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37 帰路に着く
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翌日、俺たちは朝の8時頃に宿を出た。このまま一日かけて城に戻り、今回のデート(小旅行)は終了だ。帰りは、行きに寄れなかったところを回りながら、来た時よりもゆっくりと時間をかけて城に向かった。
「ということで、お土産です」
「わぁ、ありがとうございます! 可愛らしいキャンディーですね!」
「トウセイが選んだんですよ」
「色んな食べ物が集まる町に、キャンディーのお店があったんです。おすすめのものを聞いて買ってきました」
「嬉しいです! 大切にして食べますね」
アリシアは食嬉しそうに笑って、飴が入った包みを受け取った。夕方に城へと到着した俺たちは、その場で解散とはならず、一緒に俺の部屋へと向かっていた。俺が誘ったからではない。グレンノルトが部屋まで送ると言って聞かなかったからだ。その途中に、アリシアと出くわし、丁度いいと出かけたお土産を彼女に渡した。
「夕食はお済みですか?」
「はい。せっかくなので、城下町の方で食べてきました」
「ふふっ、今回のデート楽しんで来られたようですね。良かったです」
デート……他人からそう指摘させると、ちょっと恥ずかしい。未だにグレンノルトと、そういう仲になったことに慣れていないんだ。アリシアは、「お話、絶対に聞かせてくださいね!」と言って謎にサムズアップするし、グレンノルトはニコニコしてるしで、俺だけこの状況に恥ずかしさを感じていた。
「えっと、アリシア! お仕事中でしたよね、邪魔してしまってすみません!」
多分、この2人は俺が恥ずかしがっているのを分かってやっているんだと気づいた俺は、その場から退散しようとそう彼女に話しかけた。自分も、さっさと部屋に戻りたかったし。でも彼女は、「確かにお仕事中ですが、今は休憩時間です」と答えた。
「でも、どこかに向かっていませんでしたか?」
「ええ、これをお客様の元へと届けに」
そう言ってアリシアがポケットから取り出したのは、小さな袋だった。
「クルミに……ピーナッツ?」
彼女から袋を受け取り、中を確認する。グレンノルトも気になったのか、俺の後ろから覗いていた。
「はい。実は今、王の妹君であるエドナー夫人とその姫君がいらっしゃっているんです」
「クロエ様が!? 到着は来週では?」
「私もよく分からないのですが……お忍びでの来訪できたのでもてなしも結構と言われています」
グレンノルトとアリシアが話しているのを俺は聞いていた。まとめると、王の妹であり、今はもう隣国へと嫁いだクロエ・エドナーという方が娘を連れて、お忍びでこの城にやって来ているらしい。予定では来週来るはずだったが、その予定を早めたということだった。
「もしかしたら、来週の大雨を警戒してのことかもしれません」
グレンノルトがそう小声で話す。確かにわざわざ予定を早めたのに理由はあるはずだ。予言にもされるほど、大きな被害が出ると予測される大雨を避けてのことなら納得出来る。
「なるほど……だいたい分かりました。しかし、この袋となんの関係が? まさか、夫人や姫君に出すものではありませんよね?」
グレンノルトがそう尋ねると、アリシアは「違います!」と語気を強くして否定した。
「それは、姫君が連れてきたペットにあげるものです! すごく可愛いんですよ? 私も休憩中に撫でさせてもらったし」
ペット……俺はある一つの可能性が思い浮かんだ。グレンノルトも同じことを思ったんだろう、自然と目が合う。グレンノルトは、緊張しているときのような、しかし言葉で言い表せない複雑な表情で一と頷くと、アリシアの方を見た。
「そのペット……まさか、リスでは?」
不思議と俺たちには、確信があった。アリシアが目をぱちくりとさせる。そして、にっこりと笑った。
「ええ、よく気づきましたね! 大人しくて、お利口で、すごく可愛いボスくんという名前のリスですよ」
「ということで、お土産です」
「わぁ、ありがとうございます! 可愛らしいキャンディーですね!」
「トウセイが選んだんですよ」
「色んな食べ物が集まる町に、キャンディーのお店があったんです。おすすめのものを聞いて買ってきました」
「嬉しいです! 大切にして食べますね」
アリシアは食嬉しそうに笑って、飴が入った包みを受け取った。夕方に城へと到着した俺たちは、その場で解散とはならず、一緒に俺の部屋へと向かっていた。俺が誘ったからではない。グレンノルトが部屋まで送ると言って聞かなかったからだ。その途中に、アリシアと出くわし、丁度いいと出かけたお土産を彼女に渡した。
「夕食はお済みですか?」
「はい。せっかくなので、城下町の方で食べてきました」
「ふふっ、今回のデート楽しんで来られたようですね。良かったです」
デート……他人からそう指摘させると、ちょっと恥ずかしい。未だにグレンノルトと、そういう仲になったことに慣れていないんだ。アリシアは、「お話、絶対に聞かせてくださいね!」と言って謎にサムズアップするし、グレンノルトはニコニコしてるしで、俺だけこの状況に恥ずかしさを感じていた。
「えっと、アリシア! お仕事中でしたよね、邪魔してしまってすみません!」
多分、この2人は俺が恥ずかしがっているのを分かってやっているんだと気づいた俺は、その場から退散しようとそう彼女に話しかけた。自分も、さっさと部屋に戻りたかったし。でも彼女は、「確かにお仕事中ですが、今は休憩時間です」と答えた。
「でも、どこかに向かっていませんでしたか?」
「ええ、これをお客様の元へと届けに」
そう言ってアリシアがポケットから取り出したのは、小さな袋だった。
「クルミに……ピーナッツ?」
彼女から袋を受け取り、中を確認する。グレンノルトも気になったのか、俺の後ろから覗いていた。
「はい。実は今、王の妹君であるエドナー夫人とその姫君がいらっしゃっているんです」
「クロエ様が!? 到着は来週では?」
「私もよく分からないのですが……お忍びでの来訪できたのでもてなしも結構と言われています」
グレンノルトとアリシアが話しているのを俺は聞いていた。まとめると、王の妹であり、今はもう隣国へと嫁いだクロエ・エドナーという方が娘を連れて、お忍びでこの城にやって来ているらしい。予定では来週来るはずだったが、その予定を早めたということだった。
「もしかしたら、来週の大雨を警戒してのことかもしれません」
グレンノルトがそう小声で話す。確かにわざわざ予定を早めたのに理由はあるはずだ。予言にもされるほど、大きな被害が出ると予測される大雨を避けてのことなら納得出来る。
「なるほど……だいたい分かりました。しかし、この袋となんの関係が? まさか、夫人や姫君に出すものではありませんよね?」
グレンノルトがそう尋ねると、アリシアは「違います!」と語気を強くして否定した。
「それは、姫君が連れてきたペットにあげるものです! すごく可愛いんですよ? 私も休憩中に撫でさせてもらったし」
ペット……俺はある一つの可能性が思い浮かんだ。グレンノルトも同じことを思ったんだろう、自然と目が合う。グレンノルトは、緊張しているときのような、しかし言葉で言い表せない複雑な表情で一と頷くと、アリシアの方を見た。
「そのペット……まさか、リスでは?」
不思議と俺たちには、確信があった。アリシアが目をぱちくりとさせる。そして、にっこりと笑った。
「ええ、よく気づきましたね! 大人しくて、お利口で、すごく可愛いボスくんという名前のリスですよ」
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