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第8章 将軍夫婦の結末
第68話 夫の優しい嘘6 最後の口づけ4
しおりを挟む屋敷を出る前に、客室の扉をデュランダルは叩いた。
中から、デュランダルと同じ藍色の髪の色をした妙齢の女性――カエルラが現れる。
彼が部屋の中をのぞくと、これまた藍色の髪をした少年がすやすやと眠っていた。
「デュランダル様、お世話になりました。また、国内が落ち着いたら、村に戻ろうと思います」
彼女の言葉に、デュランダルが返す。
「おそらく、あんたと息子が、村に帰ることは出来ねぇ……」
「え……? どういうことですか……?」
驚く彼女に、彼は畳みかけるように伝える。
「宰相のシュタール曰く、村への補給路を断っているらしい――」
カエルラは、ますます困惑した様子だった。
「あと、以前言ってた……事情があって離れたっていう、あんたの娘の名前はラピスって言うんだろう?」
「――どうして、その名前を――?」
カエルラの目は、零れんばかりに大きくなる。
「明日からあんたも忙しくなるだろう――だけど、俺から一つだけ頼みがある」
そうして――。
――頼みを聞いた彼女は、彼に向かって声を荒げた。
「待って、デュランダル……! フィオーレ様はこのことをご存じなの――!?」
「フィオは知らねぇ……俺の産みの親の、あんたにしか頼めねぇ――頼む――」
息子の訴えを真っ向から受け止めたカエルラは、彼の決意に頷くことしかできなかった。
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