冒険者で食っていこうとしたけど前途多難です

加納ひより

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「レ、ノ」
「黙ってろ」
 すでに抵抗する体力も残っていないノアは横抱きに抱き上げられ、観念したようにレノの肩口に顔を埋めた。
「さっきの、最後に使った魔法。どの魔法なのかちゃんと説明してもらうからな」
 レノは抱えたノアに誰の耳にも入らないくらい小さい声で、言い聞かすように耳元でつぶやく。ノアは顔を上げ重そうなまぶたを持ち上げ、ウザそうに目を細めた。
「まだ、完成じゃないし」
 不貞腐れたようにレノの肩口に顔を隠した。
 そう、あの魔法はまだ完成ではない。闇魔法事態が、正体不明なところもあり、研究が進んでいない。
 この世界には、四大元素に氷、雷、光、闇、8つの系列魔法が存在する。
 普通は、生活魔法を中心に四大元素を1つ使えれば御の字。魔術師の才能があるものは、四大元素を2つ以上と氷、雷、光の応用系統が使える。応用系統とは氷ならば、水と風の応用
 闇魔法だけ、応用が効かない。独自系統の魔法と世間での常識だ。
 ノアは光以外の全てを使用可能で、特に氷と雷が相性がいい。特化している時点で規格外と言わざるを得ない。


 演習場から一番近い森を抜け、ベガ棟へと向かった。
 森を抜けたお陰か余計な詮索をする視線も、阻む人もなく、話が通ってるのか入口で寮監と警備に呼び止められることもなく、すんなりとノアの部屋へとたどり着いた。

 ノアの部屋へ着いた途端、レノは寝室へと向かいノアをベッドへと寝かせる。
「あまり無茶、するな」
 ベッドの脇に立ちベッドに片膝を付くと、レノはノアの頬を手のひらで包み、額を合わせてそっと魔力をノアへと流し込む。
 レノのほんのりと温かい魔力が、額と手のひらから与えられ、ノアは気持ちよさそうに目を閉じた。
 しばらくは気持ちよさそうに目を閉じていたノアだったが、徐々に物足りなさを感じ、頬を包んでいたレノの手に触れた。
「⋯⋯レノ、足りない」
 じわりと与えられる表面接触の魔力はゆっくりで、魔力不足を起こしたノアには歯がゆく、もどかしい。
「あとから、文句言っても知らないからな」
 覚悟を決めたレノはベッドへ乗ると、ノアの上に乗っかるように手を付け、そっとノアに口付ける。
「⋯んっ⋯」
 最初はついばむように合わせられた唇は、流す魔力量に応じて深くなり、最初はためらっていたノアの舌は魔力の心地よさに、無意識のうちにレノの舌を捕らえ、逃さないように絡んだ。
「⋯んっんっ⋯」
 魔力の心地よさと粘膜接触による心地よさに意識を朦朧とさせノアは、レノの背中に手を回し気持ちよさを伝えるように服を掴む。
「はぁ⋯ん⋯」
 ノアは一度離された唇から新しい空気を吸って、まだ足りない、逃さないとばかりに再び唇を合わせる。
「⋯んぅっ⋯」
 レノから与えられる魔力が興奮を伝えるように量が増え熱くなると、どろどろに溶けて自分の境界線を見失うように、レノに甘えるように舌を絡める。その舌が、自分のものかレノのものか定かでないくらいに。
 室内には、熱く蕩けるノアの押し殺す声と、ぴちゃぴちゃと濡れる唾液の音が響き、二人の興奮を高めた。
 何度かの口づけのあと、魔力を補給し終わったノアは、レノと口づけたまま疲れ切って体力と気力が底をつき、そのまま眠り込んでしまった。
「⋯⋯マジか⋯⋯」
 急に動きの止まったノアに唖然として、レノは今にも爆発しそうな状態に頭を抱えた。かと言って、眠っているノアの横で致すことも出来ず、冷たいシャワーを浴びることとなった。


 日が陰ってきた頃、まどろみから覚めたノアは、働かない頭を全力で起動させる。
「やらかした⋯」
 ノアと真正面から戦って、楽しくなりすぎて研究中の闇魔法を発動させてしまった。あれはまだ、不完全すぎて発動条件がまちまち過ぎるため、使用を控えていた魔法だった。
「てか、おも、い?」
 自分を抑え込んでいる腕に気付きノアは左へと顔を向ける。そこにはいつものレノの寝顔があり。安心したようにため息をついた。
「レノ」
 回された腕をポンポンと叩くと、うっすらとレノの瞼が開かれる。目覚めたノアに気づき、頬を手のひらで撫でると額に手を当てる。
「気分は?吐き気はないか?」
 寝起きで少し手荒い動きで、頬を何度も撫でるその手は優しく温かい。
「ないよ。ここまでレノが連れてきてくれた?」
「ああ、手を掴んだ後、魔力不足でそのまま力が抜けたからな」
「僕その後、記憶があやふやだ」
 寝くずれた髪を手持ち無沙汰そうに弄り、ノアはレノから何気なく目をそらした。
「あの魔法は」
「闇魔法だよ、僕光魔法使えないだろ?だから、闇魔法なら使えるかもって思っ、て⋯⋯」
 闇魔法と聞いた途端、目を吊り上げ怒りを露にするレノに驚き、ノアは思い出したように語尾が気まずそうに小さくなって消えた。
 ノアが冒険者を始めて間もない頃、精神干渉系の闇魔法を使って意識を失ったことがあり、レノにそれ以降使用を禁止されていた。
「お前、完全に忘れてたな」
 レノのノアを優しく撫でていた手が髪を一房鷲掴みにし、少し強めに引っ張る。
「研究は続けてたんだよ!さっきまで実践はやってない!理論だけであそこまで構築したのエラくない?」
 怒っているのがわかるくらい強く引っ張られ、ノアは言い訳をするように言葉を続けた。
「実行して、魔力不足で倒れてたら本末転倒だろ」
「悪かったよ、まさか魔力不足になるほど持っていかれるとは思ってなくて」
 レノは大きな大きなため息をつくと、意地悪そうに口角を歪ませ、ノアの唇に親指を這わせた。
「お前、そのせいで俺の魔力半分近く持っていったの覚えてるのか?」
「今満たされてるレノの魔力でなんとなく⋯⋯」
 意味ありげに唇を這っていた指を払いのけ、ノアは上半身を起こし上がらせた。上掛けに覆われていた身体が冷たい外気に触れ、どんな姿で寝ていたのか気づき、慌てて上掛けを引き寄せた。
「ちょっ、服着てなくない⋯」
 かろうじて下着だけは身につけているのを確認して、ノアは隣でまだ寝ているレノの上掛けを剥ぐ。
「演習場で戦った後の汚い服で、布団に入りたくないだろうという、俺の親切心だな」
 もちろん、レノも身につけているのは、下着だけだった。
「授業は?」
「俺はサボり」
「お前はね、僕は」
「お前もサボり」
 埒が明かないやり取りに現状を諦め、ベッドから降りようと背を向けた瞬間、後ろから抱え込まれ、布団の中へ引き戻された。
「魔力、もう少し回復しとけ」
 レノはわざと耳元で低い声で囁き、寝る態勢を整えノアを抱え込む。
「⋯ずるくない?」
 くすぐったさと悔しさの入り混じったつぶやきを漏らすと、大人しくレノの腕の中で目を閉じた。
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