ヴィオレットの夢

桃井すもも

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願い

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身体が揺れて目が覚める。

どうやら、うたた寝をしていたらしい。

そして、今は抱きかかえられているらしい。

公爵邸から戻り、日の当たるテラスの陽気に誘われて、少しだけ休もうと思ったのが、そのまま眠っていたらしい。

仕事柄、帰宅の時間がまちまちなデイビッドが今日は早く戻ったらしく、眠る私を起こさないように寝室へ運ぶ途中で目が覚めた。

このところ、始終眠気を感じている。

そのまま寝室のベッドに降ろされて
「身体は辛くないか?」と気遣うデイビッドが、頬に瞼に口付けするのが擽ったくて身動ぎすると、触れるだけの口付けを落とされた。

表情からは解り辛いが、心配をしているのだろう。

大丈夫と答えると、ヴィオレットの腹部に頬を寄せる。
まだ何も感じられないだろうに、ヴィオレットの腰に腕を回して抱き付く格好となる。

ヴィオレットと同じ、白銀に近い薄い金の髪。
そっと髪を撫でると、そのまま手を取られて指先にも口付けられる。

デイビッドの子を宿した。

それは不思議な感覚であった。

デイビッドはヴィオレットの従兄弟である。
幼馴染であり、兄の側近であり、ヴィオレットのもう一人の兄と慕った人である。

少年デイビッドを思うとき、温かな信頼の記憶と拒絶の凍る思いの記憶、相反する二つの記憶が同時に蘇る。

ヴィオレットとデイビッドの婚姻は、父王の命によるものだ。

それでも、生まれて来る子供に眩しい世界を見せてあげたい。
自ら選べぬ与えられた場所であったとしても、どうかそこで輝いてほしい。

ソフィア公爵夫人の庭園で見た命の煌めきに、ヴィオレットは我が子の人生も陽のあたる温かなものであるように願った。






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