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第2話 公園のコート、最低最悪な出会い side百合
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しおりを挟む制服姿のまま、アパートを出発して、しばらくが経つ。
夕方に差し掛かりはじめていて、太陽が傾いている。
大きく膨らんだリュックを背負った私は、目的地を目指して歩いていた。
行き先はもちろん、お母さんの知り合いのおじさん――「瀬戸さん」のお家だ。
……真っ暗になる前に着きますように……!
そんなことを考えながら、公園を横切る。
ちょうど目の前には親子の姿が……。
「ママ!」
「ほら、帰るわよ」
小さい子どもが、母親に手を引かれながら帰っていった。
そんな二人の背中を見ていたら……。
優しかったお母さんのことを思い出して、じんわり涙が浮かんでくる。
「お母さん……私一人でやっていけるかな……」
弱気な気持ちに負けちゃいそう。
だけど、頑張らなきゃ……!
泣いてなんかいられない。
「そういえば……」
――瀬戸のおじさんは、海外出張中らしい。
だったら、お家には、瀬戸さんの奥さんと息子さんが二人で住んでるのかな?
「雇い主になる家族が優しい人だったら良いな……」
曇り空を見上げると、雨がちらつきはじめた。
風がびゅうっと吹く。
「きゃあっ……!」
校則通り膝下丈のスカートが、少しだけめくり上がった。
生足が寒くて仕方がない。
「よし、急ごう!」
ちょうど、公園の端に辿り着いた。
バスケットコートの近くを過ぎろうとした時――。
――ダムッ。
強く低い。
ボールが跳ねる音が耳に届いた。
(あ……――)
そうして――。
フェンスの向こう。
――私は目を奪われてしまう。
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