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第十六章

妖精の町!?

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 わたし達を乗せた籠が、樹洞じゅどうの入り口から少し奥に入った辺りに着陸する。
 久しぶりに入ったけど、中は結構様変わりをしていた。
 前に来たよりもかなり広くなっていて、バスケットコートなら二面分ぐらいありそうな広さがある。

 その中心地点に何やらミニチュアの町が広がっている。

 どうやら、妖精ちゃん達がそこで住んでいるようで、建物に入ったり、出たりする様子が何となく、可愛らしかった。
 白いモクモクを再度階段状にして、わたしがまず籠から出る。
 そして、皆が出るのを手助けする。
 一番に籠から出たシャーロットちゃんが、「わぁ~可愛いねぇ~」とミニチュアの町に近づこうとしたので、「むやみに近づいちゃ駄目!」と慌ててそれを止める。
 近づきすぎて建物とかを蹴ったりすると、壊しそうな気がしたからだ。
 その辺りを説明しつつ「遠くから眺めるだけにしようね」と言うと、ちょっと不満そうにしつつも「うん」と頷いてくれた。
 イメルダちゃんが「何か、あの町の周りが光っている気がするのですが」と話し、ヴェロニカお母さんが「そうね、端に引かれている線――魔方陣かしら? 光っているみたいね」と答えている。
 わたしは近くに飛んできた妖精姫ちゃんに声をかける。
「で、わたしをここまで連れてきた理由は何?」
 すると、姫ちゃんは身振り手振りをする。

 え?
 あの町の中に行く?
 いやいや、小さな建物だらけの場所、怖くては入れないよ!
 え?
 大丈夫?
 何が!?

 すると、妖精メイドのサクラちゃんがわたしの手を引っ張り始める。

 え?
 絶対大丈夫?
 まあ、物作り妖精のおじいちゃん達が作っているのであれば、頑丈かも知れないけど、何か、色んな物踏んづけそうなんだけど!

 躊躇するも、妖精メイドのサクラちゃんが”大丈夫だから!”と言うように、ぐいぐい引っ張ってくる。

 えぇ~
 仕方がなく、慎重に近づいていく。

 町に居る妖精ちゃん達がわたしに気づいたらしく、手を振ってくれる。
 わたしも振り返しつつ、ゆっくり近づく。
 このまままっすぐ行くと中央通りに足を踏み入れる事になる。
 町の規模で言えばそれなりに広い道だけど、わたしの肩幅ぐらいしかない。
 ちょっとフラつけば大惨事になってしまう。
 余り足を上げないように、慎重に一歩を踏み出した。

 突然、視界が下に落ちた。

 え!?
 何!?

 気づくと、建物が大きくなっていた!
 あ、これ、違う!
 振り向くと、巨大な――シャーロットちゃん達の姿が見えた。
 驚いた顔でわたしを見下ろしている。

 嘘!
 わたし、小さくなっちゃった。

 肩を叩かれ振り向くと、ニコニコ顔のお姉さんが立っていた。

 二十代前半ぐらいのピンク髪の女の人――っていうか、妖精メイドのサクラちゃん!?
 うわぁ!
 サイズが同じぐらいになって初めて気づく――実は、可愛らしい妖精ちゃんかと思いきや、お姉さんな妖精さんだったのね!
 身長がわたしより数センチほど高くなっているから、なおさらそのように感じる。

 ん?

 後ろから気配を感じて、振り向くとシャーロットちゃんやイメルダちゃん、ヴェロニカお母さん達も小さくなりながら入ってきた。
 シャーロットちゃんが自分の手をつないでいる、赤髪のお姉さんを見上げて「ウメちゃんが、お姉さまになっちゃった」とポカンとしている。
 妖精メイドのウメちゃんはそんなシャーロットちゃんの肩を抱きしめ、嬉しそうにしている。
 ヴェロニカお母さんは紫髪のお姉さんに「あら、スイレンちゃん、いつもありがとうね」とニッコリ微笑んでいる。
 妖精メイドのスイレンちゃんはサクラちゃん達より少し年上みたいで、落ち着きのある微笑を浮かべながら、頷いている。
「ちょ、ちょっと!
 止めなさい!」
という声が聞こえ視線を向けると、イメルダちゃんが黒髪の妖艶なお姉さんに後ろから抱きつかれて困っていた。
 ……黒バラちゃん、こうやって見ると胸が凄く大きく、イメルダちゃんの後頭部を胸の谷間にしっかりと埋め込んでいた。

 凄い!

 そんなことに、驚愕していると黄金色の羽が視界に入った。
 妖精姫ちゃんだった。
 ……妖精姫ちゃんはわたしより少し背が低く、緑髪の可愛らしい女の子だから、余り印象が変わらない。
 そんな女の子が、急かすように袖を引いてきた。

 うむ、可愛い!

 わたし達全員で、中央通りを進んでいく。
 町の中はいつもの町セルサリより綺麗で、どことなく洗練された感じがした。
 赤茶色々したレンガ造りで統一されているからかも知れない。
 テーマパークと言っても、違和感がないぐらいだ。
「花、果物、小物まで売っているわね」
 イメルダちゃんが目を丸くして、辺りを見渡している。
 それぞれのお店の前には店員姿の妖精ちゃんが立っていて、何やらニコニコしながら客引き(?)をしていた。

 通貨とか使っているのかな?
 それとも、物々交換?

 色々、気になったんだけど、妖精姫ちゃんがグイグイ引っ張るので、取りあえず先に進んでいく。

 町の中央らへんに進むと、以前、ここに来た時にあった木製のヨーロッパ神殿っぽい建物が見えてきた。
 すると、妖精姫ちゃんが振り返り、身振り手振り何かを言っている。

 え?
 ここからはわたしだけついて行くの?
 ヴェロニカお母さん達は、ここでお茶でもしていて?

 すると、近衛騎士妖精君達が巨大なブドウを持ってきた。
 一粒当たりの大きさがわたしの顔ぐらいあるそれを、皿などを運んできた妖精メイドちゃん達がちょうど良い大きさに切り取っている。
 いやまあ、巨大というか普通サイズがそう見えてるだけなんだろうけど……。
 なかなか、食べ応えがありそうで良いな。
 などと眺めていると、妖精姫ちゃんに引っ張られる。

 えぇ~わたしも食べたいんだけど。
 後で?
 絶対だよ!

 妖精姫ちゃんに引っ張られ、神殿(?)の中に連れて行かれた。

 神殿の中にも、思ったより多くの妖精ちゃん達が飛び回っていた。
 男女ともに、比較的、年齢が高そうな妖精ちゃんが多い印象だ。
 余り、家には来ない子が多いのか、見慣れた妖精ちゃんはいない。
 忙しそうで、妖精姫ちゃんやわたしに会釈はしても、直ぐにどこかに行ってしまう。
 妖精姫ちゃんは、そんな彼らを気にする様子も見せず、わたしを引っ張りながらぐんぐん先に進んでいく。
 大分奥まで来て気づいたんだけど、いつの間にか付き人的妖精や近衛騎士妖精も居なくなり、わたしと妖精姫ちゃんだけになっていた。
 なにか、重要施設なのかな?
 気になりつつも、言葉が通じない現状致し方がなく、ただついて行く。

 さらに行くと、扉が見えてきた。

 頑丈そうなそれは、何か光る文字らしきものが刻まれている。
 人間の文字はある程度読めるようになったけど、これはわたしが教わった物とは違うらしく、さっぱり分からない。
 妖精姫ちゃんはその扉に手を付けると、軽く点滅した後に、ゆっくりと開き始めた。
「うわぁ」
 わたしは目の前に広がった光景に思わず声を漏らしてしまった。
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