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第二章

皆大好き――?

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 さて、次は何をするかな?

 食料庫を作るかな?
 そうなると、まずは建材の確保か……。
 キノコ栽培の為にもカットした木は必要だから、多めに調達する必要があるけど……。
 そうだ!
 先ずは家の裏側の木を伐採しよう!
 この家は南を正面にしているので、北側って事だ。
 北側を伐採して木材を確保して食料庫を作成する。
 空いたスペース分結界を広げて国土拡張、さらにその場所でキノコを作る。
 イメージ的にキノコって日当たりが良い場所より、影になっている所の方が育ちやすい気がする。
 うん、悪くない!
 それで行こう!
 余った材木で、薪を準備するのも良いかも。
 白いモクモクがあるから、そこまでは必要ないと思うけど念のためだ。

 頑張ろう!

 森の中に入り込む。
 北側であり、木が乱立している為か、薄暗くてジメジメしている。
 新国境線とする辺りまで移動する。

 取りあえず、我が家一軒分、広げようかな?

 前世だとたった一人で行うにはかなり厳しい拡張工事ではあるが、この世界には白いモクモクという便利なものがある。
 直径一メートルほどの大木を前に、肩幅ぐらい足を広げて立つ。
 白いモクモクを右手から出すと、細長く変形させる。
 長さは三メートル、イメージは刀と言うには余りにも巨大すぎる日本刀だ!
 刃を鋭く形作る。
 これを斜めに振り下ろして、木を伐採していこうって寸法だ。
 前世では女子中学生どころか、成人男性でも不可能な一刀両断だけど、今世では案外簡単にて来てしまう。
 異世界故か、白いモクモクの優秀さか、フェンリルママ式修行の成果か、よく分からないけど――。

 モクモク製日本刀を、家とは逆の方に傾けながら振り上げると、一気に切り下ろす。

 白いモクモク刀が切り抜けた箇所がズズズっとズレて行くので、家と反対側に倒れるように手のひらで押した。
 この一押しがないと逆に倒れる事があるのだ。
 狙い通りの方向に傾いていき、他の大木を巻き込みながら倒れた。
 これが正しいやり方かは、正直定かではない。
 でも、いろいろ試してみてこれが一番楽なのだ。

 うん、行ける行ける!

 コツとしては、刀身に魔力をこれでもかってぐらい送り、カチカチに固めることだ。
 これをすると、白いモクモクは凝固し、さらに言えば重量を持つ。
 その重みを生かして切りつければ、大木どころか岩も両断できるようになるのだ。

 これを編み出したのは、実はわたしなのだ。

 初めて見せた時は、ママも目を丸くしていた。
 そして、笑いながら『あなたは変わったことをするわね』と褒めてるのか貶してるのかよく分からないことを言ってた。

 因みに、モクモク剣は家族中では流行らなかった。

 フェンリルママ達にはモクモク剣より強力な爪があるから当たり前か。
 いや、そんなことよりも伐採だ。
 まずは切り倒しまくる。
 切って切って切りまくる!
 切り株も、白いモクモクを根っこ付近に細い紐のように絡ませる。
 それを束にして持ち、背負い投げの要領で引っこ抜いた。
 抜けた根から落ちた土を被って最悪だったけど我慢した。

 そして、一時間ほどで完了した。

 本数は十二本ほど、ちょっと疲れた。
 だけど、枝を切ったり、切り分けたりと色々やることはある。
 地味に大変だ……。
 頑張るぞぉ~

 ……。
 ……。

 もう一時間かけて、完了!
 丸太が十二本になった!

 ……で?

 何となく、やっている途中で分かってたことなんだけど……。
 わたし、食料庫なんて作れないや。
 そもそも、釘すらない状態でどうすれば良いの?
 あれ?
 Web小説一般的な主人公ってどうしてたっけ?

 ……どうしてたっけ?

――

 朝!
 曇り!
 朝ご飯を食べて、外に飛び出た。
『熊肉ばかりじゃなく、野菜も食べたぁぁぁい!』
 ウァオォォォンと吠えた。
 だって、朝昼晩と熊肉に果物、茸の組み合わせだ。
 流石に飽きる。
 薬草ハーブは味付けには良いけど、それ単体はちょっとキツかった。
 ママの洞窟では、エルフのお姉さんが持ってきてくれたり、ママが育ててくれたりした野菜をなんやかんや食べていたから、なお思う。

 せめて、あれらの種が有れば育てられるのに……。

 森の中、もう一度探してみるか?
 それともやはり、人間の町に再挑戦か?
 悩ましいなぁ。
 などと考えていると、何かがに近づいてくる気配を感じた。
 視線を向けると、蟻さん達だった。
 結界の外で手を振っている。
 近寄ると、前足で何かをこちらに差し出してきた。

 おお~種かぁ~

 どうやら蟻さん達、林檎とオレンジで味を占めたようだ。
 いやまあ、こちらとしてはありがたい。
 三種類ほどあるようだ。
 なんだろう?
 楽しみだ!
 受け取ると、振り返り植える場所を考える。
 まあ、適当な場所で良いかな?
 いざとなったら、植え替えれば良いし。
 まずは一つを林檎の木の近くに埋めて、植物育成魔法を使ってみた。
「育てぇ~!」
 すると、にょきにょきと芽が出て、何かが育っていく。
「……なんだ、薔薇かぁ~」
 真っ赤でわたしの顔ぐらいの大きな薔薇が咲いた。
 う~ん、凄く綺麗で良い匂いだけど、出来れば食べられるのもが良かったなぁ。
 あ、薔薇ってジャムになるんだっけ?

 まあ、次行ってみよう。

 二つ目を植えて「育てぇ~!」をすると、稲っぽい植物が生えてきた!
「え!?
 お米!?」
と期待したが、何かが違う。
 どうやら大麦みたいだ。
 前世の記憶で、大麦はビタミンなんちゃらが取れるので、積極的に食べるべし、と聞いた記憶がある。
 ……でもどうやって?
 粉にすればなんとかなるのかな?
 保留の方向で。
 最後の一粒で、「育てぇ~!」をする。
 ……。
 ……。
 うん、待望の野菜だね。
 皆”大好き”、ピーマンだった。
 もちろん、わたしも大……ごにょごにょ。
 そんな前世のピーマン、そのものが実っていた。
 緑色のそれは、二十個ぐらい実の為に、地面にグニャリと倒れている。
 ……。
 わたしは全ての実をもぐと、大蟻の方に持って行く。

 さあ皆、お待ちかねのブツですよぉ~

 しかし、蟻さん達、まさかの受け取り拒否!
 前足を一生懸命オレンジの方に向けて、あっちを寄越せとアピールしている。
「ふざけないで!
 持ってってよ!
 少なくとも、半分は持ってってよ!」
 醜い争い後、何とか、十個のピーマンを受け取らせる事に成功する。
 仕方がなく、今朝方、再度魔法をかけて実らせたオレンジも、二十個ほど渡す。
「ピーマン、そこら辺に捨てたら二度と渡さないからね!」
と釘を差すのも忘れない。
 勿体無いお化けが出るからだ!
 理解したのか、勢いに負けたのか、蟻さん達はコクコクと頷き、それぞれを前足で抱えながら帰って行った。

――

 蟻さんを見送った後、家の裏側に移動する。
 さて、続きをやろうかな?

 昨日は、あれから薪作りに精を出した。

 え、倉庫作りは?
 って感じだろう。

 いや、だって、作り方なんて思いつかなかったんだもん!
 Web小説か何かの記憶で、釘を使わない日本建築とか何とか読んだ記憶があるけど、当然詳細なんて分からない。
 その辺りを悶々と悩み抜き、諦めて、取りあえず薪を作ることにしたのだ。
 そうしている間に、何か良いアイデアが浮かんでくると思ったからだ。

 薪の作成方法は簡単、白いモクモクでちょうど良いぐらいまでカットし、その山を同じく白いモクモクで広く覆い乾燥させる。
 そうすると、よく燃える薪さんの完成だ。
 取りあえず我が家の薪置き場に入るだけ作り、それを詰め込んだ。

 薪作り完了!
 ……良いアイデアは浮かんでこなかった。

 なので、もういいや! って昨日はふて寝をしたのだ。
 で、一晩寝た後に思ったこと。

 取りあえず、木材にしておいて国土拡張を優先しよう。
 それだった。

 大木を最大三メートルの高さになるようカットしていく。
 そして、白いモクモクで覆い、魔法で熱を送りながら乾燥させる。
 建物とかに使用するには乾燥させなくてはならないとWeb小説に書いてあったから、それに習う。
 乾燥自体は昨日、薪で散々やったから大分慣れた。
 雨が降ったらどうしよう。
 カバーとか欲しいなぁ。
 それが終わったら、白いモクモクで持ち上げて、家の前、東側に積んでいく。
 異世界の木が軽いのか、それとも、フェンリルママ式修行の成果か、小枝をするぐらいの気軽さで行える。

 二時間ほどで全てを完了した。

 あと、デコボコになっていた地面を白いモクモクをトンボ型にしてならした。
 結構大変だったけど、魔力を圧縮して重くしたトンボで頑張ったら、それなりになった。
 多分、前世の女子中学生のわたしは学校のグランドをこうやって平らにしていたのだと思う。
 部活をやっていたのかな?
 でも、浮かぶ光景では周りに人がいない。
 ……考えるのを止めよう。
 そこまでやって、ようやく国土拡張を行うことになる。

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