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1.ギルド編
第41話 決着
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「気持ち悪いほど、良いタイミングだ」
ギルド職員の魔法、それで生み出されたのは雷だった。
それも電気を流しただけの似非雷なんかではない。
200万ボルトも軽く超えているだろう、自然現象並みの、そんな超威力のものだった。
そんなものは、幾ら詠唱を行おうと本来生み出すことのできるはずもない存在だった。
魔力操作ならともかく、ただ魔術でそんな威力を生み出すことなんてできない。
なら何故、こんな魔術をギルド職員が使えたのか。
その答えを悟って僕は笑った。
これは魔術なんかではない。
死にかけの状態から、先程蘇ったというのにその次の瞬間には雷を放ったギルド職員。
「うぉぉぉぉぉお!」
雄叫びをあげる彼の中身体の中にはとんでもない魔力の循環が行われていた。
それは決して魔術なんかではない証拠だった。
何故なら魔術ならば身体の中に魔力は循環しないし、そしてこんな威力も生まれないからだ。
考えられるとしたら、魔力操作の方が高い。
何せ、魔力操作は死にかけることによって魔力を感じるのが一番最初のステップなのだから。
けれども、この雷は魔力操作なんかでもない。
何故なら魔力操作でできるのはあくまで自分の身体の強化だけだ。
それ以外にはなんの目的にも使うことはできない。
単純に身体を回す、それ以外には使えない技術なのだから。
それに彼の身体で巡っている魔力だけでは魔力強化は成功できない。
ーーー つまり、これはギルド職員が新たに生み出した新たな力なのだ。
魔術師である彼がこの土壇場で生み出した奇跡。
魔力強化では微々たる効果しか生まない魔力を、身体の中に回路を作ることで魔術的効果を生む……
魔法、とでもいうべき新たな魔力の可能性。
「この土壇場で、こんな奇跡を!」
そして、そう叫ぶ僕の顔には隠しきれない笑みが浮かんでいた。
「ガルッ!」
反射的に身体を動かしたからか、それともギルド職員の狙いが甘かったせいか、その攻撃はポイズンウルフをかするだけに終わる。
「ガルルルッ!」
……しかも、その攻撃でポイズンウルフの傷口から多量の毒が溢れそうになっていて。
「後はまかせろ」
ーーー けれども僕は、口に変わらぬ笑みを浮かべたまま、足を踏み出した。
◇◆◇
僕が勇者から奪い取った能力、それは決して身体能力を強化する能力なんかじゃなかった。
光の剣、その本当の能力は魔力の循環、又はその魔力の量を増やすことだった。
つまり、僕が最初身体能力を鍛えられていたように感じたのはただ、僕の身体の中で自然と魔力強化もどきが行われていたからなのだ。
湿地で僕があっさりと魔力強化を覚えたのも、その予行演習のようなものがあったことが関係しているかもしれない。
そして当たり前だが、光の剣の能力はそんな似非強化だけではない。
その本質は魔術など、そんなものを強化することが目的なのだ。
もちろん通常の魔術にそんな強化をしたところで回路は持たない。
さらにそれは魔力強化でも同じだ。
光の剣を使えば魔力が循環している身体も、そして魔力付与をしたら、どんな剣でももたない。
さらに魔力操作の奥義とも呼べる技を使おうとすればなおさらだ。
しかし、勇者は違う。
何せ勇者の使う聖剣は最初から魔力を通すための回路が作られている。
つまり、幾ら魔力が溢れ出した所で聖剣に異常が起きることはあり得ないのだ。
さらに勇者の使う魔術はその聖剣の回路を使っているため、光の剣の能力を十全に発揮することができる。
つまり、本来この光の剣という能力は勇者にしか使えない技なのだ。
それ以外のものは劣化した能力か、それとも身体を壊す自爆技しか使えない。
「うぉぉぉぉぉお!」
ーーー けれども、僕はその自爆技をなんの躊躇もなく行なっていた。
無理な魔力操作で限界を迎えた身体、それはもう殆ど魔力を操作する能力を失っていた。
いや、魔力を留める余裕さえなくなっていたと言ってもいい。
けれども、僕はその身体に光の剣で増加させた魔力を強引に循環させることで動いていた。
光の剣の能力で循環しやすくなった多大な魔力が、僕の身体に力を与える。
もちろん、循環する魔力よりも僕の身体から溢れる魔力の方が多くて、僕の身体は刻一刻と破滅に向かって突き進んでいた。
「ガルッ!」
ーーー けれども、ポイズンウルフへと留めを刺す、それまでは身体がもつことを僕は確信していた。
ギルド職員の魔術を避けるために、無理な体勢となったポイズンウルフは自身に迫ってくる僕の姿を見ても動くことができないでいた。
ちょうど着地して動けなくなったその時に僕が現れたのだ。
そしてそのポイズンウルフの身体から毒が生成されるその前に、僕の剣はポイズンウルフへと振り下ろされ……
ーーー 次の瞬間、剣はポイズンウルフの魔石を砕いた。
ギルド職員の魔法、それで生み出されたのは雷だった。
それも電気を流しただけの似非雷なんかではない。
200万ボルトも軽く超えているだろう、自然現象並みの、そんな超威力のものだった。
そんなものは、幾ら詠唱を行おうと本来生み出すことのできるはずもない存在だった。
魔力操作ならともかく、ただ魔術でそんな威力を生み出すことなんてできない。
なら何故、こんな魔術をギルド職員が使えたのか。
その答えを悟って僕は笑った。
これは魔術なんかではない。
死にかけの状態から、先程蘇ったというのにその次の瞬間には雷を放ったギルド職員。
「うぉぉぉぉぉお!」
雄叫びをあげる彼の中身体の中にはとんでもない魔力の循環が行われていた。
それは決して魔術なんかではない証拠だった。
何故なら魔術ならば身体の中に魔力は循環しないし、そしてこんな威力も生まれないからだ。
考えられるとしたら、魔力操作の方が高い。
何せ、魔力操作は死にかけることによって魔力を感じるのが一番最初のステップなのだから。
けれども、この雷は魔力操作なんかでもない。
何故なら魔力操作でできるのはあくまで自分の身体の強化だけだ。
それ以外にはなんの目的にも使うことはできない。
単純に身体を回す、それ以外には使えない技術なのだから。
それに彼の身体で巡っている魔力だけでは魔力強化は成功できない。
ーーー つまり、これはギルド職員が新たに生み出した新たな力なのだ。
魔術師である彼がこの土壇場で生み出した奇跡。
魔力強化では微々たる効果しか生まない魔力を、身体の中に回路を作ることで魔術的効果を生む……
魔法、とでもいうべき新たな魔力の可能性。
「この土壇場で、こんな奇跡を!」
そして、そう叫ぶ僕の顔には隠しきれない笑みが浮かんでいた。
「ガルッ!」
反射的に身体を動かしたからか、それともギルド職員の狙いが甘かったせいか、その攻撃はポイズンウルフをかするだけに終わる。
「ガルルルッ!」
……しかも、その攻撃でポイズンウルフの傷口から多量の毒が溢れそうになっていて。
「後はまかせろ」
ーーー けれども僕は、口に変わらぬ笑みを浮かべたまま、足を踏み出した。
◇◆◇
僕が勇者から奪い取った能力、それは決して身体能力を強化する能力なんかじゃなかった。
光の剣、その本当の能力は魔力の循環、又はその魔力の量を増やすことだった。
つまり、僕が最初身体能力を鍛えられていたように感じたのはただ、僕の身体の中で自然と魔力強化もどきが行われていたからなのだ。
湿地で僕があっさりと魔力強化を覚えたのも、その予行演習のようなものがあったことが関係しているかもしれない。
そして当たり前だが、光の剣の能力はそんな似非強化だけではない。
その本質は魔術など、そんなものを強化することが目的なのだ。
もちろん通常の魔術にそんな強化をしたところで回路は持たない。
さらにそれは魔力強化でも同じだ。
光の剣を使えば魔力が循環している身体も、そして魔力付与をしたら、どんな剣でももたない。
さらに魔力操作の奥義とも呼べる技を使おうとすればなおさらだ。
しかし、勇者は違う。
何せ勇者の使う聖剣は最初から魔力を通すための回路が作られている。
つまり、幾ら魔力が溢れ出した所で聖剣に異常が起きることはあり得ないのだ。
さらに勇者の使う魔術はその聖剣の回路を使っているため、光の剣の能力を十全に発揮することができる。
つまり、本来この光の剣という能力は勇者にしか使えない技なのだ。
それ以外のものは劣化した能力か、それとも身体を壊す自爆技しか使えない。
「うぉぉぉぉぉお!」
ーーー けれども、僕はその自爆技をなんの躊躇もなく行なっていた。
無理な魔力操作で限界を迎えた身体、それはもう殆ど魔力を操作する能力を失っていた。
いや、魔力を留める余裕さえなくなっていたと言ってもいい。
けれども、僕はその身体に光の剣で増加させた魔力を強引に循環させることで動いていた。
光の剣の能力で循環しやすくなった多大な魔力が、僕の身体に力を与える。
もちろん、循環する魔力よりも僕の身体から溢れる魔力の方が多くて、僕の身体は刻一刻と破滅に向かって突き進んでいた。
「ガルッ!」
ーーー けれども、ポイズンウルフへと留めを刺す、それまでは身体がもつことを僕は確信していた。
ギルド職員の魔術を避けるために、無理な体勢となったポイズンウルフは自身に迫ってくる僕の姿を見ても動くことができないでいた。
ちょうど着地して動けなくなったその時に僕が現れたのだ。
そしてそのポイズンウルフの身体から毒が生成されるその前に、僕の剣はポイズンウルフへと振り下ろされ……
ーーー 次の瞬間、剣はポイズンウルフの魔石を砕いた。
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