『3乙するところを2乙で食い止め連帯責任に持ち込ませる精神力』に憧れて!

川井田ナツナ

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第2乙

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 ギャル語の神様に「異世界転生よろ~」と言われた時、俺は自分の肉体を認識する事ができなかった。
 それが何を意味するのか……。過去にクエストで一緒になった『牛乳3.6L』さんは言っていた。
 彼の辞書には『時と場合』というものが存在しないように思える。

「もしも死んで神様に会った時に自分の肉体が無ければ、俺は進んで『もう一度、オスとして生きたい!』と懇願するだろう」

 その一言で同接していた女性二人との通話が切断されたが、彼は別に下心でゲームをしてたのでは無いと思う。
 俺が思うに肉体の消失イコール、性別のリセットの可能性を危惧した発言であったのでは無いかと。
 それでもなお、人間の雄ではなく……オスと言ったのは生き物であれば何でも良いという、彼なりの最大限の『譲渡』と受け取る事ができると俺は解釈した。

 要するに俺は、「3乙するところを2乙で食い止め連帯責任に持ち込ませたらノーカンにしてくれ!」とは頼んだが、生まれ変わったらナニモノになっているかランダムという事……もしかしたら、モンスターだってありえる。

 そして……鼻から吸った空気、地面に立つ感覚、手でこぶしを握れる……恐らく人間として転生したに違いないッ! まぶたをバッっと見開いた!

 おかしい……目の前には、鏡に映るいつも通りの「俺」。
 いい歳した……むしろ二十七歳だというのに「寄生虫でおk?」と自尊心の欠片もないプレイヤーネームでゲーム世界に心酔していた『御乙拓実みおとたくみ』が立っていた。

「なるほど……詰んだな」

 それが転生した異世界(恐らく俺の部屋)で発した言葉だった。
 そもそも、同じ姿なら転移では無いのか……。
 いや、神様が転生と言ってたから転生なのだろう。
 いやいや、その前にまずやるべき事があるだろう俺よ。

「ステータスっっ!!」

 俺は右手をバッっと前に出してみる。
 おかしい……俺の知る異世界転生アニメではテンプレのはずだが……出ない。

「……ギルドか?」

 頭をフル回転させた俺が次に導き出したセカンドアンサーは『ギルドでの能力測定』。
 そう思ったら、身体が自然と玄関の扉を開けて外に出ていた。

「なるほど……詰んでるな」

 俺の前に広がるのは対岸が遠くに見える湖と、それを囲む山。
 どうやら俺の初期位置は、湖畔の小屋らしい。
 俺は静かに小屋の中に戻った。

 そして思い出す。牛乳さんは同接を切られた後にこう言っていた……

「情報に左右されるような女に俺は興味がない……。情報というものは自分の意志で創作するものだと思わないか?」と……。

 確かにそうかもしてない……だが。

「今欲しい情報おもいででは無いっす牛乳さん……」

 俺は一人……玄関で膝を崩し、床にこぶしを打ち付けるのだった。
 
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