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5 4人の邂逅
25 マリーン
しおりを挟む部屋の中に入ったマリーンは、ベッドの上で赤ん坊を抱きしめながら、ぶつぶつと呟いていた。
「バッシュもアイザックも私を愛してはくれないの……? 誰も私を愛してはくれない……」
彼女はぼんやりとしたまま告げる。
「だけど、アイザックだけが幸せになるのは許さない……夫になったのに……こんなにあっさり私を捨てるなんて……」
意外にもあっさりと離縁に応じたように見えたマリーンだったが――。
「ふふふ……ふふ……」
またもや彼女は唐突に肩を揺らしながら笑い始めた。
それに反応して、赤ん坊が目を覚まし泣き始める。
――パシンッ。
高らかな音が鳴り響き、児はますます泣き叫んだ。
「うるさいわね……」
無慈悲な言葉を告げた後、マリーンは妖艶な笑みを浮かべる。
「……簡単には幸せにはさせないわ……私、知っているのよ、私という妻がいるくせに、他に女を作っていること……みんな私から離れるというのになら――誰かの心も道連れに……ふふ、ふふ、はは、ははは……」
彼女の声は、赤ん坊の悲鳴にかき消されて、外のアイザックには聞こえることがなかったのだった。
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