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3 マリーンの想い
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しおりを挟むアイザックの妻になるマリーン。
幼い頃、貧乏子爵だった父のへき地の仕事に着いて行った際、幼いマリーンは魔物に襲われてしまった。その時、知らない女の人に助けられたのだった。
それ以降はあまり人に迷惑をかけないようにして生きてきた。
貧乏暮らしが板についていたので家事も得意になった。
そうして、成人が近くなった彼女は、ある時恋をした。
「マリーン様」
屋敷に仕える青年騎士バッシュだ。
彼は優しくて話が面白くて、快活で剣の腕も強くてハンサムだ。
紅くて短い髪に、切れ長の青髄の瞳で見つめられ、長い指でさりげなく触れられるとドキドキしてしまう。
「マリーン様のような女性と一緒になれたら幸せでしょうね……」
貴族の優雅な青年たちとは違う魅力を持つ彼の虜になったのだった。
そんなある時――。
成人の祝いでホロ酔い気分だった時、バッシュと二人きりになった。
彼に見つめられると目が離せなくて、相手の瞳に溺れてしまいそうな感覚になって……。
――気づけば、彼とベッドの中で一夜を共にしていた。
とはいえ、マリーンは処女のままで、身体に触れられて、ただ気持ち良くなっただけだった。
「仕えるべき主の娘に手を出すなど……俺をどうか罰してください」
そう言って、相手は必死に謝ってくるではないか。
「いいえ、そんなことは出来ません。もし父が貴方との交際を反対したとしても、私が説得しますから……それがダメなら…………一緒に駆け落ちしても構わない。私は貴方と貴方の子に囲まれた生活が出来さえすれば、それで……」
その時、彼がはっと息を呑んだ。
彼が返してきたのは――。
「いいえ、マリーン様、俺に貴女は相応しくない……自分のことをもっと大事にしてほしい」
「大事に、とは……?」
「マリーン様には俺のような平民出身の騎士じゃなくて、もっと相応しい男がいますから……」
そうして――想いは通じないまま数月が経った。
最初は身分差があるから、彼が踏み出せないのだと思ったのだけれど――。
声をかけても無視される始末で……。
マリーンの気持ちは次第に塞いでいく。
(遊びだったのかしら……)
どうあがいても――バッシュの気持ちが自分にない以上は、どれだけ思い続けても、彼とは結ばれない。
(……遊びだったのでしょうね……)
頭では理解できたけれども、心が追い付かない。
父に罰してもらっても良かったのだろうけれど――一夜を共にした日のバッシュの、少しだけ哀しそうな表情が忘れられず――あの表情まで嘘だとは思いたくなくて――罰してもらうことはしなかった。
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