ヤクザ娘の生き方

翠華

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目が覚めて

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ざぁぁぁぁ…


風でなびく髪。そこに立っている女性を見ていると、なんだか懐かしい気持ちになる。だけど太陽の光で顔が見えない。


手を伸ばしたが、届きそうで届かない。


どんどん遠ざかっていく女性の後ろ姿。


嫌だ。嫌だ。置いていかないで。ウチも連れて行って。


すると、誰かが必死で伸ばした手を握ってくれる。


ゆっくりと目を開けると、目の前にはイケメンが五人、座ってウチの顔を覗いていた。


「みんな…」


五人ともウチが伸ばした手を握ってくれている。


「大丈夫か?」


「………」


「どうした?」


みんな心配そうにしている。


「…怖かった?」


「は?」


「ウチ…人を、殺そうと…ゆっちのお父さんを……」


言いながら視線を逸らす。


「花子さん、俺、あの後父を殺そうとしたんです」


驚いてゆっちを見る。


「でも、出来ませんでした。飛春さん達や叶真達がいたからです。家族の前で人を殺す事は出来ませんでした」


「でもウチは…多分やってたよ」


「いえ、世さんは俺達の前じゃしませんでした。飛春さん達でさえも追い出しましたから。きっと花子さんも家族の前じゃしなかったと思います」


「そう、だったね…」


「花子さん、しようとした事ではなくしなかった事が結果です。それは紛れもない事実です」


「でも…結局、ウチはまた……」


「花子」


「え?」


「俺達は怖がってない」


「でも、震えてたよ」


「あれは、恐怖じゃない。俺達は怒ってんだ」


「え?…なんで?」


「家族になったのに俺達に何も言わず、最初から一人で全部背負っていたからだ」


「………」


「お前が俺達の事を知りたいと言ってくれたように、俺達もお前の事を知りたいと思っている」


「………」


「一人で背負うな。俺達家族がいる。お前の事全部知りたい。俺達に話してくれ。飛春さん達もそれを待ってるんだ」


「父さん……」


世に意識を渡している間の会話も聞こえていた。それで思い出した事もある。


父さんが研究して開発した記憶を消す薬。それを初めて使ったのがウチと黒根だった。


ウチはそれでとても大切な事を忘れてしまった。未だに何かが引っかかっている。


黒根はウチに執着していたから、殺し損ねた時、父さんが飲ませたんだ。ウチの事を忘れるように。またウチの前に現れないように。


「花子と飛春さん達に何があったのかは分からないが、何かあったのは分かる。帰り道も様子がおかしかったし、あれから3日経ってもずっと部屋に籠りきりで出てこない」


「そっ、か…」


「ちゃんと話し合ってきてくれ。俺達は桜組が好きなんだ。初めて心を許せた大人達だから。組員の皆も心配してた」


「…父さん……」


なんだか複雑だった。


薬を飲まされて今まで時間を無駄にしてきた。世に負担をかけて自分だけ普通に暮らしてきた。それでも、どうしてか組員達は信用出来ず、ずっと心を許さなかった。


今までしてきた事が馬鹿みたいに思えて仕方がない。


今のウチにはどうすればいいのか分からない。少しずつ憎い気持ちが出てきてしまう。


大好きだった家族でさえも心を許せなくなっていく。


「ウチ…本当に、わけが分からない……っ」
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