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第十三章

エルフのお姉さんに皆を紹介する!

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 妖精姫ちゃんが、身振り手振り何かを伝えようとする。

 え?
 続きは家の中で?
 あ、寒い中来てくれたエルフのテュテュお姉さんを外に出しっぱなしは良くないよね。
 でも……。

「テュテュお姉さん、あのね。
 今、家の中に保護している親子がいるの」
「親子?」
 不思議そうにするエルフのテュテュお姉さんに頷いてみせる。
「細かい事情までは知らないけど、命を狙われてるんだって」
「それはまた、殺伐とした話ね」
とエルフのテュテュお姉さんはちょっと困ったように眉を下ろした。
「うん、そうなの。
 ちょっと、わたし、先に家の中でテュテュお姉さんの説明をしてくるから、待ってて」
「分かったわ」
 エルフのテュテュお姉さんが頷いてくれたので、足からスキー板を外しつつ、急いで家の中に入る。

 扉を開くとヴェロニカお母さん達が待ちかまえるように立っていたので、ちょっと驚いた。

 妖精ちゃん達があらかじめ伝えてくれたのかな?
 わたしは荷物を置きつつ、手早く説明する。
「今ね、わたしが小さい頃からお世話になっているエルフのお姉さんが来てるの」
 それに対して、イメルダちゃんが納得した顔になる。
「いつも、サリーさんが話しているエルフの人ね」
「うん、そう。
 わたしの様子を見に来てくれたの。
 凄く良い人だから、皆のことだって問題ないと思うんだけど……。
 入って貰って良い?」
 ちょっと早口になってしまいながら話すと、ヴェロニカお母さんがにっこり微笑みながら「もちろんよ。紹介してね」と言った。
 シャーロットちゃんが不安そうに、ヴェロニカお母さんのスカートを掴んでいるので、わたしは視線を合わせながら、「凄く優しくて、おもしろい人だから大丈夫だよ」といってあげると「うん!」と頷いてくれた。
 可愛い!


「紹介するね!
 こちらがヴェロニカお母さん、そして、その娘のイメルダちゃんとシャーロットちゃん……。
 あと、向こうの部屋に女の赤ちゃんなんだけど、エリザベスちゃんがいるの」
とローブを脱いだテュテュお姉さんに紹介し、ヴェロニカお母さん達にも「こちら、テュテュお姉さん! わたしが小さい頃からお世話になってるの」
と紹介した。

 すると、ヴェロニカお母さんが一歩前に出て、スカートの裾を摘みながら丁寧に頭を下げる。
「ヴェロニカと申します。
 以後、よろしくお願いします。
 こちらは――」
と言いつつ、イメルダちゃん達を紹介していく。
 その仰々しい様子に面食らったのか、テュテュお姉さんは少し遠い目をしながら「あ、うん、なるほど……」とか言ってる。

 でも、最後にはニッコリ微笑みながら、「テュテュです。よろしく」と応えていた。

 次にと、視線をそばを飛んでいた妖精姫ちゃんに向ける。
「この子は妖精姫ちゃん!
 といっても、本名じゃなく、わたしが勝手にそう呼んでるだけだけど……」
と紹介すると、何故かエルフのテュテュお姉さんは目を丸くする。
「え?
 妖精?
 姫!?」

 ん?
 なんだろう?

 そこに、妖精姫ちゃんが何かを言っている様子だ。
 対して、テュテュお姉さんは困った顔で「いや、別に良いのだけど……」とか答えている。

 あれ?
 ひょっとして……。

「テュテュお姉さん、妖精姫ちゃんの声が聞こえるの!?」
 わたしの問いに、テュテュお姉さんは驚いた顔で答える。
「え?
 小さい娘――じゃなかった、サリー!
 あなた、聞こえないの?」
「聞こえないよ!」
「わたくし達も聞こえません」
とイメルダちゃんも続ける。
 エルフのテュテュお姉さんは小首を捻りながら「何故かしら?」などと言っている。
 いやいや、わたしにも分からない。
 それに対して、妖精姫ちゃんが何かを言い、エルフのテュテュお姉さんは「まあ、そうだけど……」などと答えている。

 えぇ~凄く羨ましいんだけど!

「良いなぁ、テュテュお姉さん!
 妖精姫ちゃんの声が聞こえてぇ~
 きっと、可愛らしい、いかにも女の子って声をしてるんだろうなぁ~」
「えっ!?
 う、うん……。
 綺麗な、声よ!」
 テュテュお姉さんは力強く頷いた。

 そうだろうなぁ~
 前世的表現で言えば、鈴を鳴らしたような綺麗で、愛らしい声なんだろうなぁ。

 そんなことを思っていると、恥ずかしくなったのか妖精姫ちゃんが、顔をひきつらせつつ、次の紹介を促してくる。

 なんか、そんな様子も可愛い!

 続いて、近くにいる妖精メイドちゃん達を紹介していく。
「名前は、こちらも勝手に決めちゃったの」
とちょっと、気まずく思いつつ言うと、エルフのテュテュお姉さんは「皆、気に入ってるみたいだから良いんじゃない?」と微笑んでくれた。

 それなら良かった!

 胸をなで下ろしていると、エルフのテュテュお姉さんは少し顔をひきつらせながら「それより、この子の話が聞きたいかな?」とシャーロットちゃんの隣に視線を向ける。

 ん?
 テュテュお姉さん、犬が苦手なのかな?

「この子はケルちゃん!
 首にもそれぞれ名前があって、レフちゃん、センちゃん、ライちゃんって言うの」
 わたしの紹介に合わせて、皆、嬉しそうに「がう!」「ごう!」「がおう!」とか吠えてる。

 可愛い!

 ん?
 何故か、テュテュお姉さんは遠い目をしながら「ケルちゃん……。うん……そう……なるほど……」とか言ってる。

 そして、妖精姫ちゃんをチラリと見た。

 それに対して、妖精姫ちゃんはニッコリ微笑みながら何かを言ってる。

 何言ってるんだろう?

 わたしの視線に気づいた妖精姫ちゃんが身振り手振りをする。

 気にしなくて良い?
 続けて?
 え?
 大丈夫なの?
 なら良いけど……。

 台所の入り口前に立っていた、シルク婦人さんを手招きして、紹介する。

「こちら、ヴェロニカお母さんの実家に住んでいた家妖精のシルク婦人さん!
 ヴェロニカお母さんの為にここまで来たの。
 家のことや、赤ちゃんのエリザベスちゃんを見てくれるから、とても助かってるの」
「家妖精……。
 そう……。
 ま、まあ、ね」
 などと、エルフのテュテュお姉さんは呟きつつ、丁寧にお辞儀するシルク婦人さんに合わせて「よろしく」と微笑みながら挨拶をしていた。
「あとは……。
 そうそう、ルルリンがいた!」

 わたしの声に気づいたのか、天井柄白色のスライムボディーがヌルリと降りてくる。

 それを右手で受け止めると、テュテュお姉さんに見せてあげる。
「この子はね、スライムのルルリンっていうの!」
 よろしくね! っていうように、スライムのルルリンがボヨンと揺れる。

 可愛らしい!

 ただ、エルフのテュテュお姉さんは強ばった笑顔で、その様子を眺めている。
「ん?
 どうしたの?」
 訊ねると、テュテュお姉さんはさび付いた機械のような、ぎこちない動作でわたしを見る。
「この子に魔力を与えた?」
「うん」
「名前を付けたの?」
「うん」
「あぁ~!」
とエルフのテュテュお姉さんは顔を両手で押さえて、悶絶する。

 え!?
 どうしたの!?

「駄目だった?」
と訊ねると、テュテュお姉さんはわたしの両肩をガシ! っと掴み、言う。
「この子はもう、しょうがないとして、今後、絶対、スライムに魔力を与えちゃ駄目!
 命名も駄目!
 分かった!?」
 エルフのテュテュお姉さんの剣幕に、わたしはちょっと引き気味に「う、うん」と頷いた。

 やっぱり、スライムに魔力は良くなかったのかぁ~
 でも、ルルリンは可愛いし、良い子だから大丈夫だよね!

「ルルリンなら問題ないよね!」
と訊ねると、”勿論!”と言うように、わたしの手の上でポヨンポヨン揺れるのルルリン、可愛い!

「他は!?
 もうこれ以上はいない!?」
とエルフのテュテュお姉さんが頭痛を堪えるように訊ねてくる。
「後は……。
 鶏さんと山羊さんかな?」
「え!?
 コカトリスとタングリスニルを飼ってるの!?
 流石に駄目よ!」
「落ち着いてテュテュお姉さん……。
 流石のわたしも、そんなの飼わないわよ!」

 ……いやまあ、普通――と言ったら、嘘にはなるけど……。
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