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【番外編】終末のはじまり~夫人の独白~
しおりを挟む※カレイジャス公爵夫人クリスティアナの独白(約二年まえ)
※長いです。申し訳ない。
◇ ◆ ◇ ◆
神さま。
これはどういう仕儀なのでしょうか。
わたくしは一生懸命に毎日を過ごしてきただけだというのに。
余命宣告、ですか。
現在の医療ではどうにもならないって、本当なのですか。
もう治しようがないからせめて最後は痛みを感じないよう処置しましょうって言われたのは……死ぬのを待つしかない、ということですか。
わたくし、まだ三十八歳になったばかりなのですが、もう余生を覚悟しなければいけないのですか。
ついこのあいだ、十八歳の長女が結婚してドレイク侯爵家へ嫁ぎ。
十六歳の長男の婚約者が決定し、これでやっと一息つけると思ったばかりなのに。同じく十六歳の次男の婚約は……本人の希望でまだ決めていないから、心配事は消えていないのだけど。
もう、わたくしはこの世にいられないのですか。
これはあれでしょうか。『母』としてのわたくしの役目はほぼ終わったのだから用無しだ、ということなのでしょうか。
それが神の思し召しだと。
わたくしが十八歳のときにカレイジャス公爵家に嫁いできてからもう二十年になったのですね。
わたくしの、二十年……。
いろいろありましたよ。
本当に、いろいろと……。
――あら?
……なんでしょう。
悲しい、というよりもホッとするような心地なのは。
あぁ。これはたぶんきっと……やっと終われるから、でしょうかね。旦那さまとの生活が。
今現在、旦那さまとわたくしとの交流が皆無なせいで、それなりのストレスを感じているから、かもしれません。
世間にも親戚にも『なにも問題ありません』という仮面を被ることに疲れてしまったのかもしれません。
愛娘が巣立った今、ろくに話し相手になってくれない息子たち。いずれ長男が結婚して彼に爵位を譲渡すれば、わたくしは旦那さまと領地へ移住するか、ここに残るかになるはずです。
……旦那さまとふたりきりだなんて、今更なにを話したらいいのやら。仕事のこと以外で話なんて思いつきません。考えただけで気が滅入るばかりです。
イヤですね、貴族の夫婦って。
表面ばかり取り繕って、夫婦としての絆なんてありはしないのだから。
でも、結婚まえは違ったのですよ?
ふたりでいると嬉しくて、ドキドキして、視線が合うだけで幸せで。
嫁ぐまえのわたくしはブリスベン伯爵家の娘でした。
お父さまが決める結婚相手に対し、不満を言えるわけもなく。
わたくしたちの婚約は、今現在の旦那さま(当時は公子さまだったジュリアンさま)たっての希望……とやらで結ばれた縁談だと聞いています。
婚約者時代はよかったです。
初めて会う婚約者という存在に不安だらけのわたくしに対し、ジュリアンさまは笑顔で迎えてくださった。
マメにお手紙をくださったし、会うたびにお花やお菓子などといった可愛らしいお土産をくださった。大切な舞踏会のまえにはわたくしのお衣装を設えて(ジュリアンさまの瞳と髪の色で!)くださったし、お誕生日のプレゼントもいただきました。
ジュリアンさまのエスコートはとてもスマートで、わたくしはうっとりしてしまいました。
たくさんの可愛らしいものと綺麗なものを贈られて、心がほかほかと温かくなりました。
それよりもさらに嬉しかったのが、なんども囁いてくださったおことば。
……可愛いとか愛しているとか。
やさしくわたくしの名前を呼んでくださるときの瞳とか。
それらを聞いたわたくしは、有頂天になってしまったのね。
愛される、幸せな公爵夫人になれるって夢を見てしまいました。
でも結婚して長女が生まれて……。あの日の旦那さまのおことば、ちょっと忘れられないです……。ショックでした。
そのころから旦那さまは元老院議員としてのお仕事と領地経営とで忙しくなってしまって……。ちょっとずつ、本当にちょっとずつ疎遠になっていきました。
それでも二年後には双子の息子たちが生まれて……。産後まもなく、またしても旦那さまはショッキングなことばをわたくしに投げかけて……。
あのときは、いっしょに聞いていらしたお義母さまが憤慨してくださいました。
双子を生んだわたくしは体調を崩し、臥せりがちになってしまいました。
そのせいでしょうか。あれ以来、旦那さまとの閨はありません。
体調が快復してからも、ずっと。
夫婦の寝室に置かれている家具には埃避けのカバーが掛けられている始末です。使用しないのですもの。当然ですわね。
肌を触れ合わせなくなってから、旦那さまと接する時間がぐっと減りました。
それと同時に、旦那さまからわたくしへの気遣いも無くなりました。
婚約者時代はたくさんいただいていたお手紙やお花、お土産など。
可愛いとか綺麗だねとか愛しているとか、そういうやさしいことばを貰えなくなりました。
公爵夫人として割り振られる品位維持費の中から好きなだけお衣装もお飾りも用意できるけれど、旦那さまが選んでくださるようなことは、もうありません。
そういえば、結婚記念日も忘れてしまっているみたいです。
極めつけはわたくしの誕生日にすら、領地へ行っていたりお仕事優先になってしまったこと。
毎年そうなのです。
以前、子どもたちがまだ幼いころ。小さなお茶会を開いてくれたことがありました。わたくしの誕生日祝いだと銘打って。
嬉しかったのです。
その日の夜、帰宅した旦那さまにそのことをお話ししたら、また冷たいおことばをいただいてしまいました……。
くだらない、と。
公爵夫人がこどもたちのおままごとに付き合う必要などないと。
盛大なパーティを開いてちゃんとした招待客を大勢呼べばよいと。
誕生日を祝われるのはいくつになっても嬉しいと思うのですけど、わたくしのそんな考えは浅慮で幼稚らしいです。
わたくしから申し出ないと気がついてくださらない方に言われたくありませんでした。
プレゼントもお花もカードも……おことばすらくださらない方に。
そう。たったひとこと、“誕生日だね、おめでとう”って旦那さまから言っていただきたいだけなのに。一年に一度くらい、妻のことを思い出して欲しかっただけなのに。
それ以来、子どもたちとした「些細なこと」は、旦那さまにお話ししなくなりました。
話題はもっぱら公のこと。報告義務のある連絡事項のみに。
だれだって、幸せな時間を過ごしたあとにそれを貶されたくありませんものね?
そうやって少しずつ、わたくしと旦那さまの心の距離も離れていきました。
けれど、思っていたのです。
それらすべて旦那さまのお仕事が忙しすぎるからだと。
だって旦那さまの日常は領地経営と王宮でのお仕事(議員のうえに外務大臣も兼任してます)で忙殺されています。公爵夫人であるわたくしは、それをよく理解していました。
わたくし自身も同じ派閥の貴族夫人たちとの社交があります。旦那さまが激務で多忙なのは周知の事実でした。
わたくしは、そんな激務の旦那さまが邸宅にいるあいだだけでも癒されますようにと願いながらいろいろと手配していました。
なんどもコックと相談して、そのときの体調に合わせた身体に良いものを食事に出したり、ちゃんと睡眠がとれるよう寝室を整えたり。
少しでも旦那さまの助けになるように、旦那さまの外交相手のご夫人と会談をし根回しをしたり……。
旦那さまのためにといろいろ気にかけて行動していたつもりでした。
そんなある日、公爵家の収支決算をまとめていて見つけてしまいました。
娼館からの請求書に。
そこは高級娼館で。お仕事上、他国の外交官との密談や秘密裏に納めたい後ろ暗い案件などをそこで相談されている……と昔、お義母さまから説明を受けていたけれど。(お義父さまも外務大臣としてお忙しかったから、そこをご利用なさっていたのだとか)
お仕事として利用しているのなら、この請求書は公爵家に来るはずありません。外務省での公費として処理されるはずのものです。
……たぶん、私用のご利用だったのでしょう。
わたくしの手元に気がついた家令の顔色が変わったのがその証拠です。
なんとなく思いましたの。
あぁやっぱりね、と。
ここで欲は発散できるから、だから、わたくしと閨を共にする必要はないのね、と。
そこでわたくしはやっと気がつきました。
あぁ旦那さまにとってのわたくしって、跡継ぎを生むだけの役割を求められていただけなのね、と。男の子を生んだから、もう不要なのね、と。だから、わたくしと閨を共にする必要がないのね、と。
そして外遊にわたくしを伴わないのは、わたくしの身体を慮ったからではなかったのだと。
婚約者時代の甘いおことばはなんだったのかしらと、思わなくもなかったけれど。
あの時のやさしいジュリアンさまを忘れられなくて、ずっと尽くしてきたけれど。
ショックじゃないなんて、言えないけれど。
それならそれで、別にいいかと思いました。だって、わたくしにも矜持がありますもの。
それ以来、わたくしはジュリアンさまの妻というよりは、カレイジャス公爵夫人として取り繕うことを覚えました。わたくしたちは貴族ですもの、それが当然なのです。
結婚まえ囁いてくださった『愛している』のことばは、きっとその場を取り繕うためのやさしい嘘だったのでしょう。
『愛』なんて、わたくしたちのあいだには始めから存在していなかったのです。
わたくしたちは“夫婦”ではない。“公爵閣下”と“公爵夫人”であるだけ。
ふたりの間に愛は、ない。
思い知ったわたくしの心は凍りつきました。
……閨事がすべてではないと思っていました。
尽くしていれば、真心は通じると思っていました。
でも。
閨事がないのならスキンシップとか気遣いとか、そういったものがあるはずですよね?
愛はなくとも、人としての思いやりがあるのなら。
それすら……ないのです。
ないまま日々を過ごせば、今まで持ち合わせていた旦那さまへの愛情も目減りするというもの。
顔色を見て、疲れているなぁと察して労わりのことばを投げかけたり。
今日はなにをしたのと聞いてみたり。
いくらそんなふうにわたくしの方から話しかけても、木で鼻を括ったような返事しかしてくれなかったり、疲れているからまた今度といって自室へ引き上げてしまったりの旦那さま。
髪型を変えても、新しいお衣装を着ても気がついてくださらない旦那さま。
足の怪我をして杖を使っていたときにも、ろくに心配してくださらなかった旦那さま。
わたくしの顔すら、もうちゃんと見てくれない旦那さま。
王宮へのお勤めの際、毎朝お見送りをしていたけど……わたくしの変顔に気がつかれたことは、とうとう一度もありませんでした。(旦那さまの秘書官とは何度か目が合ったけど、優秀な彼は全力で目を逸らしてくれました。……彼には悪いことをしましたわ)
そんなことが繰り返されたら、こちらから話しかけるのも躊躇われて。
みごと、私的な会話のない“公爵閣下”と“公爵夫人”になってしまいました。
だってわたくしたちは貴族ですもの。
国家のために。そして領民たちのために存在しているのですもの。
私的な“愛”なんて不要なのです。
そういえば、旦那さまからのおはようの挨拶すらも、ここ十年ほど聞いていない気がします。
わたくしからおはようと話しかければ、伏し目がちに短くあぁと応えるか黙って頷くかのどちらか。
一度、エリカに聞かれたことがありましたわ。
おとうさまはどうしていつも不機嫌なの? って。
わたくしたちのことお嫌いなんですねって。
わたくし、あのときのエリカになんて返したのかしら。よく覚えてません。
こんな状態、夫婦とは呼びませんよね。ただの同居人?
少なくともわたくしの両親は、こんなにギスギスとした冷えた関係ではありませんでした。もっと穏やかで……目と目で見つめ合えばやさしく微笑むような。お互いの手をとって温め合うような。
子どものわたくしから見ても、笑顔になってしまうような……。
わたくしの両親のようなケースの方が、貴族としては珍しいのかもしれません。
ここ十五年くらいは、“妻として”ではなく“母として”生きてきました。
カレイジャス公爵家の女主人として、子どもたちをちゃんと育てなければと懸命になっていました。
公爵家に従事する家臣団や使用人たちのために、家政を切り盛りしてきました。
旦那さまを立てて社交をこなし、彼の政治活動や領地経営のサポート役に徹してきました。
“妻”として認識されていなくても、有能な“公爵夫人”であろうと努力してきました。
ある日、わたくしは嫁いだ娘エリカへ手紙を認めました。
体調が悪いので精密検査を受けるために大学病院へ行くつもりです、と。
同じことを息子たちにも話しました。
エリカは手紙を受け取ったその足で我が家に里帰りしました。もの凄い勢いで、顔色が悪い身体を大事にしなければだめだと怒られてしまいました。あの子は気が強いのです。しっかり者なので安心なのですが。
息子たちは真剣な顔で心配してくれました。やっと決心したんだね、いつ病院へ行くの? すぐ帰ってくるよね? 今日は書類なんか見ないで早く寝なきゃだめだよとサラウンドで言ってくれました。
ふだんはろくに話してくれないのに。
そういえば、初めにわたくしの顔色が悪いと気がついて健康診断を奨めてくれたのは息子たちでした。
もうおおきくなったけれど、いくつになっても子どもたちは可愛いです。
あの子たちがいてくれたから、わたくしはこの二十年間やってこれました。
感謝しかありません。
その大学病院での検査で余命宣告されてしまうとは、夢にも思っていなかったのですけれど……。
長く保ってもあと一年ほどだそうです。
伯爵家に生まれて十八年。公爵夫人になってから二十年。
せめて長男の結婚する姿を見たいのだけど、それも叶わないかもしれませんね。
わたくしが亡くなったら……残されたこどもたちはどうなるのでしょう。エリカは嫁いでるからいいけれど、息子たちは? ちゃんと旦那さまとお話できるのかしら。最近はわたくしとも話をしてくれなくなっているのに……。
不安しかありません。
旦那さまには、検査を受けに行くことを伝えられませんでした。
わたくしに関心のないあの人の反応が怖かったからです。
もし万が一、心配すらされなかったら――。
いいえ。『万が一』どころではありませんね。十中八九、心配するどころか冷たい返事がくると簡単に想像できましたもの。
忘れもしません。足の怪我をしたときのこと。
杖を使っていたわたくしに、旦那さまはウロウロするな見苦しいと叱責なさいました。
だいじょうぶかという気遣いのひとことすら、貰えなかったのです……。
そのあげく、家令をとおして領地での静養を提案されました。家令は穏やかな性質だからことばを選んでくれたけれど、きっと『見苦しい姿を晒すくらいなら領地へ引っ込ませろ』くらいのことばは言われたのかもしれません。
だから。
検査に行くことなど告げませんでした。ましてや結果なんて。
旦那さまの眉間の皺とか、心無いひとこととか。
冷たい視線、とか。
容易に想像できるからこそ、聞きたくありませんでした。
わたくしは、もう傷つきたくないのです。
おとなになったのに、親になったというのに、わたくしはまだ臆病者なのです。
彼から心ないことばを聞くのが怖いのです。
きっと彼はわたくしが死んでも気がつかないし気にしない。
わたくしなんかが居なくても、彼の日常は変わらない。
それが少しだけ悲しくて……仕方ないわと諦めてしまう。
諦めてしまう気持ちの奥底で。
わたくしの死を悲しんでもらいたいと、そんな夢をみてしまうわたくしもいるのです。
わたくしの死を嘆き悲しむ彼を見てみたいと。
わたくしのことで右往左往する彼を見てみたいと。
そんな仄暗く無意味な期待を持つ愚かなわたくし。
まさしく『見果てぬ夢』で終わりそうです。
精密検査の結果『余命宣告』を受けたことは、わたくしの専属侍女ジャスミンにだけ告げました。
生家の伯爵家から嫁ぐときに一緒に来てもらったわたくしの腹心。彼女はわたくしのことをよく理解しています。そしてわたくしといっしょに苦労したり憤ったり哀しんだり喜んだり笑ったりしてくれました。
わたくしの命が残り少ないと知った彼女は、顔色を悪くし涙を溢してくれました。
どうして奥さまがこんな目に合わねばならないのですかと、静かに怒ってくれました。
はらはらと落ちるジャスミンの涙はとてもうつくしかった。
あとのことは彼女に託そうと決めました。
彼女なら時を見計らって子どもたちへ告げてくれるだろうし、わたくしの望んだとおりに後始末をしてくれるでしょう。
一番、信用できるし信頼しているから。
本当は。
本当は“一番信頼できる”のは、伴侶でないとだめなはずなのに。
そう思える相手と結婚したつもりだったのだけど。
人生なんてままならないものなのですね。
帰りたいです。
二十年まえの……いいえ、結婚とか将来とかに夢と希望しか感じなかった娘時代に。
なんの憂いもなかった少女のころに。
還りたい。
せめて、魂だけでも。
彼の言う『愛してる』を無邪気に信じていたあのころに。
ああ、それでも。
わたくしにも最後になすべき大仕事がありました。
わたくしの亡骸を提供すれば、あの大学病院で研究が進み、同じ病に悩む人の手助けになるやもしれません。
多額の寄付金とともにお願いすれば、きっと喜んで研究してくださることでしょう。
わたくしの個人資産から寄付をする手続きもしなければなりません。
ふふ。遺体から臓器がなくなったら、神さまの御許へは行けなくなるかもしれませんね。
でも医学の進歩のためになるのですもの。きっと神さまもお許しくださるはずです。
そうですよね? 神さま?
わたくしの葬儀ではどんなふうに噂されるでしょう。
まだまだ頭の固い連中がおおぜいいます。
愚か者と蔑まれるかもしれませんけど……死んだあとの評判なんて、わたくしにはどうでもいいことですね。
でも……外見はわたくしそっくりに成長したエリカが『公爵夫人の献身』などと評し、良いように喧伝してくれる可能性は高いですね。次の世代の社交界の華はあの子のようだし。
なによりもあの子、とても利発なうえに気も強い。わたくしの不評なんて聞いた日には烈火のごとく怒り狂うのが目に見えてますもの。
……わたくしがいなくなったらエリカは旦那さまと衝突するんじゃないかしら。ちょっと心配です。だいじょうぶよね? ダミアンとハーヴェイはおねえさま大好きな子たちだから、きっと宥めてくれるはず。
最悪の事態は避けられると期待しましょう。
あぁ、いやですね。
考えがまとまりません。思うことは多々あり、あちこちへ発展して惑うばかり。
気になることは多いけれど、おそらくそれら全部、わたくしが関わることはないものばかり……。
でも……。
わたくしの献体が好評となれば、ジュリアンさまはわたくしを見直してくださるかしら。
よくやったと言ってくださるかしら。
わたくしを見てくださるかしら。
頬を撫でて『あいしてる』と囁いてくださるかしら。
あぁ、本当にいやですね。
見捨てられ、顧みられることのない名ばかりの妻だというのに、なんて未練がましいことでしょう。
こんなあさましい執着、忘れられる日が来るのかしら。
早く忘れてすっきりとしたい。
それとも……わたくしの亡くなる日が先にくるのでしょうか。
神さま。
あなたの御許へ旅立つその日。
わたくしはなにを考えているのでしょうか。
【Back to square one】
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