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しおりを挟む休憩場に戻ろう、そう言ってから二人で戻れば一台の車は階段の上にある堤防付近に止まって、人が降りてきた
「 シルキー! 」
それは、いつか見た彼女の彼氏だ
スーツを着てるのを見れば仕事終わりに来たのだろ、急いで階段から降りてくる様子に何故か胸は締め付けられるように痛い
「( 何故だろ、迎えに来て....ん?あれ、彼女は父親に連絡したって....? )」
胸元に触れる俺は、彼女の連絡した相手に疑問を抱いた
彼氏なら、父親に変わってきたのか?
それとも....
『 お父さん!! 』
「 シルキー!! 」
「( そう、父親だったり......ん“ん、父親!!? )」
駆け寄る彼女に、持っていたバスタオルを駆けるなり抱き締める男性は心配したように告げる
「 良かった、夕方に荒れるって聞いて驚いた。返したのに返事来ないから何があったのかって.... 」
『 ごめん、水没して.... 』
「 それでも、もう少しどこの場所か教えてほしかった。でも良かった.... 」
父親、その言葉に何処か安心した自分自身が居た
俺は少しだけ胸の痛みが消えれば、少し後ろで脚を止めた
「 あの、オリビアさんのお父さん 」
「 ん? 」
お父さんと呼ばない方がいいかも知れないが、それでも呼び方が分からないから許してほしい
此方を向いたと同時に俺は深く頭を下げた
「 オリビアさんを連れ回した結果、帰らせる事が出来なくなってすみませんでした....俺の責任です 」
頭を下げた俺に、彼女は驚くような雰囲気だが彼女の父親は離れてから少し歩く音が聞こえ、無駄に心拍数が上がる
「 顔を上げろ 」
「 はい 」
「 君の責任?確かに色々聞きたいことはあるが、この馬鹿が海にゴーとか言ったのだろ? 」
「 へっ? 」
娘を溺愛した父親かと思って戸惑ってたが、それは無い様子で彼女へと親指を向け言葉を告げた
雰囲気は会社の上司みたいなのに、言い方は父親と言うか兄とかに思える
「 大体、俺の作るメーカーの水着じゃない時点で適当に買って天気予報気にせず来たのだろ。それになんだ、ボロボロじゃないか。怪我をして、嫁入り前が怪我しすぎだ 」
「 えっ、作るメーカーって? 」
『 ん?私のお父さん、ブラックローズの社長だよ? 』
「 ......え!!!? 」
今日一番、驚いた
と言うか敦士が同い年ぐらいなんていうから年下かとか年上かと思ってたし、それになんたって社長、若すぎてそんな人だとは思わなかったんだ!!
『 言わなかったけ?私は下着モデル、まぁー顔は見せてないけどさ 』
「 下着モデルって.... 」
「 なんだ知らなくて絡んでたのか?珍しい奴もいるんだな?まぁいい、荷物持ってこい。帰るぞ 」
『 あ、お父さん!子犬拾った!飼っていい? 』
いや、ちょっと待ってよ
じゃ....なに?敦士は彼女の髪をバッサリ切ったってこと?
そして、髪が長かったって....えっ、普通に見たかった
「 は?ダメに決まってるだろ 」
『 輝夜って名前つけたもん!パンツ仲間になったんだよー! 』
「 おま....はぁー、獣医呼んでやる。犬飼うなら血統書でも飼ってやったのに.... 」
『 拾ったのが運命なのさ!!しょーた、帰るよー! 』
「 待って!荷物!! 」
もっと拒否して怒るかと思ってたのに、案外犬は飼おうとしてたんだ....
いや、そういう問題じゃなくて濡れたものとか俺が持ってくるの!?
「 シルキーも手伝え、人にやらすな 」
『 はーい 』
お父さん、モンペじゃなくてしっかりしてて良かった
車に乗る前にシャワー室で貸してもらったボディーソープとシャンプーで洗ってから、簡単なシャツと膝丈のズボンを借りて車へと乗った
彼女もまた着替えてから車に乗ったのだが、やっぱり気にしてたらしく父親の小言はあったけど、彼女は聞いてる素振りは無かった
「( 父親だから、あんなに仲良かったんだ.... )」
車の中での雰囲気見れば分かるし
気にしすぎたと思ってちょっとだけ、自分が情けなく思った
家に送る前に、風呂と晩御飯の許可が降りて何故か彼女の家にお邪魔する事になった
もう、裕一の存在は忘れていた
もちろん、裕一も俺達のことは忘れてるとは知らず....
応援ありがとうございます!
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