ヒビキとクロードの365日

７月

7月17日『東京の日』

『まもなく終点、東京です。中央線、山手線、京浜東北線、東海道線、横須賀線、総武線、京葉線と東北、上越、長野新幹線はお乗り換えです。お降りの時は足元にご注意ください。今日も新幹線をご利用くださいましてありがとうございました』

　ヒビキ「あ、そろそろ着くよ、クロード」

クロード「列車旅行、前回から続いているのですね。目的地は『東京』ですか」

　ヒビキ「うん。だって今日7月17日は『東京の日』だからね」

クロード「『東京の日』ですか？　何か特別な出来事でもあったのですか？」

　ヒビキ「慶応4年（明治元年）、旧暦7月17日（1868年9月3日）に、明治天皇の勅命で『江戸』が『東京（とうけい）』に改称された記念日だね」

クロード「とうけい？　とうきょうではないのですか？」

　ヒビキ「西の都で『京都』に対して東の都『東京』という名前にすることは決まったんだけど、読み方については明確に決まっていなかったみたいだね。正規に『とうきょう（とうきやう）』という読みが使われていたらしいけど、明治20年くらいまでは漢音読みの習慣が残っていたから『とうけい』と読む人も結構いたみたいだよ」

クロード「『とうけい』とは、現代人からしてみれば違和感バリバリですね」

　ヒビキ「日刊新聞が発達していって情報共有の機会が広まって、国語の教科書で『東京』の振り仮名が『トーキョー』と表記されるようになってからは読み方が統一されていったそうだよ。まあ、漢字についてはしばらく『東京』と『東亰』が混用されていたらしいけど」

クロード「読みも違えば表記も違うとは、なかなか混迷な時代だったようですね」

　ヒビキ「昔は文語と口語が区別されていたし、明治時代には口語体を用いて文章を書く『言文一致運動』が起こったりして、文字の扱いが色々大変だったみたいだよ」

クロード「まあ、読みも表記も統一されてよかったです」

　ヒビキ「うん、俺の時代には面倒がなくてよかったよ。といっても、実は東京ってちょっと不思議な都市なんだけど」

クロード「不思議ですか……人口が多くて入り組んだ都市だとは思いますが……」

　ヒビキ「東京は事実上の日本の首都だけど、現在においても天皇による遷都宣言がなされていない都市なんだ。そのうえ東京が日本の首都であるという法的根拠も存在しない。天皇も政府も公式に首都と宣言していないのに誰もが首都だと思っている都市、それが東京なんだよ」

クロード「既成事実のもとに成立している首都というわけですか」

　ヒビキ「まあ、首都としてきちんと機能しているんだから問題はないんだけどね」

クロード「確かにそうですね。おや、列車が止まりましたよ、ヒビキ様」

　ヒビキ「みたいだね。それじゃあ、行こうか、東京へ」



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その他の記念日『漫画の日』
※1841年7月17日。
※イギリスで風刺漫画週刊誌『パンチ』が発刊されたことを記念して。

　ヒビキ「漫画の日って11月3日とか2月9日とかいろいろあるみたいだね」
クロード「なぜそんなにあるのですか？」
　ヒビキ「11月3日は手塚治虫さんの誕生日、2月9日は同氏の死没日だね」
クロード「マンガの神様の影響力は特大ですね」