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子犬に飲ませる物は無くて、取り敢えず水を買ってきて飲ませてから
彼女はずっと自分の身体で暖めていた

それでも既に冷えた身体、体温が上がるわけでもない

「 ....拭けた、血は止まってるけど痛む? 」

『 大丈夫、ありがとう 』

腰の傷の手当て、なんて本格的なのは出来ないけど
子犬に上げたペットボトルの水を少し使って、服で血を拭けば僅かに滲む程度は止まってはしてる
けど、それでも背中から腰へと真っ直ぐに走った傷は俺の手の平より痛々しい

「 んん.... 」

『 ちょっとこの子持ってて 』

「 えっ 」

疲れきってるのか、子犬は鳴くことを止めて丸まっていた
彼女は俺の膝へと乗せれば、自分の両手に息を吹きかけ暖めようとする

彼女が声を聞き取らなかったら、この子は海の中にもがき苦しみながら沈んだのだろでも、俺が止めるのを降りきってまで見つけた....

そんな彼女が今、一人で頑張ってる事に俺は下手なプライドは捨てることにした

「 こういうの知ってる? 」

『 ん? 』

「 体が冷えた時って、一番人肌をくっ付ける方が暖かいんだってさ。やってみる?俺、平均体温が子供並みに高いし 」

子犬を彼女の膝の上へと戻し、椅子へと座り直した俺は恥ずかしさを押し殺して自分の膝の上へを叩けば彼女は、少し考える素振りを見せ俺の膝へと背を向け座った

「( ん?向き合うんじゃなくて背中? )」

『 ....やってみる。私より体温低かったら殴る 』

「 それは無い.... 」

冷えて寒がる彼女に比べたら俺は気にならないぐらい、暖かい
背中を向けられどうするべきか悩んだ結果、片腕を腹へと滑り入れ後ろから抱き締めることにした

「( 案外....華奢だ。それに冷えてる.... )」

『 本当、暖かい.... 』

「 そう?まぁ、子供体温だからね 」

何気無く背中を俺へと凭れるようにする彼女に俺は抱き締めたまま、顔の位置を考え肩口へと顔を埋めた
視線を何気無く手元にいる子犬を見れば、彼女の触れる場所から少しずらして触る

「 ....落ち着いたかな? 」

『 うん。暗くて濡れていけば怖いよ.... 』

寝てるように見てる姿に、俺は軽く笑ってから撫でていた 
濡れてた毛は彼女が乾かした事で、
ふかふかの産毛だと分かるほど柔らかい

「 でも、どうするの?俺は飼えないよ? 」

『 ....お父さんを説得する。飼えない家じゃないから 』

「 そう....頑張ってね。無理なときは里親を探そう....手伝う 」

『 ふっ、ありがとう 』

少し疲れた、と眠気の来る俺は彼女を抱き締めたままそのまま少し眠りについた

彼女もまた、疲れたのか眠っていて人肌の暖かさに遭難した人の知恵って凄いなと思った

「 っ....さむっ、ん?シルキー? 」

幾分かして、ブルッと肌寒さに震えて目を覚ませば膝の上にいた彼女の姿は無かった 

荷物はあるけど、そう思ってゆっくりと立ち上がり少し歩けば雨は止み夜空に広がる星空に息を飲んだ

「 わっ....すご.... 」

都会から離れてるから、星は見易いと聞いたことはあったけど此処まで綺麗とは思わなかった

少しだけポカーンと口を開けてから、彼女が何処にいるか探せば
波の当たらない程度の場所に立って、同じく夜空を眺めていた

「 雨止んで良かったね 」

『 ....ん?うん、良かった。星が綺麗だし 』

「 そうだね....そう言えば子犬は? 」

横へと立てば、子犬が居た記憶はあると問い掛けて首を捻れば彼女は両手に抱いていたそれを見せた

『 いるよ、元気そう 』

「 それは良かった。腹ペコだろうに....頑張ってね 」

『 私も腹ペコ.... 』

「 ふっ、確かに 」

昼御飯食べ損ねたし、そう笑って二人で並んで夜空を眺めていた

雨が上がり、雲が晴れた夜空はまるでこれを見せるためのように街で見るより輝いている

『 ....決めた、この子は輝夜かぐやにする! 』

「 ふはっ、許可貰う前に名前つけるの?それに性別は? 」

『 うーん、分かんない!でもいいんだよ。名前つけた方が説得出来るかもしれない 』

「 なにそれ 」

けらりと笑う俺に、輝夜は返事をするように小さく鳴いた

『 輝夜!私のパンツ仲間になろう! 』 

「 子犬を巻き込まないの....てか、パンツ仲間って俺も含まれてたりする? 」

『 もっち!私のパンツ仲間! 』

「 ....何時決めてたの、はぁー.... 」

自由で、無鉄砲で、時々小悪魔っぽくて
それでも無邪気に笑う姿に俺は振り回されっぱなしだよ

『 しょーた、綺麗だね! 』

「 ....うん、綺麗だよ 」

『 ......? 』
 
何故俺の傍にいるのか、何故俺を怖がら無いのか、何故俺はこんなにも自由でゆっくりした時間を奪われても嫌じゃないのか....

その答えは君に問い掛けても分かるかな?

星のように綺麗な君には、俺は隣に居ることすら息苦しいの心地いいと思い始めたんだ
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