ラピスラズリの夢

sweet martini

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第3章

悲恋

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「その通り。
彼は数日後に婚約発表をしたわ。
その頃にはシンディも元気になっていて、2人の話をしてくれたの。」

リザはそこでカクテルを一口飲んだ。

「レオンとシンディが出会ったのは国の舞踏会。
たまたまバルコニーで話をしたのをきっかけに、2人はどんどん惹かれていったのね。
シンディは彼のことを、自分を外見で判断しないところがすきと言っていたわ。
そして2人が恋仲になるのにさほど時間はかからなかったのよ。」

それぞれ美男美女であった2人は当時かなり有名であった。
だからこそ、付き合っているという噂はすぐに広まってしまったのだ。

「そして、それハーギストン公爵夫人が耳にしてしまったの。
彼女は激怒したわ。
美しいとはいえ、シンディの家柄は高くなかったから…」

たった20年前とはいえ、家柄の規制は今とは比べものにならないほど強かっのだ。

「彼女は2人を別れさせようとして様々なことをしたわ。
レオンに沢山の美女をあてがったり、シンディに他の恋人がいるという噂を流したり。
それでも2人の仲を壊すことはできなかったの。」

そこでリザは一息ついた。

「だから彼女も強硬手段に出たのよ。
シンディを幽閉して、その間にレオンの結婚をさせようとしたの。
塔の暮らしは割と贅沢だったみたいだけど彼女は精神的ストレスでどんどん痩せていったわ。
それを聞いたレオンはこっそりシンディに会いに行って、そのまま駆け落ちしたのよ。」

閉じ込められてから、シンディはあなど物を口にしていなかった。
正確に言うと、口にできなかったのだ。
やせ細り、髪の艶は失われて生気のない彼女をみたレオンは逃げ出すことを決意した。
彼のような階級の人にとって駆け落ちは全財産を投げ出すことを意味する。
それでも彼はシンディを選んだのだ。

「2人はユーストンからはるばる歩いてきたわ。
お金もあまりなかっただろうし、野宿ばかりしていたそうよ。
初めはとても幸せだったの。」

「初め、は?」
ナタリーは聞き返した。

「ええ。
体力の落ちていたシンディが体調を崩し始めたの。
でも薬や休める場所がなくどんどん悪化していって、私のところに来たときにはひどいことになっていたのよ。


「それで、リザさんのところに来ても治らない彼女を見て、レオンが夫人のところに戻って医者を呼んできたのね。」

「そう、多分自分が結婚する代わりにシンディを助けて欲しいと頼んだのだと思うわ。」

「そっか…」
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