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倒れた海斗が何かを思い出さそうとしたのだと分かった

『 面倒だな.... 』

「 俺の" 弟 "をそう言わないでくれるかな? 」

『 なら直ぐに運べ 』

ずっと俺達を見張っていた様な人物の声を聞く
聞き覚えのある声だが、深く被ったフードにて顔は見えない
彼は仕方無いとばかりに海斗へと近付き腕を掴み肩へとかけ支える

「 俺の車が近くにあるから、其処に運ぶよ 」

『 任せた 』

脚を引きずる感じだが無理はないとバンの車を見掛け、自動でドアを開ければ弟と言うわりには雑に扱う男は扉を閉めてから運転席へと座った
 
『 それで、情報は得たか?拓海? 』

「 得たけど、拓海は死んだんだけどなぁ~ 」

呑気な口調のままフードを外した彼は青い目を向け、仮面を付けたようににこやかに笑顔を向ける

『 自分に似せた死体を使うのは分かるが、死んだことにする必要もないだろ 』 

「 一回は死なないと、探られるの面倒なんだよね 」

『 全く、コイツが泣いてたぞ 』 

「 海君は素直だからねぇ。それに俺の役目は育てる為じゃないし二十歳過ぎたなら必要ないでしょ 」

呆れると拓海から向けられた煙草を一本取り出し口に当て、車のボックスにあるライター取り出せば火を付け吸う

紫煙吐き出し他人事の様に言う彼へと目線を流しボックスからハンカチと小瓶を持ち後ろへと移動する

口に煙草を咥えたまま小瓶を開けハンカチへと押し当ててから海斗の口元を覆い隠す

「 気を付けてね?君、手加減できないから記憶まで無くすんだから 」

『 無駄に強い催眠剤だからだろ。これで、数時間は起きなだろ.... 』

ハンカチを取り小瓶を閉め、元にあった場所へと戻せば手をウェットティッシュで拭き備え付けのゴミ箱へと捨てる

「 荒療治 」

『 御前に言われたくないな。育てるの止めて仕事に専念なんて。18年一緒に居れば愛情だって湧くだろ。俺は湧くな 』 

「 俺は仕事の為なら手段を選ばない。前にそう言ったでしょ? 」

『 血も涙もねぇのはどっちだ.... 』

車を走らせた拓海、いやもう別の名前かと考えては外へと視線を投げる  

俺達は普通のサラリーマン、表向きはそうだが実際にはこの国の政府に雇われてるだけの人間だ 

両親も知らなければ、兄弟も知らない

" 只与えられた任務を幼い頃からしてるだけ "

偽りの家族ごっこ、決められた両親、決められた兄弟

その兄弟すら、実のところは依頼してきた貴族の息子だったり暗殺された王族の生き残り

命を狙われるからと生きて欲しいと望んで、そう言った奴等に渡す

俺達は単なる、騎士みたいなものであり護るためだけに生きている駒だ

『 そう言えば、コイツが俺はスパイなんじゃないかって言ってたぞ。スパイじゃねぇよな....例えるならなんだろう 』

「 護衛してるボディーガード? 」

『 それ、当たってるな! 』

騎士なのは古びてるがボディーガードと言えばしっくり来る
軽く笑った俺に彼はサングラスを取り出し着ければボックスから書類を取り出す

「 俺の方は海君が医者になったことで殆どクリアしたみたいなもんだけど、君の方がちょっと苦戦かも?ごめんね、中々陽妃を依頼主が望む人に出来なくて 」

『 いいさ....彼奴が居なくなれば俺はまた新しい子供を育てるだけ。2人目なのだから、多少失敗していいだろ 』

依頼主から送られてきた現状報告書
陽妃の事が書かれてある、必要なスキルを求められたが24歳になってこれは滅茶苦茶だと思う 

「 ボディーガードも大変だよね、守りながら子育てなんて....お陰で馬鹿みたいな借金背負って苦労したよ 」

『 一ノ瀬夫婦については俺の方で調べておく。上司は今頃、ゲームでもしてんだろうなぁ 』

書類の紙は他のリストやら、危険人物の内容
そして海斗の事が書かれていた 

とあるイギリスにいる歴代医師であり現在の院長の孫か、随分と良いところの王子様と改めて思う

「 あり得そう、つーか、俺は一人で育てたけどリクは上司に手伝ってもらってたじゃん!ずるいっ! 」

『 いいんだよ。俺は上司に拾われた、だから甘くされても 』 

「 狡い、狡い!!もう、上司に文句いいに行こ 」 

『 休みの日だから機嫌悪くなるわぁ 』  

王子並みの収入や財産があると知らない海斗はお金に目を眩むことなく自分の力を精一杯使って健気に働くのだろ

この人達の場所で育てば、医者だから金があり裕福で偉いんだ、みたいな子に育ってと思うとなんとなく育てる親によって性格が変わるんだと思う

『 いつ、イギリスに戻すんだ? 』

「 後、2~3年後かな。もう少し日本での技術を学ばせたいよね 」

『 そうか、陽妃はそろそろ親元に帰すぞ。
あれ以上のスキルは習得できないだろ 』

「 なら君は新しい子供を育てるんだね 」

『 ....そうなるだろうな 』


 
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