冒険者で食っていこうとしたけど前途多難です

加納ひより

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 ようやく、寮生活に馴染んだ三日目。入学式当日。
 雲一つない空が、眩く光る太陽が新入生を歓迎するように輝いていた。

 入学式は生徒のみの参加で、家族の参加は認められていない。例外があるとすれば護衛と侍従が必要な王族、準王族くらいか。
 寮から移動した生徒は講堂に置かれた椅子の背に名前の書かれている札があり、その場所へ整列する。クラス分けは入学式後、張り出されることになっているので、今はまだ浮き足立つ者も少ない。
 忖度が働いたであろうノアとカッシェの側には、ダリウスとビィクトルの姿がある。
(はあ、視線がうるさい。マジうざい)
「バックレたい」
「良いわけ無いだろう、一時間くらい我慢しろ、クラス分け後は自由も利くんだから」
 ノアの腰に手を添え、耳打ちをするダリウスの所作は淑女に対するそれであり、ダリウスに穏やかに微笑み言葉を返すさまは、お似合いの恋人同士のようだった。
 二人がじゃれ合っている間に講堂では、入学式の始まりを告げるアナウンスが響き、一礼して全員が腰を下ろした。粛々と進む中、眠さを隠せないノアは欠伸を噛み殺し、目をかろうじて開けた状態で膝の上に置いた左手を右手で触る。もちろん触ってるのは指輪だ。
 ウトウトし始めたノアの眠りを覚ますように、あたりが騒然と色めき立った。小声でなにかを囁き合っているようだが、はっきりと聞こえない。
 仕方なく目を開け、壇上を見る。瞬間、これ以上ないくらい目を開け、ひゅっと息を飲んだ。


「⋯っ!」


 そこには、同じ制服なのか?と疑わずにはいられない均整の取れた引き締まった体躯に、さらさらと風になびく銀髪を下ろして、総代の挨拶を読むレノの姿があった。
(えっ、はっ?なんの冗談?!)
 ノアは、息をするのも忘れて挨拶するレノを見つめ、しばらく動けずにいた。舞台の上で堂々とするレノは、冒険者のレノとは違って、見惚れるほど2、3割増しに格好良い。
「ノア、大丈夫か?」
 そっと身を寄せて、小声で問いかけてくるダリウスに頷くと動揺を見せないように再び下を向くと、隠しきれない動揺で微かに指先が震える。
 震えを抑えてるうちに入学式は終了し、ダリウスはノアをエスコートし、講堂を後にした。
「ノア、震えてるが大丈夫か?」
「うん、人に酔っただけ、人がいないとこに行けば大丈夫」
「そうか?なら良いんだが」
 そっと寄り添うダリウスにもたれ掛かれば、自然と支えるように片手で抱きしめられた。
「ノア、大丈夫?僕たち4人ともAクラスだよ」
 先んじてクラス分けを見に行ってくれたカッシェはそっとノアの腕に触れ、労わるように撫でた。
「じゃ教室に行くか」
 ビィクトルはノアの真後ろへ移動し、その横にはカッシェが位置し、ノアへの視線を防ぐ。横には先ほど以上に寄り添うダリウスがノアの腰を抱き込むと、誰も近づけないようにノアへの視線を目隠しした。

 教室は長方形になっており、後ろへ行くほど高くなっていく。席順は決められておらず、自由に座れるようだったので、中央の一番後ろの席へと横並び四人で腰を下ろした。
 男女比率は7対3。子女への学び舎を広げたと言っても、勉学に勤しむ女性は少数派だ。クラス全体は60名ほどで、全員入ったとしても教室の8割程度しか埋まらない。
「ますます、ノア調子悪くなってない?」
 顔色を失い、ダリウスに寄り添う青白い顔のノアは、カッシェに手を握りしめられると、微かに握り返す。


 今のノアは、それどころではない。
 なにが起きてるのか意味がわからなさすぎて、「ヤバい」しか浮かばない頭はまともな思考が働かない。今すぐ叫んで逃げ出したい。


 教室ではちょっとしたオリエンテーションが行われると思いきや、担任は自己紹介と一年間よろしくと挨拶しただけで、後はクラスメイト同士で交流してくださいと言い残してさっさといなくなってしまった。貴族っぽい所作だが、片手間でやっているやる気のない担任なのだろう。
 クラスメイトと交流する気のない4人は、囲まれる前に教室を後にし、夕食のときに集まろうと部屋へと戻った。
「ノア、部屋鍵かけて俺が来るまで開けないでね。何かあればすぐ来れるから」
 ダリウスは部屋まで送ったノアに釘を刺すと、心配そうにしながらも制服を脱ぎたいのと、届けられているであろう教材が気になりノアの部屋を後にする。
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