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1.ギルド編
第31話 予兆
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「ここか……」
それから歩くこと十数分で、僕は最初ダイウルフが見かけられたというその場所にたどり着いていた。
最初ダイウルフを見かけたのはDランクの冒険者だったらしい。
というのも、ここら辺は本来そこまで強い魔獣が出る場所ではないのだ。
昔はともかく、今は森が切り開かれ、ここらにいた凶悪な魔獣達はもう過去に狩られている。
なのに本来この場所にはいないはずのダイウルフが見つけられ、急いでギルドに報告した、それが昨日のことらしい。
つまり、幾らダイウルフでも昨日見た時点の5匹から数が増えることはない。
1日では繁殖能力の高いゴブリンでも数が増えることはないだろう。
そして、もしかしたら索敵に出ていてDランク冒険者が見逃した一体がいたとしても最大6体程度の群れになるらしい。
「……どちらにしてもC級の中でも簡単な部類であることは間違い無いけどね」
そんなことが書かれた依頼書を眺め、ぽつりと僕はそう呟いた。
ダイウルフは一体増えるだけで、掛け算方式で群れの厄介さが上がって行く。
だが、五体や六体であれば決してCランクでも難しくない依頼だろう。
「……ただ付いてくるだけかよ」
だからといって全く口を出さないでいいというわけで無いだろうにと、ギルド職員の姿に僕は小さく吐き捨てた。
後ろから付いてくるギルド職員、彼らはただ付いてくるだけだった。
そう最初から今まで。
ダイウルフの痕跡は魔獣の中では見つけやすいものではある。
そしてシュライトさんに教えてもらった僕はその痕跡の見分け方を覚えてはいたが、その知識を使うのは今日が初めてでまったく自信がなかった。
……湿地での痕跡の見分け方ならば、かなり自信があるが。正直、それは欲しくなかった。
「本当にこれであっているのかね……」
そして、そう自信なさげに呟く僕は気づいていなかった。
「……おい、こいつ推薦でCランクに来たんだよな?」
「……何でこんなに的確に痕跡見抜けているんだよ」
僕から距離をとったところで、ギルド職員達がそう小声で戦慄していることに……
◇◆◇
「……やっぱりおかしい」
そしてそれからさらに進んでいくに連れて僕は微かな異常を感じ始めていた。
目の前にあるのはダイウルフのフンと思わしきもの。
見た目はほかのダイウルフのものとは区別はつかない。
けれども、それは明らかにおかしかった。
何故なら、その周りの草が枯れているのだから。
ここは上に木がないひらけた場所で、だからこそ下には背の低い草が青々と生え茂っていた。
けれども、そのフンのそばにある草は毒々しく変色し、そして枯れていた。
その草の色、それは毒々しいといえども決して取り立てて目を引く色ではなかった。
僕も下を向いていてもなお、痕跡のそばになければ見逃してしまったいたようなそんな存在。
ここは未だDランク冒険者の狩場で、報告がきていないということはそれは今までさまざまな人に見逃されて来たのだろう。
けれども、その草の色に僕は危機感を抱いた。
頭に浮かぶのはかつてシュライトさんから聞いたダイウルフの変異種の存在。
ポイズンウルフと呼ばれる、そんな種類。
その変異種は名前の通り、毒を見に宿すようになったダイウルフ。
そしてそれだけ聞けばただ、ダイウルフが少し強くなった程度のイメージしかわからない。
けれども、実態は違う。
この世界の毒には大きく二種類のものが存在する。
一つは元の世界にもあった、化学物質。
身体の機能を阻害し、死に至らしめるそんな毒。
そしてもう一つ、魔術と呼ばれるそんな超常の力がある。
その原理は僕にはよくわかっていない。
そんな存在があるとシュライトさんに聞いただけでしかない。
それは対象の存在、魂を蝕む毒。
それは決して化学物質のように身体の機能を損なわせるのではない。
存在、魂自体を歪めるそんな毒。
そしてポイズンウルフの使うのはその魂を蝕む毒。
ポイズンウルフ自体の戦闘能力は決してダイウルフよりも遥かに強いなんて訳ではない。
けれども、ポイズンウルフは即死させなければならない。
そうでなければここら一帯を汚染する猛毒を発する。
その毒の効果時間は決して長くはないだろう。
一週間程度でその毒は浄化される。
魂を蝕む毒のほとんどは半永久的に汚染を続けることを考慮すれば比較的優しいと言えるかもしれない。
けれども、その一週間でこのギルドと周辺の街は壊滅する可能性がある。
「応援を呼んでください!ポイズンウルフがいる可能性があります!」
だからそのことに気づいた時、僕はそうギルド職員に向かって叫んでいた。
どう対処すればいいか、それを僕は一応シュライトさんに教えてもらっている。
けれどもそのためには大多数の人間の協力が必要不可欠だ。
「はぁ?お前、何言ってるんだ」
けれども、その僕の言葉はギルド職員に笑い飛ばされた。
「そんな色の草ぐらいどこだってある!意味のわからないことを言うな」
「っ!」
その言葉に一瞬、僕は苛立ちを覚える。
けれども、その苛立ちはすぐに霧散していった。
たしかに僕はこの森のことなど知らない。
それにポイズンウルフのことだってシュライトさんに聞いただけなのだ。
だとしたら、ギルド職員のいうことの方が正しいのだろう……
「ふん」
しかし、そう考えた僕は気づいていなかった。
ギルド職員の言葉、それは僕に見栄を張るためのよく確かめもしない言葉だったことを。
そしてこの後、僕は自分の知識を信じるべきだったと後悔することになることを……
それから歩くこと十数分で、僕は最初ダイウルフが見かけられたというその場所にたどり着いていた。
最初ダイウルフを見かけたのはDランクの冒険者だったらしい。
というのも、ここら辺は本来そこまで強い魔獣が出る場所ではないのだ。
昔はともかく、今は森が切り開かれ、ここらにいた凶悪な魔獣達はもう過去に狩られている。
なのに本来この場所にはいないはずのダイウルフが見つけられ、急いでギルドに報告した、それが昨日のことらしい。
つまり、幾らダイウルフでも昨日見た時点の5匹から数が増えることはない。
1日では繁殖能力の高いゴブリンでも数が増えることはないだろう。
そして、もしかしたら索敵に出ていてDランク冒険者が見逃した一体がいたとしても最大6体程度の群れになるらしい。
「……どちらにしてもC級の中でも簡単な部類であることは間違い無いけどね」
そんなことが書かれた依頼書を眺め、ぽつりと僕はそう呟いた。
ダイウルフは一体増えるだけで、掛け算方式で群れの厄介さが上がって行く。
だが、五体や六体であれば決してCランクでも難しくない依頼だろう。
「……ただ付いてくるだけかよ」
だからといって全く口を出さないでいいというわけで無いだろうにと、ギルド職員の姿に僕は小さく吐き捨てた。
後ろから付いてくるギルド職員、彼らはただ付いてくるだけだった。
そう最初から今まで。
ダイウルフの痕跡は魔獣の中では見つけやすいものではある。
そしてシュライトさんに教えてもらった僕はその痕跡の見分け方を覚えてはいたが、その知識を使うのは今日が初めてでまったく自信がなかった。
……湿地での痕跡の見分け方ならば、かなり自信があるが。正直、それは欲しくなかった。
「本当にこれであっているのかね……」
そして、そう自信なさげに呟く僕は気づいていなかった。
「……おい、こいつ推薦でCランクに来たんだよな?」
「……何でこんなに的確に痕跡見抜けているんだよ」
僕から距離をとったところで、ギルド職員達がそう小声で戦慄していることに……
◇◆◇
「……やっぱりおかしい」
そしてそれからさらに進んでいくに連れて僕は微かな異常を感じ始めていた。
目の前にあるのはダイウルフのフンと思わしきもの。
見た目はほかのダイウルフのものとは区別はつかない。
けれども、それは明らかにおかしかった。
何故なら、その周りの草が枯れているのだから。
ここは上に木がないひらけた場所で、だからこそ下には背の低い草が青々と生え茂っていた。
けれども、そのフンのそばにある草は毒々しく変色し、そして枯れていた。
その草の色、それは毒々しいといえども決して取り立てて目を引く色ではなかった。
僕も下を向いていてもなお、痕跡のそばになければ見逃してしまったいたようなそんな存在。
ここは未だDランク冒険者の狩場で、報告がきていないということはそれは今までさまざまな人に見逃されて来たのだろう。
けれども、その草の色に僕は危機感を抱いた。
頭に浮かぶのはかつてシュライトさんから聞いたダイウルフの変異種の存在。
ポイズンウルフと呼ばれる、そんな種類。
その変異種は名前の通り、毒を見に宿すようになったダイウルフ。
そしてそれだけ聞けばただ、ダイウルフが少し強くなった程度のイメージしかわからない。
けれども、実態は違う。
この世界の毒には大きく二種類のものが存在する。
一つは元の世界にもあった、化学物質。
身体の機能を阻害し、死に至らしめるそんな毒。
そしてもう一つ、魔術と呼ばれるそんな超常の力がある。
その原理は僕にはよくわかっていない。
そんな存在があるとシュライトさんに聞いただけでしかない。
それは対象の存在、魂を蝕む毒。
それは決して化学物質のように身体の機能を損なわせるのではない。
存在、魂自体を歪めるそんな毒。
そしてポイズンウルフの使うのはその魂を蝕む毒。
ポイズンウルフ自体の戦闘能力は決してダイウルフよりも遥かに強いなんて訳ではない。
けれども、ポイズンウルフは即死させなければならない。
そうでなければここら一帯を汚染する猛毒を発する。
その毒の効果時間は決して長くはないだろう。
一週間程度でその毒は浄化される。
魂を蝕む毒のほとんどは半永久的に汚染を続けることを考慮すれば比較的優しいと言えるかもしれない。
けれども、その一週間でこのギルドと周辺の街は壊滅する可能性がある。
「応援を呼んでください!ポイズンウルフがいる可能性があります!」
だからそのことに気づいた時、僕はそうギルド職員に向かって叫んでいた。
どう対処すればいいか、それを僕は一応シュライトさんに教えてもらっている。
けれどもそのためには大多数の人間の協力が必要不可欠だ。
「はぁ?お前、何言ってるんだ」
けれども、その僕の言葉はギルド職員に笑い飛ばされた。
「そんな色の草ぐらいどこだってある!意味のわからないことを言うな」
「っ!」
その言葉に一瞬、僕は苛立ちを覚える。
けれども、その苛立ちはすぐに霧散していった。
たしかに僕はこの森のことなど知らない。
それにポイズンウルフのことだってシュライトさんに聞いただけなのだ。
だとしたら、ギルド職員のいうことの方が正しいのだろう……
「ふん」
しかし、そう考えた僕は気づいていなかった。
ギルド職員の言葉、それは僕に見栄を張るためのよく確かめもしない言葉だったことを。
そしてこの後、僕は自分の知識を信じるべきだったと後悔することになることを……
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