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しおりを挟むレティシアに茶を渡した侍女は自殺してしまった。結局、誰がレティシアごと子どもを殺そうとしたのかは分からなかった。
そして――数日後、カノンが再び姿を現した。
「お姉様、大変だったようですわね。どうかまたお元気になってくださいませ。そうだ、こちらをお食べください。子どもの流れた女性の体によく効くそうですわ」
「……ありがとう」
口にしたら危険なものかもしれない。
けれども、何もかもどうでも良かった。
漆黒の箱の中にはコロンと丸いチョコが一粒入っていた。
そっと摘むと甘ったるいそれをかじる。
(ああ、やっぱり……)
やけに熱くて舌先が痺れはじめた。
(……この間と同じ毒だわ)
状況だけ考えれば、継母か異母妹がレティシアの命を奪おうと目論んだのだろう。
(わざわざもう一度毒を盛ってこなくても、この間の毒で私はいずれ死んだのに……馬鹿な母子ね……)
レティシアは椅子の上から床へと崩れ落ちる。
「お姉さま……!」
カノンがわざとらしく叫ぶのが、不協和音のようだった。
レティシアは首に両手を宛てがう。
苦しくて堪らないのに、やはりどこか他人事で……
だけど……
もしも人生をやり直せるのなら……次の世界では……
(私の赤ちゃんも一緒に……)
……幸せに。
レティシアは苦しみにのたうち回りながら、頭上を見上げる。
「ふふ、わたし、アルフォンス様に頼まれてね、そのチョコを渡したのよ」
「そん……な……」
――夫アルフォンスも共犯だというのか。
(殺したくなるほど嫌われていたの……?)
絶望で視界が黒く塗りつぶされていく。
「病弱だからって、周囲の関心を惹いて……本当に鬱陶しい。貴女さえいなければ、私が全員から愛されたっていうのに」
カノンが醜い笑みを浮かべながら告げた。
「大好きな旦那様から愛されなくて、子どもも失って良い気味ね。ふふ、あはは」
傲慢な顔をした義妹の姿を見ながら死ぬのか。
(ずっと我慢ばかりの人生だったわね)
けれども、そこで自分の間違いに気付く。
突然、下腹から眩い光が溢れ始める。
「何よ、この光は……!?」
カノンが叫ぶ。
(私は、なんてことを……赤ちゃん、本当はまだ……生きて……私が自暴自棄になったせいで……私の大切な……)
そうして――
レティシアは最初の生を失ったのだった。
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