王妃の手習い

桃井すもも

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帝国

覚悟を以って臨んだ帝国への留学であったが、いざ渡ってみればその生活は思いの外平和なものだった。

全学年を合わせれば、母国からの留学生は他にもいたし、何よりありとあらゆる国々から人は集まっている。

学びは刺激に溢れて裾野が広く、尽きることが無い。


王太子の婚約者である事は学園側と一部の生徒には周知のことであったが、母国とて広い大陸に幾つもある国の一つに過ぎない。

それに、訳ありの者などその気になればいくらでも見つけられる。


そうして、何より気楽であった。

ここ暫く、心の内で逡巡していた物事から、呆気無く開放された気分であった。
喩え現実では何も変わらずとも。

物事に閉塞感を感じたときには、一旦物理で離れてみるのが良いのだと思い至った。


意外だったのは、どちらかというと控えめな部類の性格だと思っていた自分自身の気質が、そこまででもないのではと気付いた事だろうか。

交易の民を祖に持つオールブランス一族の血なのだろう。

民と交わり言葉と心を交わすことに喜びを感じた。

そうして、もう一つ意外だったのは、母国で受けていた妃教育が、思いの外高水準なものであったと云うことだろう。

大陸の中でも小国に当たる母国であるが、王宮の教師達から受けた教育は、帝国のそれと遜色の無いものであった。

こればかりは、王家と教師団に感謝するばかりであった。


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