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第十四章

白大猿君討伐に出発する!

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 すると、妖精姫ちゃんがすーっと飛んでくる。
 そして、自身の胸を叩きつつ”わたしがいるから大丈夫!”ってアピールをする。

 ……う~ん、可愛いけど。

「でも、姫ちゃん、抜けているというか、うっかりとかしそうな気がして少々不安なんだけど……」
 わたしの指摘に、妖精姫ちゃんはショックを受けた顔をする。
 そして、”大丈夫! 頼りになる!”と言うように、力強く主張する。

 うんうん、分かったから!
 頼りにしてるよ!(主に、近衛騎士妖精ちゃんや妖精メイドちゃん達を)

 すると、妖精姫ちゃんが近衛騎士妖精の白雪しらゆきちゃんを指さしながら、身振り手振りをする。

 え?
 白雪ちゃんを連れて行く?
 家で何かあったら、白雪ちゃんに伝えてくれる?
 遠距離でも双方向で意思が伝わる?
 凄い!
 でも、他の人間もいるけど、大丈夫?

 なんとなく、妖精って人に見られないようにしているイメージがあったから訊ねてみると、近衛騎士妖精の白雪ちゃんはニッコリ微笑むと――姿が消えた!
 凄い!
 気配はなんとなく分かるから、光学迷彩的魔法なんだろう。
 それとも、種族的能力なのかな?
 気配がすーっと近づいてきて、わたしの肩に乗った。
 これなら、大丈夫かな。
「助かる!
 何かあったら、よろしくね!」
と妖精姫ちゃん達に言うと、姫ちゃんを始めとする可愛らしい妖精ちゃん達はニッコリ微笑んだ。

 え?
 だから、甘味?
 はいはい、分かりました!

――

 さて、町に向かって、出発進行だ!
 付いて行きたそうにするケルちゃんを「シャーロットちゃん達を守ってあげて!」と宥めるように撫でた後、スキー板を滑らせ、結界を出る。
 因みに、近衛騎士妖精の白雪ちゃんはわたしのコート、その胸元に入っている。

 肩だと、風で吹き飛ばされそうで怖いからね。
 白雪ちゃんなら、まあ、そんな事にはならないだろうけど、一応だ。
 因みに、胸の中とは言っても、様々な創作物のお姉様方のようにセクシーな感じにはなっていない。
 ヴェロニカお母さんならやれそうだけどね。

 やっぱりというか、玄関まで見送りに出てくれたシャーロットちゃん、寂しそうにしていた。
 一応、「戻ってきたら、ソリで遊ぼうね!」と言うと、「うん!」と笑顔になってくれたけど……。
 速やかに仕事を終わらせ、速やかに帰ろう!
 まあ、わたし一人でどうにかなる話でも無いけどね。

 森を進み、川を飛び越え、平原に出る。
 いつも通り、白狼君がやってきたので、白いモクモクで引っ張って貰う。
 う~ん、意識して探ると、所々に雪ヒル君らしき気配がある。
 わたしはともかく、白狼君達には危ないな。
『前に雪ヒル君がいるから避けるよ!』
 うぉんうぉん! と吠えると、何故かそちらに向かって駆ける白狼君達――はいはい、狩れば良いのね!
『離すよ! そこで止まってて!』と断りつつ、白いモクモクを解除する。
 そして、言う通り止まる白狼君達を抜き去ると、気配がする所に尖らせた白いモクモクをサクサクと突き刺す。

 結構多いな。

 進みながら刺していき、気配が無くなった辺りで、スキー板を斜めにして止める。
 六十匹くらいはいたかな?
 青黒い液体をこぼしながら、ピクピクしている。
 ふむ。
 解体所の所長グラハムさんが出来るだけ持ってきて欲しいと言っていたけど、今は荷車じゃ無く籠だからなぁ。
 コチコチにして引っ張るかな?
 などと、一匹を摘まみ上げていると、背後の上空から何かが向かってくる気配を感じる。
 ん?
 視線を向けると、真っ白な鷲がこちらに向かって滑降して来るのが見えた。
 体長は五メートルくらいかな?
 獲物を見つけた猛禽類の目が、ギラリと輝く。

 あれ、吹雪鷲ふぶきわし君だっけ?
 美味しかった……かな?

 などと考えていると、近衛騎士妖精の白雪ちゃんがすーっと飛び上がる。
 そして、抜剣すると、素早く縦に振った。

 まだ、二百メートルは先にいたはずの吹雪鷲ふぶきわし君――その肩から斜めに両断され、血しぶきを上げながら、手前の雪に突っ込んだ。
 凄い!
 そして、こちらを振り返り、剣を納めながらニッコリ微笑む白雪ちゃん、格好良可愛かっこよかわいかった!

――

 近衛騎士妖精の白雪ちゃんに透明化してもらいつつ門に到着する。
 コチコチに凍った雪ヒル君を十匹、それを引きずるわたしに、門番さんがぎょっとする等、有ったけど、町の中に入る。
 因みに、吹雪鷲ふぶきわし君は白狼君達にげた。

 荷車もそりも無い現状、運ぶのが面倒くさかったのと、そもそも、大して美味しくなかった事を思い出したからだ。
 近衛騎士妖精の白雪ちゃんにも確認した所、ニッコリ頷き了承してくれた。
 ま、白雪ちゃん達妖精ちゃんは肉を食べないから、普通に持て余しただろうし、当然かな。
 雪ヒル君も、十匹を除いて、皆上げたら、白狼君達は喜んでいた。

 う~ん、不味いと思うけどなぁ。

 先に、解体所に寄って、所長グラハムさんに雪ヒル君を売る。
 白大猿の為に一緒に向かうという解体所の職員さんと共に、冒険者組合に行くと、扉の前に、何やら不機嫌そうな小白鳥の団団長のヘルミさんが立っていた。
「おはよう。
 どうしたの?」
と訊ねると、すすすっと近づいてきたヘルミさんは、わたしの背後から抱きつく。
 そして、頬をくっつけて揺さぶる。
「ねえねえ、サリーちゃん!
 赤鷲のよりも、わたしの方が中心に向いてると思わない!」
 えぇ~面倒くさいなぁ!
 あと、大丈夫だとは思うけど、透明化した白雪ちゃんが潰されそうで怖いんだけど!
「もう、ヘルミさん!
 そういうのは、主人公的男の子にしてあげて!」
「ふふふ!
 何それ!」
 不機嫌そうにしていたヘルミさんが、笑い始めた。
 だって、同性のわたしじゃ、その色香は無駄遣いだと思う!
 にもかかわらず、ますます抱きつきながら「サリーちゃん、面白いから好き!」とか言って来る。
 ええい!
 鬱陶しい!

――

 イニー村、だっけ?
 とにかく到着!

 道中はさほど問題は起きなかった。
 出発の時に、赤鷲の団のアナさんが「じゃ、じゃあ、出発」と引きつった顔で指示するのを、小白鳥の団団長のヘルミさんが不満そうに見てたりとか、馬が雪の中に有った石で足を傷つけたのをわたしが回復したり、真っ白で大きいウサギ君達(肉食)が襲ってきたのを小白鳥の皆が連携して倒す様子に感心したり、休憩中に白いモクモクで沸かしたお湯でお茶を作り、皆に配って絶賛されたり……。

 大体そんな感じだ。

 職員の人がソリから馬を外しながら「予定より、早く到着したよ」と嬉しそうに話している様に、大体夕方ぐらいを予定していたんだけど、現在はまだ日が少し傾き始めたぐらい――正午を少し超えた辺りだ。
 ……回復魔法について説明する流れで、体力回復魔法を、促されるまま馬にかけたのが影響しているのかもしれない。

 皆喜んでいるけど、エルフのテュテュお姉さんにやり過ぎ注意と言われていたので、今後は控えようと思う。
 村の人の話では、男性冒険者は白大猿君の巣に向かって出発しているらしい。
 そうすると、わたし達は何をするのかな?
 なんて思っていると、小白鳥の団団長のヘルミさんが声をかけてきた。
「サリーちゃん!
 荷物を置いたら、村の周りを一応、確認しておこう!」
「うん」
 赤鷲の団のアナさんに断ってから、籠を今日泊まる小屋に置いて、二人で村を見て回る。
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