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第13章 捕食の刑
第110話 魂の救済
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あれからどれだけの時間が経っただろう。僕は狂った様に時間を忘れ調理に没頭していた。
精密な味付け、盛り付け……どの部分であっても僕は一切手を抜こうとはしなかった。茜が口にするものに一切の妥協も許す事など出来ない。
何故なら、寸分の狂いも無い究極の美にこそ『神秘』と『加護』は宿るからだ。
汚れのない究極の美をもう一度与える事で……僕は再び本来の茜を取り戻す。
そして、今度こそ『理想の聖処女』として茜を迎え入れよう。
「お待たせしたね。二人とも」
ようやく調理が終了し、三人で食卓を囲む機会が訪れた。
疲れもあったが、それ以上に達成感の方が大きかった。
あともう少しで茜が取り戻せるのだ。そう考えれば疲れなど吹き飛んでしまう。
「今日は茜の為にとっておきの料理を作ったんだ。喜んでもらえると嬉しい」
僕は食卓の椅子に縛り付けられた、脳死状態の茜に笑顔で問い掛けるが、返答は勿論無い。
茜は変わらず、目を閉じたまま魂を失い、肉の人形と化している。
「なにを……するの」
すると、そんな僕へ食卓を囲むもう一人の少女が声を掛けた。
衰弱しきった様子で、ティエラは恐る恐る僕へ問う。
体に残った痛みと恐怖で、まともに眠る事も出来ていないのだろう。目の下にはくっきりと濃い隈が浮き上がっていた。
「そんなに警戒しなくても良いだろう。素材を提供してくれた君を抜いて食事を楽しむのが忍びないと思っただけさ」
手際良く料理を運び、二人の前に並べる僕にティエラは湿った声で懇願する。
「もぅ……やめて……ぇ」
「そう言わないでくれ。とても……良い香りが漂ってくるだろう? 茜もきっと喜んでくれる筈だ」
蓋をされた皿から僅かに漂ってくる香りが、ティエラの鼻腔を刺激する。
しかし、ティエラの表情は更に曇る。
「やだ、やだ……みたくない……みたくない……なにも、なにも……」
残った力を振り絞り、ティエラは椅子から逃れようとする。
だが、手も足も失った状態では僅かに椅子を揺らす程度しか出来ない。
天才と呼ばれた少女も、手足をもがれてしまえば芋虫となんら変わらない。
ティエラに残された道……それは、僕と茜の為に身も心も捧げる事だけなのだ。
「……行儀が悪いぞ。その目で見届けるんだ。自分の身体がどの様に彩られ、そしてどの様に食されるのかを」
そして、僕は覆い被さっていた蓋を取り外し、皿に盛られた料理を披露する。
銀の蓋を外すと、湯気と共に香ばしく濃い香りが漏れ出す。
豚や牛とは違う、独特の肉の香り……それだけでもこの肉が特別だという事を改めて実感させられる。
「う……っ……ぅ」
ティエラの口内には吐瀉物が逆流し、不自然な形で膨らむ。
それを吐き出さぬ様にと、ティエラ必死に吐瀉物を口の中で停滞させる。
「ティエラ、食卓を汚す様な真似は許さないぞ。食事が終わるまでそこで黙って見ているんだ」
涙を浮かべながらティエラは吐瀉物をせき止める。
今、ここで嘔吐し食事を台無しにすれば……更なる罰を与えられる事をティエラは知っているからだ。
そして、僕は並べられた料理の概要を二人へゆっくりと語り始める。
「ティエラの肉を十分に煮込み、シチューにしたんだ。美味しそうだろう? 口に入れた瞬間にとろけてしまいそうだ」
銀更にはとろみのあるシチューが満たされており、その中には新鮮な野菜、そして神聖な少女の肉で彩られている。
茜でも食べやすい様に柔らかく肉を煮込み、野菜も小さめにカットしてある。
「こっちは余った皮膚を油で揚げたんだ。衣も薄く付いていて、さくさくと食べる事が出来る」
白い皮膚に薄っすらと衣が付いた天麩羅。魚の白身の様に美しい。
殆ど処理も必要の無いくらいに質の高い皮膚だった為、調理も楽に済んだ。
スナック菓子の様に手軽に味を楽しむ事が出来る。
「そして、これが指を関節で切り落とし、串刺しにした。塩で食べるもの良いし、タレに浸して食べるのも良いだろう」
鉄製の串に指が突き刺さった串焼き。
関節の長さで切り揃えられ、強火で程良く焦がされた肉の香りに食欲をそそられる。
色々と味を楽しめる様に様々な調味料を用意したけれど、薄味好きの茜はやはり塩が一番のお気に入りだろう。
「どうだい? 究極の素材から究極の料理だ。神秘が宿り、これで茜……君の魂も……」
茜は何も言わなかったけれど、きっと……きっとこれらの料理達が魂の空腹を満たしてくれる。
僕はそう信じ、並べられた料理をスプーンで掬い、そして茜の口元へと運んだ。
精密な味付け、盛り付け……どの部分であっても僕は一切手を抜こうとはしなかった。茜が口にするものに一切の妥協も許す事など出来ない。
何故なら、寸分の狂いも無い究極の美にこそ『神秘』と『加護』は宿るからだ。
汚れのない究極の美をもう一度与える事で……僕は再び本来の茜を取り戻す。
そして、今度こそ『理想の聖処女』として茜を迎え入れよう。
「お待たせしたね。二人とも」
ようやく調理が終了し、三人で食卓を囲む機会が訪れた。
疲れもあったが、それ以上に達成感の方が大きかった。
あともう少しで茜が取り戻せるのだ。そう考えれば疲れなど吹き飛んでしまう。
「今日は茜の為にとっておきの料理を作ったんだ。喜んでもらえると嬉しい」
僕は食卓の椅子に縛り付けられた、脳死状態の茜に笑顔で問い掛けるが、返答は勿論無い。
茜は変わらず、目を閉じたまま魂を失い、肉の人形と化している。
「なにを……するの」
すると、そんな僕へ食卓を囲むもう一人の少女が声を掛けた。
衰弱しきった様子で、ティエラは恐る恐る僕へ問う。
体に残った痛みと恐怖で、まともに眠る事も出来ていないのだろう。目の下にはくっきりと濃い隈が浮き上がっていた。
「そんなに警戒しなくても良いだろう。素材を提供してくれた君を抜いて食事を楽しむのが忍びないと思っただけさ」
手際良く料理を運び、二人の前に並べる僕にティエラは湿った声で懇願する。
「もぅ……やめて……ぇ」
「そう言わないでくれ。とても……良い香りが漂ってくるだろう? 茜もきっと喜んでくれる筈だ」
蓋をされた皿から僅かに漂ってくる香りが、ティエラの鼻腔を刺激する。
しかし、ティエラの表情は更に曇る。
「やだ、やだ……みたくない……みたくない……なにも、なにも……」
残った力を振り絞り、ティエラは椅子から逃れようとする。
だが、手も足も失った状態では僅かに椅子を揺らす程度しか出来ない。
天才と呼ばれた少女も、手足をもがれてしまえば芋虫となんら変わらない。
ティエラに残された道……それは、僕と茜の為に身も心も捧げる事だけなのだ。
「……行儀が悪いぞ。その目で見届けるんだ。自分の身体がどの様に彩られ、そしてどの様に食されるのかを」
そして、僕は覆い被さっていた蓋を取り外し、皿に盛られた料理を披露する。
銀の蓋を外すと、湯気と共に香ばしく濃い香りが漏れ出す。
豚や牛とは違う、独特の肉の香り……それだけでもこの肉が特別だという事を改めて実感させられる。
「う……っ……ぅ」
ティエラの口内には吐瀉物が逆流し、不自然な形で膨らむ。
それを吐き出さぬ様にと、ティエラ必死に吐瀉物を口の中で停滞させる。
「ティエラ、食卓を汚す様な真似は許さないぞ。食事が終わるまでそこで黙って見ているんだ」
涙を浮かべながらティエラは吐瀉物をせき止める。
今、ここで嘔吐し食事を台無しにすれば……更なる罰を与えられる事をティエラは知っているからだ。
そして、僕は並べられた料理の概要を二人へゆっくりと語り始める。
「ティエラの肉を十分に煮込み、シチューにしたんだ。美味しそうだろう? 口に入れた瞬間にとろけてしまいそうだ」
銀更にはとろみのあるシチューが満たされており、その中には新鮮な野菜、そして神聖な少女の肉で彩られている。
茜でも食べやすい様に柔らかく肉を煮込み、野菜も小さめにカットしてある。
「こっちは余った皮膚を油で揚げたんだ。衣も薄く付いていて、さくさくと食べる事が出来る」
白い皮膚に薄っすらと衣が付いた天麩羅。魚の白身の様に美しい。
殆ど処理も必要の無いくらいに質の高い皮膚だった為、調理も楽に済んだ。
スナック菓子の様に手軽に味を楽しむ事が出来る。
「そして、これが指を関節で切り落とし、串刺しにした。塩で食べるもの良いし、タレに浸して食べるのも良いだろう」
鉄製の串に指が突き刺さった串焼き。
関節の長さで切り揃えられ、強火で程良く焦がされた肉の香りに食欲をそそられる。
色々と味を楽しめる様に様々な調味料を用意したけれど、薄味好きの茜はやはり塩が一番のお気に入りだろう。
「どうだい? 究極の素材から究極の料理だ。神秘が宿り、これで茜……君の魂も……」
茜は何も言わなかったけれど、きっと……きっとこれらの料理達が魂の空腹を満たしてくれる。
僕はそう信じ、並べられた料理をスプーンで掬い、そして茜の口元へと運んだ。
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