異母妹にすべてを奪われ追い出されるように嫁いだ相手は変人の王太子殿下でした。

あとさん♪

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7.「だからお嫁さんが欲しくなって」……は?

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(え? 本気で? 口実だったのではなく?)

 更にウィルフレードは驚きの内心を吐露する。

「僕の弟が結婚してね。これがもう、こっちが呆れるほど愛妻家になってしまって、もうこの兄を構ってくれないんだ!」

「……はぁ」

 憤懣ふんまん遣るかたなしといった風情が見受けられることに驚きである。本音だと解るからなおさら。

(結婚したのなら、それが当然なのでは?) 

 リラジェンマは母とは違い、相手の心の機微の細やかなところまでは把握できない。
 だがウィルフレードが、いま本音で話しているのは伝わってくる。一人称が『ぼく』になっているし。
 そして彼女の記憶が確かならば、王太子ウィルフレードはもう24歳になっているはずで、彼の弟である第二王子はリラジェンマの二つ上の21歳のはずなのだが。
 成人は男女ともに16歳のはずだが、それはウナグロッサだけの常識なのだろうか。このグランデヌエベでは違うのだろうか。成人をすぎた兄弟は結婚しても妻より兄を優先するものなのだろうか。

(ええと……だいぶ、ブラコンなのかしら?)

「だからお嫁さんが欲しくなって」

 弟に結婚を先越されたから自分も焦って相手を見繕った。
 一見いっけん、一理あるような言い訳ではあるが、だからといって隣国のをむりやり指名しなくてもいいのではないかと、リラジェンマは思う。過去に親交があり知己で相思相愛の相手ならともかく、自分たちは初対面だ。変ではないか?

「……国内で適当に見繕ってはいかがでしょう」

「うーん。かれこれ10歳の時から探してはいるんだけどね、だれも彼もピンとこなくてねぇ」

「……はぁ」

(ピンとこない……えぇえ? 王太子ともあろう者が自分で伴侶を選ぶの? 国王陛下が決めるものではないの?)

 高位貴族の縁組など政略結婚が定番だ。だいたいは親が決めた相手を伴侶にするものだ。王族ならなおのこと。
 そう思っていたのだが、グランデヌエベでは違うようだ。

「だから丁度ちょうどいいし、お嫁においで♪」

「ちょうどいい」

 明るく。あくまでも明るくあっけらかんと口にするウィルフレードの様子にリラジェンマは軽く眩暈めまいを覚えた。

(えぇぇぇぇ? 自分で決めるならそこには好みってものがあるのでは? ちょうどいいなんて理由で決めていいの?)

 好みがあるからこそ、ピンとこないという理由でいままで婚約者がいなかったのではなかろうか。
 そういえば年配の侍女ハンナもウィルフレードが連れて来た女性というだけで、諸手を挙げて賛成しているような風情だった。

「そう。ちょうどいいだろ? 僕は君がと思ったし」

(そうだってなに? なんのこと⁈)

 結婚は家のため、国のためにするもの。
 今までのリラジェンマの常識ではそういうものだった。だが、ウィルフレードの行き当たりばったりな物言いは彼女のいままでの常識から遥かに逸脱した理論を展開している。

「わたくしにはウィルが何を言っているのか、もう、何がなんやらさっぱり解りません。ことばの違いにしても解らなすぎる」

 混乱をきたす話をされ戸惑っているのだと伝えれば、ウィルフレードはあくまでも笑顔である。ときおり本音を見せつつ王太子の仮面を被ったりもする。だから一層リラジェンマは混乱する。

「えぇー? ちゃんと受け答えできてるよ?」

 朗らかな明るい笑顔はだれからも好かれるだろう。そんな表情を向けて、なのに王太子の仮面を被りこちらを観察もする。本音と建前の絶妙なブレンド具合がいっそ天晴あっぱれというべきなのか。

「基本的な言語は同じですから、意味は分かるのですが、なにかこう……肝心なところで理解がさっぱりなのです」

 おもに常識とか常識とか常識とか。

「そうなの? ま、いいや。その話はで」

 ケロっとした軽い笑顔でウィルフレードは言うが。

 『おいおい』? これから徐々に、とか時間が経つにつれてだんだんと、といった意味だったと記憶している。
 そんな適当で悠長なことを言っていて良いのだろうか。
 そして何よりも、このウィルフレード・ディオス・ヌエベという男はこんなに行き当たりばったりな人間なのだろうか。
 戸惑うしかないリラジェンマを知ってか知らずか、ウィルフレードはにっこりとで彼女に指し示した。

「さあ、着いたよ。グランデヌエベの第一神殿だ」

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