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1.ギルド編
第45話 責任
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魔石を砕かれたポイズンウルフがその身体から力を失い崩れ落ちる。
それから巨体が崩れ落ち、重いものが落ちたような音が響いた。
そして、その光景は僕がとうとうポイズンウルフという災害級の魔獣を倒した証だった。
最悪、街1つを潰しかねないそんな魔獣ポイズンウルフ。
その魔獣を地球での存在に置き換えるとすれば、核ミサイルと変わらないのではないだろうか。
そして、そんな存在を僕はなんとか討伐することに成功したのだ。
それは通常であれば考えられないことだろう。
何せポイズンウルフは数十人の人間、それも凄腕の魔術師などが組んで始めて討伐できるような、そんな存在なのだ。
それをたった2人で討伐したということは誇っても問題がない、それほどの偉業であるはずで……
「……畜生、ちゃんと仕留めておけよ」
……けれども、その時僕の口に浮かんでいたのは勝利の笑みではなく、引きつった笑みだった。
「ガ、ルル、」
その視線の先、そこにあったのはぼろぼろの状態、それでも未だ死んでいないダイウルフの存在だった。
ギルド職員の放った魔法、それは凄まじい威力を誇ってはいたが、けれどもかなり狙いが粗かった。
いや、狙って撃った訳ではないといのが正確なところだろうか。
しかしそのせいで魔法の威力としては、直撃すれば例えポイズンウルフでさえ、影も形もない程に破壊し尽くす威力を有していたものの、その魔法で命を失ったのは一体のダイウルフだけだったのだ。
そしてそのせいで一体だけ傷ついた状態であってもダイウルフが生き残ってしまったのだ。
直撃したところからかなり離れていた場所にいたにも関わらず、ぼろぼろな状態はその魔法の威力の大きさを物語っている。
そしてそんな状態のダイウルフであれば、万全の状態であればギルド職員でも簡単に仕留めることができるだろう。
「くそ!起きろよ!」
……けれども、肝心のギルド職員は魔法を撃った直後から意識を失っていた。
それは決してギルド職員が軟弱だとか、そんな理由ではない。
なぜならギルド職員が生み出した魔法と呼ばれる技術、それは多大な負担をギルド職員の身体にかける技術なのだ。
始めてでいきなり発動できただけで十分な働きで、そのあと意識を失ってしまってもなんらおかしなところはない。
さらにダイウルフ達の攻撃、それはポイズンウルフには及ばないとはいえ、毒が込められている。
そしてその毒がいくら微量とはいえ、あれだけ何度も受けていれば意識を失っていても致し方がないことだろう。
「ガルル!」
「っ!」
……しかし、ダイウルフがギルド職員へと歩み寄っている今に関しては意識を失っているということは最悪の事態だった。
確かに今のダイウルフはかなり消耗している。
けれども、その消耗した身体でもダイウルフには全く動けないギルド職員を仕留めることは容易いだろう。
「くそ!こっちを向けよ!」
けれども、そんなことを僕は認めるわけにはいかなかった。
確かにギルド職員にはこの状況を引き起こした非があるかもしれない。
……けれども、それは僕も同じだった。
そしてそんな中で一番命の危険が大きい役目をギルド職員は果たしたのだ。
ダイウルフがギルド職員のとどめを刺さなかったことなど、ただの偶然だ。
あの時、ギルド職員はほぼ死んでいた。
……そしてそのことを強いたのは僕なのだ。
「殺すなら、僕からにしろ!」
だからこそ役目を果たした今、僕はギルド職員が殺されることだけは決して許してはならなかった。
ダイウルフを引きつけ、そして最終的にはポイズンウルフを仕留めるための隙さえ作ったギルド職員。
彼は確かにこの状況を引き起こした非があるが、けれどもその非を挽回する働きをした。
だったら、今度は僕が責任を取らなければならない。
例え、ここで自分が死んだとしても、それでもギルド職員をダイウルフなどに殺させるわけにはいかないのだ。
それが彼に死地に追いやった、僕の責任で……
「くそがっ!」
……けれども、そうわかりながらも僕の身体は動かなかった。
身体からどんどん血が抜け、ポイズンウルフの毒が僕の身体を蝕み、そして最後には魔術によってぼろぼろになった身体。
そんな状態になった身体は、もう僕の言うことを聞ける状態ではなくて……
「やめろ!」
そしてそんな僕に見せつけるかのように、ダイウルフはゆっくりとギルド職員の方向へと歩み寄って行く。
「殺すなら、先にこっちを!」
薄れる視界の中、それでも僕は叫ぶ。
だが、そんな僕の言葉などダイウルフは気にもすることなかった。
そして、そんな僕の心が絶望に囚われかけたその時だった。
「っ!」
ーーー 何者かは分からない、けれども力強い人影がこの場に降り立ったのは。
それから巨体が崩れ落ち、重いものが落ちたような音が響いた。
そして、その光景は僕がとうとうポイズンウルフという災害級の魔獣を倒した証だった。
最悪、街1つを潰しかねないそんな魔獣ポイズンウルフ。
その魔獣を地球での存在に置き換えるとすれば、核ミサイルと変わらないのではないだろうか。
そして、そんな存在を僕はなんとか討伐することに成功したのだ。
それは通常であれば考えられないことだろう。
何せポイズンウルフは数十人の人間、それも凄腕の魔術師などが組んで始めて討伐できるような、そんな存在なのだ。
それをたった2人で討伐したということは誇っても問題がない、それほどの偉業であるはずで……
「……畜生、ちゃんと仕留めておけよ」
……けれども、その時僕の口に浮かんでいたのは勝利の笑みではなく、引きつった笑みだった。
「ガ、ルル、」
その視線の先、そこにあったのはぼろぼろの状態、それでも未だ死んでいないダイウルフの存在だった。
ギルド職員の放った魔法、それは凄まじい威力を誇ってはいたが、けれどもかなり狙いが粗かった。
いや、狙って撃った訳ではないといのが正確なところだろうか。
しかしそのせいで魔法の威力としては、直撃すれば例えポイズンウルフでさえ、影も形もない程に破壊し尽くす威力を有していたものの、その魔法で命を失ったのは一体のダイウルフだけだったのだ。
そしてそのせいで一体だけ傷ついた状態であってもダイウルフが生き残ってしまったのだ。
直撃したところからかなり離れていた場所にいたにも関わらず、ぼろぼろな状態はその魔法の威力の大きさを物語っている。
そしてそんな状態のダイウルフであれば、万全の状態であればギルド職員でも簡単に仕留めることができるだろう。
「くそ!起きろよ!」
……けれども、肝心のギルド職員は魔法を撃った直後から意識を失っていた。
それは決してギルド職員が軟弱だとか、そんな理由ではない。
なぜならギルド職員が生み出した魔法と呼ばれる技術、それは多大な負担をギルド職員の身体にかける技術なのだ。
始めてでいきなり発動できただけで十分な働きで、そのあと意識を失ってしまってもなんらおかしなところはない。
さらにダイウルフ達の攻撃、それはポイズンウルフには及ばないとはいえ、毒が込められている。
そしてその毒がいくら微量とはいえ、あれだけ何度も受けていれば意識を失っていても致し方がないことだろう。
「ガルル!」
「っ!」
……しかし、ダイウルフがギルド職員へと歩み寄っている今に関しては意識を失っているということは最悪の事態だった。
確かに今のダイウルフはかなり消耗している。
けれども、その消耗した身体でもダイウルフには全く動けないギルド職員を仕留めることは容易いだろう。
「くそ!こっちを向けよ!」
けれども、そんなことを僕は認めるわけにはいかなかった。
確かにギルド職員にはこの状況を引き起こした非があるかもしれない。
……けれども、それは僕も同じだった。
そしてそんな中で一番命の危険が大きい役目をギルド職員は果たしたのだ。
ダイウルフがギルド職員のとどめを刺さなかったことなど、ただの偶然だ。
あの時、ギルド職員はほぼ死んでいた。
……そしてそのことを強いたのは僕なのだ。
「殺すなら、僕からにしろ!」
だからこそ役目を果たした今、僕はギルド職員が殺されることだけは決して許してはならなかった。
ダイウルフを引きつけ、そして最終的にはポイズンウルフを仕留めるための隙さえ作ったギルド職員。
彼は確かにこの状況を引き起こした非があるが、けれどもその非を挽回する働きをした。
だったら、今度は僕が責任を取らなければならない。
例え、ここで自分が死んだとしても、それでもギルド職員をダイウルフなどに殺させるわけにはいかないのだ。
それが彼に死地に追いやった、僕の責任で……
「くそがっ!」
……けれども、そうわかりながらも僕の身体は動かなかった。
身体からどんどん血が抜け、ポイズンウルフの毒が僕の身体を蝕み、そして最後には魔術によってぼろぼろになった身体。
そんな状態になった身体は、もう僕の言うことを聞ける状態ではなくて……
「やめろ!」
そしてそんな僕に見せつけるかのように、ダイウルフはゆっくりとギルド職員の方向へと歩み寄って行く。
「殺すなら、先にこっちを!」
薄れる視界の中、それでも僕は叫ぶ。
だが、そんな僕の言葉などダイウルフは気にもすることなかった。
そして、そんな僕の心が絶望に囚われかけたその時だった。
「っ!」
ーーー 何者かは分からない、けれども力強い人影がこの場に降り立ったのは。
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