ヴィオレットの夢

桃井すもも

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夜会の後

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「ヴィオレット」

邸に戻りドレスを脱いで身を清め、今は就寝を迎えようとしている。

デイビッドに背を向けて横向きになっているところへ声を掛けられる。

「....」ヴィオレットの貝状態は継続中であった。

「ヴィオレット、触れても?」
デイビッドが訊ねて来る。

「貴方は私の夫でしょう?」と諾を伝えると、ゆっくりと腕に囲われた。

ヴィオレットとは比べ物にならない逞しい腕。もう一方の腕はヴィオレットの頭上で肩ひじを立てている。

腕の中に囲われると同時に身体ごとやんわりと引き寄せられて、デイビッドがヴィオレットの髪に顔をうずめた。

「君は美しかった」
髪にうずめたまま、くぐもる声で言う。
艶のある深い声が耳元に響く。

ヴィオレットが黙っていると、そのまま頭に口付けを落とし、
「胸元が見えた」と言う。

「あれくらい、どの御婦人もなさっているそうです。」
侍女たちの言をそのまま返した。

「君たちはそう思うだろうが、」
あれは背の高い男の目線からは丸見えなんだ、と呟いた。

そんなこと!

「きっと君に触れたい男が出てくる」

デイビッドは美丈夫だ。
たわわな胸を晒した令嬢・夫人に囲まれる事など日常茶飯事、珍しい事などないだろう。

あのブルーのイブニングドレスは、控え目な方であった。寧ろ身体に沿ったウエストのデザインの方が煽情的であったろう。

「君の肌を見せたくなかった。初めにそう言っていれば」あんな失敗はしなかった、と声が沈む。

ホルターネックドレスのことだろう。

「貴方が褒めて下さると思っていたのに。」

「すまない」

大きな身体にすっぽり閉じ込められても、形勢はヴィオレットに追い風だ。

ヴィオレットを囲む腕に力が込もってデイビッドが首に顔をうずめてくる。

もう。
仕方がないとばかりに
「許します」と言うと腕の力が強まって胸が苦しくなった。うっっ、


それからは、ヴィオレットは赦しを得たと心得たデイビッドに翻弄された。

大海に飲み込まれる小舟の状態で翻弄され続けた。大海は荒波であったが。

そうして、やはり夜は長く果てが無かった。

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