸べる人間は確かにいる。
自身より弱く、惨めな存在を嘲笑いながら、自己満足の為にだけに手を差し伸べる様な輩が。
だが、そんなものもアテにはならない。
「そんなものは最初だけさ。報じられる事も無くなり、飽きられればそんな連中も途端に寄り付かなくなる。残るのは、心無い差別と迫害だけ」
「それでも……家族や友達は」
「表向きはそうかもね。けれど、家族や友人を巻き込み空虚に生き長らえる事は、果たして幸福なのか?」
僕の言葉に、ティエラはパンを頬張る事を止める。
自我も理性も無く、周囲を巻き込んだ末に肉の塊として生き長らえる事は……果たして幸福なのか?
「心も無く、ただ苦痛に苛まれながら、周囲を不幸にしながら生きる事が果たして幸福か? そうなれば考えるだろう。死んでしまいたい、死んでおくべきだった……と」
この世に無償の愛など存在しない。
僕によって壊された葵を、見返りも無く献身的に支える人間がいるか?
そして、多くの人間を巻き込み、失望させながら生きる事に……葵は耐えられるか?
どちらも無理な話だろう。そんな綺麗事が通じる様な世界ではない。
「生きていれば、いつかは救われる、茜はそう思い込んでいるからこそ葵を逃がした。だが、それは間違いだ。僕達の生きる世界は……そんなに優しくは無い」
僕はパンの欠片を飲み込み、ティエラへそう告げた。
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