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第十七章

巨大が巨大に!?

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 朝、起きた!
 横に眠る可愛らしい妹ちゃん達の寝顔にほんわかしつつベッドを出る。
 寝間着から着替えて、部屋から出るとケルちゃん黒い毛の塊が飛びかかってきた。

「ふ、その技は既に見た!」

 などと達人っぽいことを言いつつ、軽くいなし、転がす。
 そして、ケルちゃんのお腹に抱きつく。
 もふもふで温かぁぁぁい!

 え?
 外に出る?
 もう少し、もふもふしたいんだけどぉ~

 仕方が無いから、玄関から外に出す。
 真っ青な空が広がっており、陽光が眩しい!
 こんな清々しい天気の下、足がゴニョゴニュしているムカデ君退治かぁ。

 ……う~ん、テンションが下がる
 いやいや、そんなことをやっている場合じゃない!

 玄関から戻り、洗面所で顔を洗う。
 髪、結構長くなってきたなぁ~
 背中の中ぐらいまで達している。
 三つ編みにしている間はそこまで感じないけど、編み込みを外すと結構鬱陶しい。
 本当は、切りたいんだけど、ヴェロニカお母さんがなかなか許してくれないのだ。
 まあ、長いとおしゃれの幅が広がるのは理解できるけど……。
 わたし、正直、今はさほどその辺りは求めてないんだよなぁ。
 前世のわたしって、どんな髪型だったっけ?
 なんとなく、あまり気を配っていなかったような気がする。
 床屋さんのおじさんに任せっぱなしだったような……。
 ……ギャルにはされてないよね?
 そんなことを考えていると、天井から気配を感じる。
 まあ、スライムのルルリンだろうね。
 それを肯定するように、わたしの肩にボヨンとした感触のするボディーが乗った。
 ばかりか、なにやら主張するようにボヨボヨ震えている。

 何、また屋根裏で揉めてるの?
 え?
 違う?
 ん?
 外?
 え?
 ひょっとして、ルルリンも町に行きたいって事?
 色んな家具を見て、作って貰う時の参考にしたい?
 ……さようですか。

 このスライム、まだまだ作って貰う気、満々なのね。

 まあ、スライムは従魔登録も不要と受付嬢のハルベラさんも言っていたし、特に問題ないかな?
「ムカデ君退治が終わったらね」
と言ってあげると、”絶対だよ!”というように、ボヨンボヨンと伸び縮みを繰り返す。

 はいはい、分かりました。

 髪を三つ編みにしたり準備を終え、途中合流の妖精メイドのサクラちゃんとルルリンを肩に乗せ、飼育場に行き、卵と乳を頂く。
 戻り、シルク婦人さんにそれを渡した後、食料庫に移動し食材を集める。

 あ、そういえば、巨大蜂さんの巣の近くにサトウカエデを育てる約束をしてたんだ。
 それに、菜の花、育ててあげないと。

 チラリと見た限り、幾らか――恐らく冬ごもり前に咲いたものの種が育ち、花を咲かせていたけど、念のためにもう少し、増やしておいた方が良いだろうしね。
 それと、シナの木も様子を見に行こう。
 うん、忘れないように、今日、町に行く前に見てこよう。

 食料庫から戻り、パンを作る。
 皆と朝ご飯を食べた後、手早く洗濯をして外に出る。

 普段なら、まったりしつつ町に行くけど、町の様子も気になるから、倍速行動だ!
 サトウカエデと菜の花の種を持って、巨大蜂さんの巣に向かう。

 ん?
 ケルちゃんも付いてくる?
 良いけど、ハチさん達が驚くから静かにね。

 途中、なじみの兵隊蜂さんに会ったので、彼を左腕に付けて先に進む。
 兵隊蜂さんにサトウカエデを育ててあげると言ったら、嬉しそうに顎をカチカチ鳴らせていた。

 うん!
 ぐ側で見るとその顔、半野生児なわたしでも、ちょっと怖いね!

 巣の場所に到着すると、かなりの数の働き蜂さんが飛び交っていた。
 菜の花は……。
 思ったより、咲いているなぁ。
 シナの木は花を咲かせていないけど、問題無さそう。
 どうかな?
 植物育成魔法で咲かせた方が良いかな?
 兵隊蜂さんに訊ねると、”今は不要”と言うようなジェスチャーを返してきた。

 まあ、それが本来の姿なんだろうしね。

 ねえねえ、ならサトウカエデはどこに育てる?
 え?
 はいはい、シナの木より少し離すのね。

 言われた所に、育てぇ~をしてあげる。
 ニョキニョキと育っていくサトウカエデを見て、兵隊蜂さんや側にいた働き蜂さんらが嬉しそうにその周りを飛んでいる。

 良かったね!

 さて、菜の花も少し育てようかな。
 種を地面に落としていると、巣から出てきた女王蜂さんが飛んできて、”ありがとう! とても助かるわ!”と言うように身振り手振りをしてくる。

 ふふふ、喜んで貰えて良かったよ。
 え?
 蜂蜜?
 冬ごもりが終わったばかりなのに大丈夫?
 え?
 問題ない?
 出来たて?
 じゃあ、今回は遠慮せず貰おうかな?
 働き蜂さん達が持ってきた巣蜜すみつを、バケツ型白いモクモクで受け取る。
 そのまんま、前世、バケツ一杯分も頂いてしまった。
 メープルシロップと蜂蜜の食べ比べ――楽しみだ!
 なんて思っていると、ライちゃんが足下に首を伸ばす。
 そして、ふ~っと息を吹きかけた。
 え?
 何してるの?

 訊ねる前に、ニョキニョキと草が育っていく!

 え!?
 どういうこと!?

 草っていうか、さっきわたしが落とした菜の花の種――それが育っているって事!?
 しかも、きちんと菜の花まで咲かせている!
「嘘!
 え!?
 ライちゃん、植物育成魔法が使えるの!?」
 わたしの問いに、どや顔のライちゃんが「がうっ!」と吠えた。

 えええ!?
 いや、使えるわたしが言うのもなんだけど、植物育成魔法なんてぶっ壊れスキルだよ!
 しかも、わたしが使えるのだって、ママの指導を受けながら、結構苦戦しつつも、何とか身につけたものなのに!
 それを、あっさり使えるとか、完全なるチートじゃん!

「凄い!
 ライちゃん、凄い!」
 わしゃわしゃ撫でてあげると、ライちゃんは嬉しそうに「がうがう!」と吠えている。

 こうなると、センちゃんの能力が気になる所だ。

 視線を、センちゃんに向けると――顔を引きつらせたセンちゃんが”わたしだって凄い能力がある! 多分!”って感じに胸を張っている。

 ……これで何も無かったらどうしよう?

 一瞬、よぎった考えを首を振って振り払う。
 ある!
 センちゃんだって凄い能力がある!
 多分、ママから聞いてたと思うけど――わたし、聞き流しちゃったけど、有るはず!

 あぁ~!
 ママの言うことを、もっとちゃんと、聞いておけば良かったぁぁぁ!


 微妙な気分になりながら、家に戻る。
 蜂蜜をシルク婦人さんに渡し、町に行く用意をする。
 何やら、付いてこようとするスライムのルルリンを「だから、ムカデ君を討伐した後だって!」と引き離し、近衛騎士妖精の白雪ちゃんを胸に入れ、物作り妖精のおじいちゃんに”今日こそは、粘土と釉薬ゆうやくを忘れるなよ!”と念を押されつつ、荷車を引きながら出発する。
 合流してきた白狼君らと共に、森を走り、川を越え、平原に出る。
 そこで、思わず「うわ!」と声が漏れてしまった。

 なんか、巨大な赤ムカデ君がいたからだ。

 いや、巨大赤ムカデ君でいて、巨大赤ムカデ君じゃない!
 昨日遭遇して、アーロンさんと討伐した巨大赤ムカデ君じゃないってことだ。

 全長、五十メートルほどはある巨大な巨大赤ムカデ君だった。

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