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第4話 罪の浄化Ⅱ
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それから父の葬式やお通夜が一通り終わり、何とか一段落がついた頃。
その間は忙しさで十年振りの再会を強く意識することも無かったが、全てが終わった今、ようやく母に報告ができる。
仕事、家族、そして真奈自身の十年間。母に話したいことは山ほどあった。
「父さん、随分痩せてたね。母さんも……」
「あれから十年だもの、歳も取るわ。みんな、同じよ」
居間で紅茶を並べて、真奈と母は他愛のない会話をしていた。
庭で幸せそうに遊ぶ夫と息子の悠斗を見ながら、母は力なく笑っていた。
初めて自身の孫の顔を見た母は、真奈の知る昔の厳しかった母からは考えられないくらい優しく、儚げな顔をしていた。
「けれど、安心したわ。あれからどう過ごしているのか心配していたけれど……こんな幸せそうな家庭を築いて」
「でも……私なんかが、良いのかな……幸せになっても」
母が幸せを祝福してくれるのは嬉しい。けれど、その度に由宇の存在が頭に過る。
あんな事件が無ければ、今頃は家族全員が幸せになれたのではないか。
事の発端である自分だけが、罪を忘れ、幸せになっていいのだろうか。真奈はどうしてもそんな疑問を払拭しきれなかった。
「……いいに決まっているじゃない。幸せになっちゃいけない人なんていないわ。由宇もきっとそれを望んでいる。精一杯、あなたが今を幸せに暮らす事が由宇に対する何よりの手向けであり、罪滅ぼしでもあるんだから」
母の言葉は優しすぎるくらいだった。自分の罪が改めて浄化された気分になって、真奈の目に涙が浮かぶ。
優しかった由宇なら、本当にそう思ってくれているかも知らないと、真奈は紅茶を口に含みながら考える。
「うん……ありがとう、母さん」
「ええ……けど、加奈もあなたみたいにうまく立ち直ってくれれば良かったのだけれど。うまくもいかないものね……」
その時、真奈は十年と言う時の中で完全に忘れていた妹・加奈の存在を思い出す。
加奈とはあの事件以来、連絡は一度も取っておらず、所在も不明だ。
だが、それは互いにとって賢明な判断だった。二人が会えば、嫌でも由宇の事件を思い出す。罪を忘れようとする真奈にとっては、加奈の存在は脅威でしかなかったからだ。
「加奈、そう言えばお葬式にも来なかったね……連絡はした?」
実の父が亡くなったのだ、真奈に連絡をしたのなら加奈にも声はかけたはず。それでも加奈が来ていないというのは、加奈自身の意思なのだろうか。
親の最期すら見送りたくない程、加奈は関係を拗らせていたのだろうか、などと真奈は考え込む。
「連絡も何も……実は、加奈はこの家で一緒に住んでいるの」
「え……?」
その時、母の口から衝撃的な現実が告げられた。
加奈はこの家に住んでいる。だが、実家に戻って来てから、真奈は加奈の姿など一度も目にしていない。
「けど、加奈の姿なんて一回も見てないよ……?」
「……生前、由宇が使っていた二階の部屋に、ずっと引きこもっているの」
母の話によると、加奈は四年前、突如として実家に戻ってきた。しばらくの間、自分の生活の面倒を見て欲しいと。
当然、厳格な父が許すわけも無かったが、なんと加奈は自分を住まわせないのなら近親相姦が原因で由宇が自殺したことを表に出すと脅してきた。
何よりも世間体を気にする父は、流石に逆らえなかったようで、それからも加奈は事あるごとにその手段で父を脅し、働きもせず今に至るまで引きこもり生活を続けてきたのだという。
「じゃあ、今も二階の部屋に……?」
「ええ……でも、ここ四年は部屋から出てすらないと思う。何をしているのかは分からないけど、あまり刺激すると怖いし、私もお父さんも極力関わらないようにしていたの」
亡き弟の部屋に住み着いた加奈は、普段何をしているかも分からないのだという。一度、父が部屋の踏み入ろうとしたときには加奈は狂ったように怒り、老いた父や母にまで暴力を振るったのだという。
加奈からの暴力の恐怖もあって、老いた両親は加奈を追い出す事が出来なかったのだ。
「あの子……両親を脅して、引きこもりだなんて……」
まさか、加奈が実の両親に寄生するような自堕落な生活を送っていたとは、知る余地も無かった。
同じ事件の当事者でありながら、真奈とは正反対の人生を歩んでいるのが妹・加奈だった。
「そう言わないであげて。加奈もきっとあの事件をすごく後悔している。多分、あの子は自分の罪と向き合っている最中だと思うの。だから、それまでは……」
「けど……もうあの子も、立ち直るべきよ! 未だに母さんを苦しめている加奈を、私は許せない」
そして、真奈が感情に任せ、声を荒げた……その時だった。
ぎし、ぎしと階段をゆっくりと下る足音がリビングに響く。
真奈の夫と息子の悠斗は庭で遊んでいる。二階には行っていないはず。
そうなれば、二階にいるのは……加奈しかいない。
そして、足音は更にこちらへ近づいてきた。そして居間の扉がゆっくりと開かれる。
「……あれぇ? お姉ちゃんじゃん、何してんの?」
「加奈……」
そこには、加奈が立っていた。伸びきった前髪で片目は隠れ、だらしない部屋着姿。
それに……身体中、包帯やガーゼだらけで、一部には血が滲んでいる異様な姿だった。
「騒がしいと思って降りてきたら……お姉ちゃんか。随分と綺麗になっちゃって。それに今じゃ幸せな家族持ち?! すごーい、同じ穴の狢でも、私とは大違い」
虚ろな眼で、庭で遊ぶ夫と悠斗を見て、手を振りながら加奈が言う。それを見て、息子の悠斗が加奈に手を振り返す。
それは祝福の台詞などではなく、真奈に対する皮肉と軽蔑の類の台詞だった。
「……あんた、父さんが亡くなったの知らないの? なんでお葬式にも顔出さなかったのよ、父さんは……」
事件から十年、変わり果てた自堕落な加奈の姿に真奈は苛立っていた。
真奈は事件後、立ち直るため……罪滅ぼしのためにも精一杯努力して幸せを勝ち取り、ここまで辿り着いた。
それとは対照的に、加奈は事件を悔やむどころか両親を脅すための材料とし、今もこうして自堕落な姿を晒している。
加奈は、懺悔も反省なども決してしていなことが一瞬で感じ取れた。
「だって、興味ないし。むしろ死んでくれて良かったくらい? うるさいのもいなくなったし、保険金だってあるんでしょ? 万々歳だねぇ」
加奈は父の遺影を目にすると、バカにしたように指を指して笑う。
加奈にとって父の死など既にどうでもいい事。きっと、由宇の自殺も同じように何も感じていなかったんだろう。
そんな加奈の態度に、真奈は怒りを抑えられず、加奈の胸倉を掴み上げる。
「加奈! あんたいい加減に……」
加奈は表情も変えず、真奈を見下す様な表情を保っていた。
「ふーん、随分と偉くなったんだねぇ、お姉ちゃん。今や新しい家族にとっては良き妻、良き母親だもんねぇ。けど、あたしはお姉ちゃんにそんな事言われる筋合いなんてないよ? だってあたしたち姉妹は……幼い弟を無理矢理犯した、最低最悪の変態の性犯罪者同士じゃん? 同じ穴の狢じゃん」
「……黙れ! 私は……あんたとは違う!」
同じ事件の当事者でも、真奈と加奈は違う。
現実から目を背け続け、今なお逃げ続けている奴なんかと一緒にされてたまるか。真奈は心の中で何度もそう叫び続けた。
罪を浄化した自分と、加奈を同列になどされて堪るか、そう思っていたからだ。
「何が違うのさ、紛れもなく由宇を殺したのは……私たち姉妹じゃん」
真奈がニタリといやらしい笑みを浮かべる。
それを目にした真奈は、無意識のうちに拳へと力を込め、加奈を殴りつける手前だった。
「二人とも、もうやめて……これ以上……互いを苦しめないであげて」
母が二人の間に入り、仲裁する。
これ以上、由宇の呪縛で娘たちが苦しみ、争う姿など見たくなかったのだ。
母は、娘たちが由宇の呪縛から解き放たれる日を、ずっと望んでいた。
「苦しんでいるようには見えないけどね。ちゃっかり結婚して子供まで作っちゃってさぁ。あんなことしておいて……まさか開き直ったの?」
「加奈、私たちもうあれから十年も生きているの。良い加減、由宇に縛られ続けてちゃ駄目だと思う。由宇の存在も、私たちの罪も全て浄化して、前向きに生きていくのが……私たちの罪滅ぼしになると思うの」
加奈を前に、真奈は臆することなく自身の考えを述べる。
二人の罪は許される事では無い。だからこそ、罪を認め、償い、浄化して前向きに生きていく。そうすることが最大の罪滅ぼしでもあり、由宇への手向け。
姉として、加害者として、それがすべきことだと真奈は考えていた。
「罪滅ぼし、ね。じゃあさ、私がお姉ちゃんみたく罪滅ぼしを望むなら、お姉ちゃんは協力してくれるわけ?」
「……当たり前よ。元はと言えば……全ての元凶は私だもの」
あの頃、自身の欲を満たすためだけに身勝手な凶行に及んだ愚かな自分を、真奈は悔いている。
加奈はそれを読み取ったのか、再び蛇のような冷たく卑しい笑みを浮かべる。
「へぇ……じゃあ、最後まで付き合ってもらうからね、お姉ちゃん。私の罪滅ぼしに」
それだけを言い残し、加奈は再び二階の部屋へと戻ろうとする。
「ちょっと、加奈! まだ話は……」
部屋に戻ろうとする加奈を、真奈は引き留めようとする。
しかし、その腕を掴む前に加奈は真奈の耳元で、冷たく悍ましい言葉が囁かれた。
「……忘れるなんて、許さないから」
加奈の狂気を孕んだ言葉に、真奈は思わず加奈を引き留める事を躊躇ってしまった。
そしてこの時、真奈はまだ気付く事が出来なかった。
加奈の言葉に潜んでいた、恐るべき狂気の存在に。
実家での後始末も終わり、真奈は再び多忙な日常に戻る。
仕事、育児に追われ、由宇の事を考える時間も無いくらいに充実した日々。
だが、そんな日常も気付かぬうちに『狂気』が浸食し始めていた。
その間は忙しさで十年振りの再会を強く意識することも無かったが、全てが終わった今、ようやく母に報告ができる。
仕事、家族、そして真奈自身の十年間。母に話したいことは山ほどあった。
「父さん、随分痩せてたね。母さんも……」
「あれから十年だもの、歳も取るわ。みんな、同じよ」
居間で紅茶を並べて、真奈と母は他愛のない会話をしていた。
庭で幸せそうに遊ぶ夫と息子の悠斗を見ながら、母は力なく笑っていた。
初めて自身の孫の顔を見た母は、真奈の知る昔の厳しかった母からは考えられないくらい優しく、儚げな顔をしていた。
「けれど、安心したわ。あれからどう過ごしているのか心配していたけれど……こんな幸せそうな家庭を築いて」
「でも……私なんかが、良いのかな……幸せになっても」
母が幸せを祝福してくれるのは嬉しい。けれど、その度に由宇の存在が頭に過る。
あんな事件が無ければ、今頃は家族全員が幸せになれたのではないか。
事の発端である自分だけが、罪を忘れ、幸せになっていいのだろうか。真奈はどうしてもそんな疑問を払拭しきれなかった。
「……いいに決まっているじゃない。幸せになっちゃいけない人なんていないわ。由宇もきっとそれを望んでいる。精一杯、あなたが今を幸せに暮らす事が由宇に対する何よりの手向けであり、罪滅ぼしでもあるんだから」
母の言葉は優しすぎるくらいだった。自分の罪が改めて浄化された気分になって、真奈の目に涙が浮かぶ。
優しかった由宇なら、本当にそう思ってくれているかも知らないと、真奈は紅茶を口に含みながら考える。
「うん……ありがとう、母さん」
「ええ……けど、加奈もあなたみたいにうまく立ち直ってくれれば良かったのだけれど。うまくもいかないものね……」
その時、真奈は十年と言う時の中で完全に忘れていた妹・加奈の存在を思い出す。
加奈とはあの事件以来、連絡は一度も取っておらず、所在も不明だ。
だが、それは互いにとって賢明な判断だった。二人が会えば、嫌でも由宇の事件を思い出す。罪を忘れようとする真奈にとっては、加奈の存在は脅威でしかなかったからだ。
「加奈、そう言えばお葬式にも来なかったね……連絡はした?」
実の父が亡くなったのだ、真奈に連絡をしたのなら加奈にも声はかけたはず。それでも加奈が来ていないというのは、加奈自身の意思なのだろうか。
親の最期すら見送りたくない程、加奈は関係を拗らせていたのだろうか、などと真奈は考え込む。
「連絡も何も……実は、加奈はこの家で一緒に住んでいるの」
「え……?」
その時、母の口から衝撃的な現実が告げられた。
加奈はこの家に住んでいる。だが、実家に戻って来てから、真奈は加奈の姿など一度も目にしていない。
「けど、加奈の姿なんて一回も見てないよ……?」
「……生前、由宇が使っていた二階の部屋に、ずっと引きこもっているの」
母の話によると、加奈は四年前、突如として実家に戻ってきた。しばらくの間、自分の生活の面倒を見て欲しいと。
当然、厳格な父が許すわけも無かったが、なんと加奈は自分を住まわせないのなら近親相姦が原因で由宇が自殺したことを表に出すと脅してきた。
何よりも世間体を気にする父は、流石に逆らえなかったようで、それからも加奈は事あるごとにその手段で父を脅し、働きもせず今に至るまで引きこもり生活を続けてきたのだという。
「じゃあ、今も二階の部屋に……?」
「ええ……でも、ここ四年は部屋から出てすらないと思う。何をしているのかは分からないけど、あまり刺激すると怖いし、私もお父さんも極力関わらないようにしていたの」
亡き弟の部屋に住み着いた加奈は、普段何をしているかも分からないのだという。一度、父が部屋の踏み入ろうとしたときには加奈は狂ったように怒り、老いた父や母にまで暴力を振るったのだという。
加奈からの暴力の恐怖もあって、老いた両親は加奈を追い出す事が出来なかったのだ。
「あの子……両親を脅して、引きこもりだなんて……」
まさか、加奈が実の両親に寄生するような自堕落な生活を送っていたとは、知る余地も無かった。
同じ事件の当事者でありながら、真奈とは正反対の人生を歩んでいるのが妹・加奈だった。
「そう言わないであげて。加奈もきっとあの事件をすごく後悔している。多分、あの子は自分の罪と向き合っている最中だと思うの。だから、それまでは……」
「けど……もうあの子も、立ち直るべきよ! 未だに母さんを苦しめている加奈を、私は許せない」
そして、真奈が感情に任せ、声を荒げた……その時だった。
ぎし、ぎしと階段をゆっくりと下る足音がリビングに響く。
真奈の夫と息子の悠斗は庭で遊んでいる。二階には行っていないはず。
そうなれば、二階にいるのは……加奈しかいない。
そして、足音は更にこちらへ近づいてきた。そして居間の扉がゆっくりと開かれる。
「……あれぇ? お姉ちゃんじゃん、何してんの?」
「加奈……」
そこには、加奈が立っていた。伸びきった前髪で片目は隠れ、だらしない部屋着姿。
それに……身体中、包帯やガーゼだらけで、一部には血が滲んでいる異様な姿だった。
「騒がしいと思って降りてきたら……お姉ちゃんか。随分と綺麗になっちゃって。それに今じゃ幸せな家族持ち?! すごーい、同じ穴の狢でも、私とは大違い」
虚ろな眼で、庭で遊ぶ夫と悠斗を見て、手を振りながら加奈が言う。それを見て、息子の悠斗が加奈に手を振り返す。
それは祝福の台詞などではなく、真奈に対する皮肉と軽蔑の類の台詞だった。
「……あんた、父さんが亡くなったの知らないの? なんでお葬式にも顔出さなかったのよ、父さんは……」
事件から十年、変わり果てた自堕落な加奈の姿に真奈は苛立っていた。
真奈は事件後、立ち直るため……罪滅ぼしのためにも精一杯努力して幸せを勝ち取り、ここまで辿り着いた。
それとは対照的に、加奈は事件を悔やむどころか両親を脅すための材料とし、今もこうして自堕落な姿を晒している。
加奈は、懺悔も反省なども決してしていなことが一瞬で感じ取れた。
「だって、興味ないし。むしろ死んでくれて良かったくらい? うるさいのもいなくなったし、保険金だってあるんでしょ? 万々歳だねぇ」
加奈は父の遺影を目にすると、バカにしたように指を指して笑う。
加奈にとって父の死など既にどうでもいい事。きっと、由宇の自殺も同じように何も感じていなかったんだろう。
そんな加奈の態度に、真奈は怒りを抑えられず、加奈の胸倉を掴み上げる。
「加奈! あんたいい加減に……」
加奈は表情も変えず、真奈を見下す様な表情を保っていた。
「ふーん、随分と偉くなったんだねぇ、お姉ちゃん。今や新しい家族にとっては良き妻、良き母親だもんねぇ。けど、あたしはお姉ちゃんにそんな事言われる筋合いなんてないよ? だってあたしたち姉妹は……幼い弟を無理矢理犯した、最低最悪の変態の性犯罪者同士じゃん? 同じ穴の狢じゃん」
「……黙れ! 私は……あんたとは違う!」
同じ事件の当事者でも、真奈と加奈は違う。
現実から目を背け続け、今なお逃げ続けている奴なんかと一緒にされてたまるか。真奈は心の中で何度もそう叫び続けた。
罪を浄化した自分と、加奈を同列になどされて堪るか、そう思っていたからだ。
「何が違うのさ、紛れもなく由宇を殺したのは……私たち姉妹じゃん」
真奈がニタリといやらしい笑みを浮かべる。
それを目にした真奈は、無意識のうちに拳へと力を込め、加奈を殴りつける手前だった。
「二人とも、もうやめて……これ以上……互いを苦しめないであげて」
母が二人の間に入り、仲裁する。
これ以上、由宇の呪縛で娘たちが苦しみ、争う姿など見たくなかったのだ。
母は、娘たちが由宇の呪縛から解き放たれる日を、ずっと望んでいた。
「苦しんでいるようには見えないけどね。ちゃっかり結婚して子供まで作っちゃってさぁ。あんなことしておいて……まさか開き直ったの?」
「加奈、私たちもうあれから十年も生きているの。良い加減、由宇に縛られ続けてちゃ駄目だと思う。由宇の存在も、私たちの罪も全て浄化して、前向きに生きていくのが……私たちの罪滅ぼしになると思うの」
加奈を前に、真奈は臆することなく自身の考えを述べる。
二人の罪は許される事では無い。だからこそ、罪を認め、償い、浄化して前向きに生きていく。そうすることが最大の罪滅ぼしでもあり、由宇への手向け。
姉として、加害者として、それがすべきことだと真奈は考えていた。
「罪滅ぼし、ね。じゃあさ、私がお姉ちゃんみたく罪滅ぼしを望むなら、お姉ちゃんは協力してくれるわけ?」
「……当たり前よ。元はと言えば……全ての元凶は私だもの」
あの頃、自身の欲を満たすためだけに身勝手な凶行に及んだ愚かな自分を、真奈は悔いている。
加奈はそれを読み取ったのか、再び蛇のような冷たく卑しい笑みを浮かべる。
「へぇ……じゃあ、最後まで付き合ってもらうからね、お姉ちゃん。私の罪滅ぼしに」
それだけを言い残し、加奈は再び二階の部屋へと戻ろうとする。
「ちょっと、加奈! まだ話は……」
部屋に戻ろうとする加奈を、真奈は引き留めようとする。
しかし、その腕を掴む前に加奈は真奈の耳元で、冷たく悍ましい言葉が囁かれた。
「……忘れるなんて、許さないから」
加奈の狂気を孕んだ言葉に、真奈は思わず加奈を引き留める事を躊躇ってしまった。
そしてこの時、真奈はまだ気付く事が出来なかった。
加奈の言葉に潜んでいた、恐るべき狂気の存在に。
実家での後始末も終わり、真奈は再び多忙な日常に戻る。
仕事、育児に追われ、由宇の事を考える時間も無いくらいに充実した日々。
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