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第3章
過去
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裏から出てきた少女の姿に、アルは息をのんだ。
客たちもみんな目を奪われる。
彼女はそれほどに美しかった。
「ほらほら、怯えさせるんじゃないわよ。」
リザの一声でまたおしゃべりが広がる。
「みんないい人ばかりだから心配しなくていいわよ。」
アルとそっくり同じ台詞に、ナタリーは笑みをもらした。
リザとアルはお酒を、ナタリーはココアをもらって3人は席についた。
「アルの訪問とそこのお嬢さんに乾杯。」
カチンとグラスを合わせる。
ナタリーも慌ててココアのコップをくっつけた。
「さあ、気兼ねなく話しましょう。」
リザはそこでナタリーに話し掛けた。
「あなたのことはなんて呼べばいいかしら?」
彼女は困ってうつむいた。
本名を言ってしまったら、見つかりはしないだろうか。
見透かしたように、アルが口を聞いた。
「あだ名だから気にしなくていい。アルもリザも本名じゃないし、私たちは口が堅いからね。」
リザが続ける。
「私が勝手につけてもいいかしら。シンディはどう?」
それは母親の名前だった。
ナタリーは彼女を思い出して、少し微笑む。
「どうしてその名が出てきたのか?」
尋ねるアルに、リザはウィンクをした。
「それはシンディの着ている赤いドレスの話を聞いてからね。」
リザは話し始めた。
「今から20年ほど前のことかしら。
レオン・ハーギストンが女の子を連れてきたのよ。
『一刻も早く手当てしてくれ!』って必死の形相でね。
女の子の顔は蒼白で手足は冷え切って、なのに高熱があって、さっきのあなたよりももっとひどい状況だったわ。
表だって病院に連れて行くことができないらしくて、ここで様子を見たのよ。」
「私も彼も不眠不休で看病したわ。
うわごとで『レオン、レオン』というたびに手を握ってあげてね。
その呼び方がまた切実で…
それでもずっと熱は下がらなくて、むしろ悪化していったの。」
ナタリーは息をつめてその続きをまった。
「2日目の夜だったかしら。
とうとうレオンが置き手紙を残して去って行ったわ。
そこには『医者を連れてくる。シンディの面倒を見てほしい』とだけあって、確かにその後、有名なドクターが来たのだけれど…」
「彼は2度と来なかった。」
アルが話をつないだ。
客たちもみんな目を奪われる。
彼女はそれほどに美しかった。
「ほらほら、怯えさせるんじゃないわよ。」
リザの一声でまたおしゃべりが広がる。
「みんないい人ばかりだから心配しなくていいわよ。」
アルとそっくり同じ台詞に、ナタリーは笑みをもらした。
リザとアルはお酒を、ナタリーはココアをもらって3人は席についた。
「アルの訪問とそこのお嬢さんに乾杯。」
カチンとグラスを合わせる。
ナタリーも慌ててココアのコップをくっつけた。
「さあ、気兼ねなく話しましょう。」
リザはそこでナタリーに話し掛けた。
「あなたのことはなんて呼べばいいかしら?」
彼女は困ってうつむいた。
本名を言ってしまったら、見つかりはしないだろうか。
見透かしたように、アルが口を聞いた。
「あだ名だから気にしなくていい。アルもリザも本名じゃないし、私たちは口が堅いからね。」
リザが続ける。
「私が勝手につけてもいいかしら。シンディはどう?」
それは母親の名前だった。
ナタリーは彼女を思い出して、少し微笑む。
「どうしてその名が出てきたのか?」
尋ねるアルに、リザはウィンクをした。
「それはシンディの着ている赤いドレスの話を聞いてからね。」
リザは話し始めた。
「今から20年ほど前のことかしら。
レオン・ハーギストンが女の子を連れてきたのよ。
『一刻も早く手当てしてくれ!』って必死の形相でね。
女の子の顔は蒼白で手足は冷え切って、なのに高熱があって、さっきのあなたよりももっとひどい状況だったわ。
表だって病院に連れて行くことができないらしくて、ここで様子を見たのよ。」
「私も彼も不眠不休で看病したわ。
うわごとで『レオン、レオン』というたびに手を握ってあげてね。
その呼び方がまた切実で…
それでもずっと熱は下がらなくて、むしろ悪化していったの。」
ナタリーは息をつめてその続きをまった。
「2日目の夜だったかしら。
とうとうレオンが置き手紙を残して去って行ったわ。
そこには『医者を連れてくる。シンディの面倒を見てほしい』とだけあって、確かにその後、有名なドクターが来たのだけれど…」
「彼は2度と来なかった。」
アルが話をつないだ。
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