【R18】異母妹を正妻にするのでしょう? でしたら、悪妻の私は死ぬことにしますね

おうぎまちこ(あきたこまち)

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 レティシアに茶を渡した侍女は自殺してしまった。結局、誰がレティシアごと子どもを殺そうとしたのかは分からなかった。
 そして――数日後、カノンが再び姿を現した。

「お姉様、大変だったようですわね。どうかまたお元気になってくださいませ。そうだ、こちらをお食べください。子どもの流れた女性の体によく効くそうですわ」

「……ありがとう」

 口にしたら危険なものかもしれない。
 けれども、何もかもどうでも良かった。
 漆黒の箱の中にはコロンと丸いチョコが一粒入っていた。
 そっと摘むと甘ったるいそれをかじる。

(ああ、やっぱり……)

 やけに熱くて舌先が痺れはじめた。

(……この間と同じ毒だわ)

 状況だけ考えれば、継母か異母妹がレティシアの命を奪おうと目論んだのだろう。

(わざわざもう一度毒を盛ってこなくても、この間の毒で私はいずれ死んだのに……馬鹿な母子ね……)

 レティシアは椅子の上から床へと崩れ落ちる。

「お姉さま……!」

 カノンがわざとらしく叫ぶのが、不協和音のようだった。
 レティシアは首に両手を宛てがう。
 苦しくて堪らないのに、やはりどこか他人事で……
 だけど……
 もしも人生をやり直せるのなら……次の世界では……

(私の赤ちゃんも一緒に……)

 ……幸せに。

 レティシアは苦しみにのたうち回りながら、頭上を見上げる。

「ふふ、わたし、アルフォンス様に頼まれてね、そのチョコを渡したのよ」

「そん……な……」

 ――夫アルフォンスも共犯だというのか。

(殺したくなるほど嫌われていたの……?)

 絶望で視界が黒く塗りつぶされていく。

「病弱だからって、周囲の関心を惹いて……本当に鬱陶しい。貴女さえいなければ、私が全員から愛されたっていうのに」

 カノンが醜い笑みを浮かべながら告げた。

「大好きな旦那様から愛されなくて、子どもも失って良い気味ね。ふふ、あはは」

 傲慢な顔をした義妹の姿を見ながら死ぬのか。

(ずっと我慢ばかりの人生だったわね)

 けれども、そこで自分の間違いに気付く。
 突然、下腹から眩い光が溢れ始める。

「何よ、この光は……!?」

 カノンが叫ぶ。

(私は、なんてことを……赤ちゃん、本当はまだ……生きて……私が自暴自棄になったせいで……私の大切な……)

 そうして――
 レティシアは最初の生を失ったのだった。



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