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〜甘い学園生活送ります〜
王弟殿下がモテないのは私のせいではないと思う
しおりを挟むグレイス様が心配そうな、というか呆れ顔でこちらを見ている。
正確にはまた性懲りもなく絡んできた王弟殿下を見ている。
「なんでまた男装してるんだ、なぜ!
オマエが男装を止めてやっと俺にキャーキャー言ってくれる子ができたのに、オマエがその格好で来た途端にいなくなったんだぞ!」
「フェリシア様の男装とは関係ないのでは……?」
「それに殿下の目的は婚約者探しであってファンを作ることではないですよね」
グレイス様と私のツッコミが王弟殿下へ容赦なく飛ぶ。
取り繕わなくていいと言われたので同じ学生として普通に接している。
「関係ないわけないだろ!
明らかに食堂や廊下での話題がオマエの話になっているんだぞ!
どう考えてもあるだろ!!」
同じ長机に座り文句を言い続ける王弟殿下にグレイス様は迷惑そうな顔をしている。すぐ隣じゃなくても嫌だよね。
邪魔ですとも言えないので早く教師が来ないかなと祈るに留める。
「殿下も人気があるのですから本腰を入れて婚約者を探せば良いではないですか」
「そうですよ、モテようなんて考えていると失敗しますよ」
グレイス様、私と続けて意見されて怒りに顔を赤くする。
言われるの嫌なのに取り繕わなくて良いなんてなんで言ったんだろうと思ったけれど、言い返すことなく悔しそうな顔をしている。
「殿下、逆に考えれば良いのでは?」
思いついた、というように声のトーンを上げてグレイス様が提案する。
「どれだけ人気を取られてもフェリシア様は女性なのですから、最終的に殿下の妨げにはなりません。
婚約を結びたい方がいらっしゃっても取り合いになることは絶っ対にありませんから」
なんか一箇所にすごく力が籠っていた。
ルークが婚約届を持ってきたときのことも見られているし、無事に婚約届が受理されたことも報告してある。
ようやく長年の想いを実らせたと思っているのでそう言うのも当然だ。
もう二度と邪魔が入らないように婚約を破棄して早々に次の婚約を結んだのだから。
「ほう……。 確かにな」
素直に受け入れた。グレイス様が殿下を丸め込もうとしている!
私の視線に黙ってなさいというように圧力を籠めて目線を返す。
あ、同じテーブルでうるさいのが嫌なんだ。わかった、と殿下に気づかれないように頷く。
良かった。この流れなら男装への文句は言われなくなりそうだ。
男装できなくなったなんて言ったらルークの機嫌が悪くなりそうなので、どうにか回避したかった。
ルークの不在中にあった男子生徒からのちょっかいを教えてから女子の制服とカツラを没収されそうなほどだったから。ルークが女子寮に入れない身でほっとしている。
周りの女子生徒が喜ぶのもあるし、自分の身の安全とルークの心の平穏のためにも男装は止められない。
今は寮以外では基本的に男子の制服を着て過ごしていた。
「むしろフェリシア様に注目が集まっている分、殿下はじっくりとお相手を見極めることができます。
メリットしかありません」
「なるほどな、一理ある」
話が丁度切れたところで殿下に席に戻るよう促すつもりだったが、それよりも早く教師が入ってきた。
今から席を移るのも面倒だと思ったのか、殿下がそのまま筆記用具を広げだす。
グレイス様の眉が寄ったのを私はしっかり見てしまった。
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