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猫手水晶

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第2.5章 赤いランプの目

俺にとって最悪の日 (2)

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俺たちはほんともうウキウキでジモーの作戦とやらを聞く事にした。
「まず簡単にいえば、みんなでその人食いどもがいるクソ自治区をぶっこわそうぜってことさ。」
「最高じゃねえか、なあ、それってイン&アウトも自由にやっちまっていいんだろ?」
ドゴがハアハアいいながら口を挟む。
「ああ、もちろんだ。」
ドゴはそれを聞くと大喜びでキモく体を揺さぶった。ジモーはそれを気にせずに話を続ける。
「俺たちは今の立場は下っ端だ。だが、今日は特別に他の仲間の指揮をとりつつ先導する権利があるんだ。」
「要するによお、今日は俺たちの思い通りに仲間を動かしていいって事か?」
俺は興奮ぎみにジモーに聞いた。みんなが俺らの思い通りに動いてくれれば、この大暴れはもっと楽しくなるだろうな。
「そういうことだな。仲間どもをうまく動かしてこの作戦を成功させりゃ、俺らは晴れて分隊長に昇格ってことさ。ひとつ上に上がれるんだぜ?」
俺は興奮が止まらなかった。俺らが仲間たちを先導し、そしてみんなで自治区をぶっこわす、絶対サイコーな気分になれるじゃねえか。しかもそれがうまくいけばひとつ上のクラスへと上がれるのだ。分隊長になれれば、仲間を連れてもっと派手に暴れる事ができる。そんな事ができりゃもっと楽しくなれるだろう。
「よし、いますぐやろうじゃねえか!もう待てねえよ!」
「まぁ落ち着けって。」
ジモーが興奮している俺をあやすように言葉を遮り、話を続ける。
「俺が仲間に指揮と指示しながら暴れる。まぁ、始まりの合図と作戦前の打ち合わせをする程度だが、必要になれば撤退の合図をする役割も担う。」
ジモーは一呼吸おき、俺に向かって言った。
「お前は大暴れしてこい。先導して悪人の長をくたばらせてくれ、周りのやつは俺たちでやる。きっとおクスリきめちまったら周りも見えねえだろうしな。」
「まかせろよ。楽しみで仕方ねえ。」
俺はノリノリで即答した。
「ドゴは...そうだな。興奮しすぎて話も聞こえてねえなこりゃ...まぁいい、あいつは勝手に暴れてくれるだろう。こいつの事だから女ばっかり狙うかもしれんが...」
ジモーは、さっきから興奮しっぱなしで、ハアハアばかり言ってるドゴにそう言い放った。
だがドゴは心ここにあらずで聞こえてなかった。
そして、ジモーは話が終わったらしく、出発の準備をしながら言う。
「よし、そろそろ行こうか。お楽しみの始まりってやつだ。」
「ああ、大暴れしちまおうぜ。」
そして、俺たちはおんぼろの車に乗り、自治区の近くにいる仲間たちの元へ合流した。
そこにいるやつらも俺らみたいに血の気の多いイカしたやつらで、みんなウキウキしてるみたいに歯むきだしてイヒイヒ笑ったり、銃や刃物をなめたりしていた。
ジモーがさっきみたいにながーくお話した後に、俺に言葉を促した。
「今回はお前がリーダーだ。みんなに言いたいこと言ってやれ。」
「ああ」
おれはそう答えた後、一呼吸おいてこう叫んでやった。
「お前ら!救いようのねえわるーいやつらを今宵くたばらせてやろうじゃねえか!今日は俺ら正義の味方ってやつだ、好き勝手暴れようぜえ!」
すると20人くらいいる仲間どもは一斉にウオオと大声で叫び、ジャンプしたり足踏みしたりするもんだから地面のプレハブ屋根なんかほんとグラグラに揺れた。

さあ、お楽しみの始まりだ。
「いくぜお前らあ!!!」
俺はおクスリキメる前にみんなにそう叫ぶ。そしてみんな一斉に走り出した。
俺は液体のおクスリを一気飲みしてトリップした。飲んだらすぐにでも大暴れしちゃいたくなるような、そしてその大暴れが楽しくなっちゃうようなおクスリなのさ。
全身に一気に振動が走り、視界が一気に変わる。
錆びた鉄とかプレハブだらけで茶色だった景色が、一気にいろんな色の極彩色へと変わる。そして、はっきりと形をとらえていた視界がぐにゃんぐにゃんに歪んだ。
そして、耳元には、心地のいい音が流れ出す。俺はその音をよくわからないんだが、いろんな音が組み合わさって一体化し、ひとつの芸術へと昇華されたような、そんな気持ちいい音を奏でだした。
耳元では、ファファファーという大きな何かを吹くような大きな音を奏で、それが大暴れの始まりの合図のような気がした。
俺は気持ちよくなっちゃって、つい叫んじゃった。
「ヒャーッッハアァー!」
そして、様々な音が重なり、それはどんどん豪華になって、俺の神経を研ぎ澄ました。やがてなにかをギーギーというかヴィンヴィンひっかく音が重なる。
俺は走り出し。ショットガンをぶっ放した。
そしてぐにゃぐにゃの人影に弾ぶつかって金色の液体がキラキラとこぼれた。それはおぞましい赤なんかじゃないんだぜ。
そしてみんなも暴れているのか、そこかしこがキラッキラに輝いて、ほんと楽しい騒ぎになっていた。
そして耳元の音もどんどん豪華になって、いろんな音で満ち始める。
そしてだれかが手榴弾投げたのか、どっかの建物が華やかで鮮やかな炎の花を上げ、シャンシャンとリズミカルに鳴る。
そして俺がパイプを振ると、走りかかった人影はどんどん吹っ飛んでキラキラを吹き出す。
もうほんと楽しくて、俺は笑い続けるしかなかった。
俺の視界のなかはみーんな楽しそうで、ワハワハ笑いながらタマ乱射してたりナイフやパイプぶんまわしたりしてる。それを受けてる人食いどもの顔もニコニコで、イン&アウトされてる女も楽しそうに笑っていた。そしてそれをしてるドゴは相変わらずキモかった。
そして、耳の音は更に盛り上がり。それと共に俺の走るスピードを上げていく。
そしてタマが切れてきたんで、腰のベルトから銃の下部にある弾倉に8発くらいチューブ状の弾丸を詰め、またそれをぶっぱなした。
ドンドンという体を揺らす振動、そして爆音とともに、人影からどんどんキラキラがこぼれてきた。
そして、ついに広さ2部屋ぶんくらいで2階建ての、小さいがこの自治区では比較的大きい建物へたどりつく。
そしてそこのさび付いたドアを足で蹴ってぶっこわすと、ガードらしき男が走りかかってきた。
でもこいつガードのくせにへにょんへにょんで弱々しく痩せてるんで、ライフル構えて撃とうとするも、構えるののろいせいで俺のショットガンの早撃ちにゃかなわなかったらしい。
男は眉間からキラキラ出して色鮮やかな体を倒していた。
俺はその体を飛び越え、階段を上ろうとすると、また痩せた男たち現れてつかみかかろうとしてきたんで、パイプ振り回して吹っ飛ばしてやった。
そして、俺は階段を上って、長のいる上に突撃したってわけさ。
長は髭生やしたじじいで、おクスリの影響かその髭も体も極彩色で体もぐにょんぐにょんだったので俺はつい笑っちゃった。
こいつ拳銃もってたんで、まず両腕にタマぶちこんでやった。
するとたちまちキラキラ出しながらこいつ動けなくなったんで、ちょうど耳の音も落ち着いたパートに入ったんで、くたばらせる前にちょっくらお話しようと思った。
「お前、なんでこんな事されちゃってんのかわかってるよなあ!?」
俺はニコニコでこう言い放った。ハイになってたから怒りなんか湧かなかったし、いまやらかしてる事が楽しくてたまらなかったからさ。
「すまない!食べるものがなく誘惑に負けてしまったんだあっ!」
じじいもニコニコで楽しそうに答える。俺にはそう見えたのでまた面白くなって笑っちゃった。
そして耳の音はまた盛り上がったパートへとさしかかる。
「わかった!許さないぜ!!」
そしてじじいもヒューなんか嬉しそうに叫びやがるんで。俺はパイプでこいつの体キラキラにした後、さすがにこいつの嬉しそうな声もうざくなってきたんで。最後に眉間に一発ぶちこんで終わらしてやった。
そして、俺はこの部屋に手榴弾投げた後、窓から飛んだ。

耳の音が最後に最大の盛り上がりをみせる。

すべての音がそろい、最後の花火が花開くとともに、大きな音でフィナーレをかざった。

「ヒャッッハアアァーーー!!!」
俺の気分はサイコーにハイになって、空中でまた叫んじゃった。

そして受け身をとり着地した後、耳元に響く音の終わりを称賛するようなパチパチという音、つまりハイの余韻が残ってるうちに、大急ぎでジモーが停めてくれていたであろう車へと走る。
あいつ意外と策士で、俺がハイになってる間に仲間に暴れさせて、そしてある程度自治区が無力化された後に一斉に手榴弾投げさせぶっこわし、みんなも逃げさせてたらしい。そしてその間に車も移動させてた。あんまり聞いてなかったけどあいつの作戦はそんなだった気がする。

なんでこんな俺は焦ってるのかって?
このおクスリ、使ってるときはすげー楽しいんだが、それ切れちまうと最悪の気分になるんだよな。だからハイになってるうちに撤退しないといけないわけ。
俺は車に飛び込むようにして駆け込み、あとの2人と合流した。おそらくほかの仲間は走って逃げたのだろう。
作戦成功だ。

一安心するのもつかの間、すぐに最悪なアレが俺を襲った。
視界がぐにゃんと歪み、吐き気と、頭がかち割れちまいそうなくらいとてつもない頭痛が俺を襲う。そしてさっきとは裏腹に、世界全部が暗く見えてどんよりした。世界全部が残酷に見える。耳元には重く暗いズーン、ゴーンという恐ろしい音が鳴り響きながら、うるさく耳鳴りをキーンと聞こえていた。耳を抑えてもうるさく聞こえてくる。
今にも何かに食われてしまいそうな、精神的恐怖がきた。そして寒気が全身を走る。
「ウワアアアアア!!」
俺は痛みと気持ち悪さのあまり、さっきとは違った最悪の悲鳴を上げた。
「うるっせえな!おクスリキメすぎなんだよ!」
ぐにゃぐにゃの体のドゴは俺に怒鳴り、俺に拳を振り下ろした。
それはおれのみぞおちを命中するが、そんな痛みよりこの悪夢のような気分のほうが最悪だった。
俺はドゴにやり返す事もできないまま、ウウウウーンと唸っていた。
「お前...そんなにおクスリとってると、向こう側から戻ってこれなくなるぜ...?」
俺の視界が歪んでるのではっきりとは見えなかったが、車を運転しているであろうジモーは俺にそう忠告した。
俺は頭にきたんで言い返そうとするも痛みのせいで何も言えないまま、車に揺られながら目を閉じた。

その時なんだかこれからくる事にいやーな予感がしたのは、たぶん気のせいだったんだと思う。いや、きっと気のせいだ。
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