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花嫁は、竜の舌と尾に蕩かされる〜愛しの貴方の正体は!? 8つの舌で全身愛撫はやり過ぎです〜
3※
しおりを挟む「八人で喋っているふりをしているだけで、私は一人の人格なのだ」
「へ……?」
言われている意味がよく分からずに問い返す。
「それは、つまり……?」
「そのままの意味だ。暗い洞窟で一人、辛くてな……独り言が増えてしまって……そうだ、せっかく頭が八つあるから、兄弟のように、それぞれで喋ったりしたら楽しいかもしれない……そう思って、人形遊びのように、一人で八人を演じ分けて暮らしていたんだ」
しばし沈黙が落ちる。
出会ってすぐ、あんなに恐ろしかったヤマタノオロチだったのだが――。
(なんだか可哀そうに見えてきた……)
じわじわと同情心がわいてきた。
(私も、家族もだれもいないからと、ヤマタノオロチの妻に選ばれ、村の皆から避けられて生きてきたのだったわ)
自分の過去の境遇が、目の前の異形の怪物のそれと重なった。
ヤマタノオロチに対する恐怖心がどんどん和らいでくる。
そうして、八つの頭が一斉に話し始めた。
「だから、鶴姫が、私のところに嫁いできてくれて、本当に嬉しいんだ。その、君は私の生贄ということになってはいるが、良かったら、子どももたくさんほしいなと思っている。月並みかもしれないが、幸せな家庭を築きたいんだ」
ヤマタノオロチは、照れくさそうに告げてくる。
「見たところ、鶴姫は可愛らしい女性だし、こんな大きな体の私を受け入れてくれと、頼みづらいのだが……一応国が決めたしきたりだし、君をさっそく私の妻にしても良いだろうか?」
なんだか彼ら――もとい彼は、恥ずかしそうに話していた。
「ああ、でも君が嫌なら、神官たちには適当なことを言っておくから、後からでも良いんだよ」
(オロチ様……)
出会ったばかりだが、どうせ夫婦になるのだからもうここで覚悟を決めてしまおうと思った。
それに――。
「孤独な者だった同士で、家族をたくさん産んで、幸せになるのも楽しそうです」
私は自然と、オロチに笑顔を向けていた。
「鶴姫」
「だから、オロチ様、どうかお願いいたします……」
ヤマタノオロチは、嬉しそうに一声鳴いた。
(受け入れるのは良いけれど、でもやっぱり……)
人として――というよりも、竜として悪い存在ではなさそうだが、やはりこれだけ巨大な身体をしたヤマタノオロチの妻になることが、本当に可能なのだろうかと不安は沸く。
私が俯いていると、一匹の頭が、私の頬をぺろりとなめた。
「こわいだろう、鶴姫……まだ成人したばかりだというのに、このような目に合うとは……君の身体が傷つかないように大事に扱うから」
そう言うと、一つの舌が、私の唇をぺろりぺろりと舐めた。
「あっ……」
唇に誰かの粘膜が触れる経験は初めてで、身体がぴくんぴくんと震える。
そのうち、オロチの舌の一つが口の中に侵入して、それこそ蛇のように蹂躙し始めた。
「んんっ……あ……」
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