ヒビキとクロードの365日

１２月

12月30日『日本レコード大賞』

クロード「おや、ヒビキ様、こたつに入りながらお茶をすすり、みかんを食べながらテレビに釘付けとは……まあ、いつものことでしたね。はぁ」

　ヒビキ「何？　まるで俺が堕落の化身になったかのような蔑みの目は」

クロード「む、いけませんね。私ももう少しポーカーフェイルを学ばなくては」

　ヒビキ「否定しないんだね。でも、しょうがないんだよ」

クロード「何がですか？」

　ヒビキ「今日12月30日は『日本レコード大賞』の日だからね！」

クロード「れこーど大賞？　ヒビキ様の国では確か『れこーど』は既にアンティークの一種だったはずですよね？　そんなものの何を競うのですか？」

　ヒビキ「違う違う。『日本レコード大賞』は、スポーツ紙を含む各新聞社の記者が中心となって決定する音楽賞のことだよ。1959年から始まった企画で、当時の音楽媒体が主にレコードだったからそういう名前になったんじゃないかな」

クロード「ほぉ、今年で60年も続いているのですか。何気に凄いですね。毎年12月30日に開催されているのですか？」

　ヒビキ「初回は1959年12月27日だよ。しばらくはまちまちで、1969年から2005年までは毎年12月31日、つまり大晦日の一大イベントとして君臨していたね。12月30日開催が定例化したのは2006年からだよ」

クロード「ふむ、それはまたどうして」

　ヒビキ「まあ、ぶっちゃけちゃうと視聴率低下が原因だろうね。一時期は視聴率50パーセントを越えたこともある番組だけど、2005年の時点でとうとう10パーセントになってしまったんだ。要するに大晦日のゴールデンを任せられなくなったんだね」

クロード「せ、世知辛い話ですね……」

　ヒビキ「でも、12月30日に変更してから視聴率は回復傾向にあるみたいだし、てこ入れはちょっと成功してるんじゃないかな」

クロード「それはよかったですね。それで、これにはどんな賞があるのですか？」

　ヒビキ「いろいろあるよ。『最優秀作品賞』『新人賞』『特別賞』『最優秀アルバム賞』『優秀アルバム賞』『最優秀歌唱賞』『作曲賞』『作詞賞』『編曲賞』『企画賞』……」

クロード「えっと、まだあるんですか？　というか、『作曲賞』と『編曲賞』は何が違うのでしょうか？　それに最優秀と優秀の差はどうやって決めるのでしょうか？」

　ヒビキ「いや、俺に聞かれても。そういえば、この審査基準に関しては昔から批判があるらしいよ」

クロード「批判？」

　ヒビキ「いわゆる『やらせ』じゃないかって話。レコード会社や芸能事務所が審査員に働きかけたんじゃないかとか、審査をする前から決まってたんじゃないかとか。視聴率が低下したのも、そういった疑惑が原因のひとつだろうね」

クロード「それはそれは。確かにまったりゆったり過ごしたい年の瀬には不似合いな話題ですね。それで、実際のところどうなのです？」

　ヒビキ「いや、俺が知るわけないでしょ。番組自体は面白いんだからそれでいいじゃない。俺自身には関係ないしね。それよりそろそろ番組が始まるからそっちに集中しようよ。あ、始まった！　わーい！　パチパチパチパチ！」

クロード「……純粋なんだかドライなんだか微妙なところですね。パチパチパチ！」




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その他の記念日『地下鉄記念日』
※1927年12月30日。
※上野―浅草間に日本初の地下鉄（現・東京メトロ銀座線）が開通した。

クロード「上野・浅草間？　普通に歩ける距離なのになぜ地下鉄なんて」
　ヒビキ「いや、うん。異世界基準だと確かに不要な距離だろうけどさ……」