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第二章
暴君
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腕を組み憮然とした表情を浮かべ、憎しみすら込めた眼光にディブロは怯む。
対してロドスは毒気を完全に抜かれたと、ため息混じりに立ち上がった。
「戻ったのか、ニーシャ」
「今しがた。 どこかの馬鹿王子に頼まれた緊急案件を片付けて、面倒くさいけど急いで戻ってみれば、ケダモノ共がイチャイチャする場面を見せつけられた私の気持ち、分かります?」
「お前はもう少し主に対して、敬意を払うのを覚えてくれたらどうかな?」
いつものように声をかけるも、ニーシャから出てくる言葉は恨み辛みが募った怨嗟の言葉が吐き出される。
主従関係にあるはずの二人だが、ロドスにしてもお咎めをするつもりはないのか、側近の態度を強く諌めなかった。
本来なら許可を得なければならない入室すら無視して、猫人はズカズカと歩を進めると空いた椅子に腰掛けてカップを持つ。
「一晩かけて戻ってみれば、こんな親密通り越して子づくり場面に出くわすとか、主のそんな卑猥な瞬間なんて見たくありませんでしたね」
「私の椅子に勝手に腰掛けて、紅茶を飲む不届き者の台詞とはとても思えないな」
「良いじゃないですか、深夜まで働いた報酬はあるべきです。 あっこれ統括長が淹れたんですね、運が良かった」
「……なぁ、ロドス」
「お気になさらず。 元々ニーシャにはこういう態度も含めて、私の側にいてもらってますから」
まだ温かい紅茶の香りと味に癒やされ、遠慮など取り払った態度でニーシャは喉を潤していく。
王族を、主を前にした不敬は首を斬られても仕方ない諸行なのではと、ディブロは主に問いかけた。
ロドスにすれば仕方がないと何故か彼の方が折れており、ものすごい勢いでポットの中身まで飲み干していく猫を眺めている。
「……ご馳走さま。 あっ、私のことはお構いなく続けていいですよ」
「つ、続けて……!? す、するわけないだろう!?」
「しないんですか? 何だ、殿下の責め苦に悶え喘ぎ苦しむ貴方の様子を絵姿にしようと思っていたのに」
「おいロドス! この子を側近にしてていいのか!?」
「いやぁ、私も初めの頃はそう思ったんですけどね、中々代わりがきかない人材なんですよ、ニーシャは」
あっという間に飲み尽くした絶品のお茶に満足して、ニーシャの毒も僅かながらに抜ける。
ただし言葉の棘は健在で、あろうことか目の前の番い達に交われと命令するや、どこからか取り出した紙とペンで描写すると言い出した。
少しだけ行動をともにしていたこともあるが、ここまで酷い従者は見たことがないと、ディブロは本気でロドスを心配する。
狼王子も無論そう思っているようだが、苦笑しながらもニーシャが落ちつくのを待っていた。
「……ふぅ。 落ち着いた。 それでは殿下、報告があります」
「やっとか、今日は長かったな」
「良いのかよ……。 話があるんだな、俺は退席した方がいいな」
「貴方もいてください、ディブロさん。 あっ、雌犬らしく寝所を温めて殿下を夜まで待つと言うなら止めません、後で行ってシーツ剥いで笑ってあげます」
「そんなことするか!? ていうか本当に君は何様なんだ!?」
「これが通常なんですよ、私の。 それに、これからする報告は、貴方が一番関係しているんです」
「……えっ?」
「殿下、構いませんね?」
「あぁっ。 というより、それだけて良くない状況なのが目に見えるようだな」
やっと仕事をする普段ぶりに戻ったニーシャは、ほんの少しだけ態度を改めて、ロドスに報告しようとする。
立ち入ることではないと部屋を出ようとするディブロを呼び止める猫人の毒舌ぶりはそのままなのは、そうしても問題ないと個人で判断されてしまった。
扱いが雑と思ったのもつかの間、男は自分が話の中心にいると遠回しに伝えられ、あ然とする横でロドスが肩を竦める。
椅子から立ち上がった猫人が、本来座るべき相手の腰を落ち着かせたあと、ミュシェと同じように二人の中心となる間に立った。
促されたわけではないが、このまま聞くことが望ましいという二人の物言わぬ空気に、立ち上がろうとしたディブロは腰を下ろす。
前向きな話ではない、その前置きに大きな不安を抱えて。
対してロドスは毒気を完全に抜かれたと、ため息混じりに立ち上がった。
「戻ったのか、ニーシャ」
「今しがた。 どこかの馬鹿王子に頼まれた緊急案件を片付けて、面倒くさいけど急いで戻ってみれば、ケダモノ共がイチャイチャする場面を見せつけられた私の気持ち、分かります?」
「お前はもう少し主に対して、敬意を払うのを覚えてくれたらどうかな?」
いつものように声をかけるも、ニーシャから出てくる言葉は恨み辛みが募った怨嗟の言葉が吐き出される。
主従関係にあるはずの二人だが、ロドスにしてもお咎めをするつもりはないのか、側近の態度を強く諌めなかった。
本来なら許可を得なければならない入室すら無視して、猫人はズカズカと歩を進めると空いた椅子に腰掛けてカップを持つ。
「一晩かけて戻ってみれば、こんな親密通り越して子づくり場面に出くわすとか、主のそんな卑猥な瞬間なんて見たくありませんでしたね」
「私の椅子に勝手に腰掛けて、紅茶を飲む不届き者の台詞とはとても思えないな」
「良いじゃないですか、深夜まで働いた報酬はあるべきです。 あっこれ統括長が淹れたんですね、運が良かった」
「……なぁ、ロドス」
「お気になさらず。 元々ニーシャにはこういう態度も含めて、私の側にいてもらってますから」
まだ温かい紅茶の香りと味に癒やされ、遠慮など取り払った態度でニーシャは喉を潤していく。
王族を、主を前にした不敬は首を斬られても仕方ない諸行なのではと、ディブロは主に問いかけた。
ロドスにすれば仕方がないと何故か彼の方が折れており、ものすごい勢いでポットの中身まで飲み干していく猫を眺めている。
「……ご馳走さま。 あっ、私のことはお構いなく続けていいですよ」
「つ、続けて……!? す、するわけないだろう!?」
「しないんですか? 何だ、殿下の責め苦に悶え喘ぎ苦しむ貴方の様子を絵姿にしようと思っていたのに」
「おいロドス! この子を側近にしてていいのか!?」
「いやぁ、私も初めの頃はそう思ったんですけどね、中々代わりがきかない人材なんですよ、ニーシャは」
あっという間に飲み尽くした絶品のお茶に満足して、ニーシャの毒も僅かながらに抜ける。
ただし言葉の棘は健在で、あろうことか目の前の番い達に交われと命令するや、どこからか取り出した紙とペンで描写すると言い出した。
少しだけ行動をともにしていたこともあるが、ここまで酷い従者は見たことがないと、ディブロは本気でロドスを心配する。
狼王子も無論そう思っているようだが、苦笑しながらもニーシャが落ちつくのを待っていた。
「……ふぅ。 落ち着いた。 それでは殿下、報告があります」
「やっとか、今日は長かったな」
「良いのかよ……。 話があるんだな、俺は退席した方がいいな」
「貴方もいてください、ディブロさん。 あっ、雌犬らしく寝所を温めて殿下を夜まで待つと言うなら止めません、後で行ってシーツ剥いで笑ってあげます」
「そんなことするか!? ていうか本当に君は何様なんだ!?」
「これが通常なんですよ、私の。 それに、これからする報告は、貴方が一番関係しているんです」
「……えっ?」
「殿下、構いませんね?」
「あぁっ。 というより、それだけて良くない状況なのが目に見えるようだな」
やっと仕事をする普段ぶりに戻ったニーシャは、ほんの少しだけ態度を改めて、ロドスに報告しようとする。
立ち入ることではないと部屋を出ようとするディブロを呼び止める猫人の毒舌ぶりはそのままなのは、そうしても問題ないと個人で判断されてしまった。
扱いが雑と思ったのもつかの間、男は自分が話の中心にいると遠回しに伝えられ、あ然とする横でロドスが肩を竦める。
椅子から立ち上がった猫人が、本来座るべき相手の腰を落ち着かせたあと、ミュシェと同じように二人の中心となる間に立った。
促されたわけではないが、このまま聞くことが望ましいという二人の物言わぬ空気に、立ち上がろうとしたディブロは腰を下ろす。
前向きな話ではない、その前置きに大きな不安を抱えて。
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