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光はまだ見えない
しおりを挟むぼんやりと空を見つめる。
青と黒の空にうっすらと混じる灰色の雲。
変わりゆく色と形はいつまでも眺めていられる。
「まだ見てるの?
こんなに冷えて……。 せめて毛布はかけなよ」
頬に触れた手が熱く感じる。
心地よく感じるのは身体が冷えているからなのか、よく、わからない。
ぬくもりが離れていくのが惜しくて手を引き寄せる。
首に巻き付けるように腕を抱き込むと苦笑する気配がして体を抱き上げられた。
そのまま長椅子に一緒に寝転ぶ。
抱き込まれた半身が温かくて気持ちいい。
頭を胸に乗せ空を見上げる。
見える範囲に月はない。
それでも明るい夜空から、目が離せない。
風の音しか聞こえない空間はとても静か。
ここに来てからずっと空を見上げているけれど、夜空が一番好きだった。
抜けるような青空もきれい。だけど、まぶしくてずっとは見ていられない。
夕日もきれい。鮮やかな茜色や紫の混じった灰色の雲は美しく思う。けれど移り行く空は焦燥を感じさせ、落ち着かない気持ちにさせられる。
こうしている今も世界は動いていると思わせられるから。
ふと黙っている彼が気になり首を動かすとこちらを見ている彼と目が合った。
ずっと見られていたのかと感情が波立った……、気がする。
気まずさ?
苛立ち?
恥ずかしさ?
わからない、でも何かが動いた。
ここ最近では珍しいこと。
この屋敷に来てからずうっとぼんやり過ごしている。
昼も夜も空を見てぼうっとしている。
あの時から。
いらない存在になったと知ってから。
視線を空に戻し、落ち着かない視線から目を逸らす。
彼は何も言わず温かさを分けてくれる。
どうしてここに連れてきたのか。
一緒にいるのはなぜか。
そもそも私を助け匿ったのはどうしてなのか。
わからない、けれどどうでも良い。
今はまだ、何も考える気になれない。
くるりと身体を反転させ足を絡める。
温かい身体へ手を回すと息を詰める音がして唇を奪われた。
薄い寝衣の上から撫でていた手が中へ入り込み直接熱を与える。
臍の辺りから腰回りをくすぐる感触に背を震わす。
強く首筋を吸われて悲鳴のような声が出た。
痛いくらいの刺激から熱い舌が這う感触。そして脚を撫でる大きな手のひらの熱。
与えられる愛撫に息を乱し彼を誘う。
何も考えられない、考えたくない。
思考を止めてくれる手の動きへ意識を集中し、甘い声を漏らした。
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