悪役令嬢は死神と呼ばれし暗殺者がお好き

梨花

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魔法学園に到着した

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「到着致しました、お嬢様」

 そう言いながら馬車の扉を開けた護衛の一人が手を差し出した。

「えぇ。お疲れ様」

 私は護衛の彼の手に自分の手を重ね、馬車から降りた。
 私は公爵令嬢。そう簡単に礼を言ってはならない。だが、労りの言葉ならいいだろうと想い言葉にすると、

「いっ、いえ!護衛ですから!」

 と言って嬉しそうに笑った。















 寮に入り侍女達が荷解きをしている間、私は暇なので寮の近くにある薔薇園を散歩していた。

「…………綺麗」

 前世の記憶を思い出してから、私はあまり表情を変えることが少なくなった。
 そんな私でも思わず頬を緩ませてしまうほど、とてもとても美しい薔薇園だった。

 ーーガサッ

「っ誰!?」

「あぁ、すまない。薔薇を愛でている君がまるで花の妖精の様で、思わず出てきてしまったんだ」

 と、金髪紫眼の彼は微笑んだ。

 紫眼、という事は王家に血縁がある者。そしてこの世代に紫眼を持つ者は第一王子、第二王子、それと私だけ。第一王子は短髪、第二王子は長髪だから、この方は、

「花の精ではなくて申し訳ありません。第二王子殿下」

 と言いながら、私は王族にする一番美しいと伝えられているカーテシーを披露した。

「公式の場ではないのだし、堅苦しい挨拶は要らないよ。此処は身分関係なく過ごす魔法学園だからね」

 と言われたので、

「承知致しました、第二王子殿下」

 と小さくカーテシーをした。

「第二王子殿下じゃなくて、ルーカスって呼んでよ。ね?」

 と首を傾げた。

「いいえ、第二王子殿下。わたくしは、ファーストネームて呼ぶのも呼ばれるのもお慕いしている方のみがいいのです。なので、申し訳ありませんが、ファーストネームで呼ぶことはできません」

 第二王子の目を見て言うと、

「じゃあ、私のことを好きになればファーストネームで呼んでくれるかい?」

 と聞いてきた。

「そもそもわたくしはお慕いしているお方がいますので」

 きっぱり断ると、第二王子はきょとんとし、その後目を見開いた。

「え?好きな人いるの?誰?」

 少し眉間に皺を寄せ、第二王子は私に詰め寄ってきたので一歩下がり、

「こんなところを人に見られては大変な事になるので、あまり女性に近づきすぎない方が宜しいかと。
 それに、万が一にでも惚れてしまう方がいたら可哀想ですわ。第二王子殿下は本気ではないのでしょう?」

「では、わたくしはそろそろ部屋に戻らせて頂きますわ」

 そう言って私はそろそろ部屋の荷解きも済んだわよね、と部屋へ帰ることにした。

「なんなの、あいつ………この僕に惚れないなんて頭おかしいんじゃないの?」

 と眉間に皺を寄せ、小さく口にした第二王子のことを無視して聞こえない振りをしながら。















 今日はラチェス魔法学園の入学式。
 ヒロインは迷って入学式に遅れてしまって、扉を開けてとても目立ってしまったということで私に虐められる。

 だけど、私も昔虐められていたから、虐めるの嫌なんだよね………。

 でも、一応攻略サイトとか見てたら虐めれば私は国外追放とか修道院行きとかだったし、虐めた方がいいのかもしれない。
 公爵令嬢の肩書きを持ってるとナイを探したら迷惑がかかってしまうからこれまで探せなかったけど、肩書きが無くなればナイを探せるかも知れない。

 はぁ…………

「ナイに会いたいなぁ………」

 レイチェルは小さく願望を口にした。





 ーーその願望を他の者に聞かれているとは知らずに。






「みぃ~」

 ?

「猫?」

 猫の鳴き声の様なものが聞こえたので私は振り返った。

 そこにいたのは、黒の毛に青と銀のオッドアイの仔猫だった。

「!貴方、ナイみたいね?かわいいわ」

 色は全く被っていなくて正反対だったけど、何故だかナイに似た雰囲気を持っている様に感じたのだ。

「おいで、仔猫ちゃん」

「みぃ~」

 ナイに似た雰囲気を持つ仔猫は、小さく鳴き声を出しながら私に近づいてきた。

「頭がいいのね」

 と頬を緩ませていた私は、背後から近づいてきた者に気づかなかった。

「なぁ」

 !?

「な、何かわたくしにご用かししら?」

 と必至に誤魔化したが声は少し裏返っていたようで、

「あー、驚かせて悪かったな。うずくまっていたから、具合でも悪いのかと思ったんだが………。そいつのことを見てたのか」

「っ、えぇ。友人の雰囲気に似ていると思いまして」

 少し恥ずかしい思いをしながら答えた。

「おぉ、それならあんたがそいつの名前をつけるか?」

「え?」

「そいつは俺の飼ってる猫の子どもなんだけど、どーも俺のつけた名前が嫌みたいで逃げ出したんだよ」

「よ、よろしいのですか?」

 レイチェルは、目を輝かせながら煙草を咥え、草臥れたくたびれた白衣を着た男に聞いた。

「あぁ。なんで俺のつけた名前が嫌なんだろうな?ココアって美味しいし可愛いのに。」

「あの、この子男の子ですよ?」

「え、そうなのか?ちいせぇからてっきり雌だと………」

「男の子なのに女の子の名前つけられたら、そりゃあ逃げ出したくもなりますわ。ねぇ?」

 と仔猫に向かって言うと、

「なぁ~ん」

 と返事が返ってきた。

「この子はとても頭がいいのだから、男の子の名前がいいのよ」

「なら、あんたならどんな名前をつけんだ?」

「そう、ですね…………」

 ナイに雰囲気が似ているし、ナイ、ない、無い………0?0はゼロとレイ、あ、レイって私と同じね。

 なら、ゼロかしら。

「ゼロ、ゼロはどうかしら?」

「なぁ~ん」

「まぁ、気に入ってくれたの?嬉しいわ」

 とレイチェルが眩しいものを見るかのように目を細めて仔猫を見つめている横で、白衣の男は

「くっ、飼い主の俺のつけた名前を嫌がるどころか一切懐かないのに、何故こんな小娘に懐くんだ………っ!」

 と手足を地についた。




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