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今日のパンツ何色?見せて

そうやって聞くのは俺だけだったことを知っている
見たがるのも、反応が裕一とは少し違うことも 
でも、パンツに興味があると思ってたから俺は深く考えないようにしていた

考えてたら全てを忘れて見ないフリして、君だけを見てしまいそうだったから 

「 コイツ、ブラックローズの娘だろ? 」 

「 マジか、スゲー上玉 」 
 
『 痛い!離せ!! 』

俺は動けなかった

喧嘩なんかしたことも無ければ、
多勢に無勢なんて.... 

掴まれて痛がるシルキーの声が遠くに聞こえるほどに、脚がすくんだ

道の真ん中で、絡まれてるのに周りの目は見ないように逸らすんだ
こんな時だけ、他人事....

騒ぎを起こしたくない俺が、関わりを持ちたくなかった俺なら周りの者達と同じだ.... 

“ 将汰....助けてくれ “  

「 彼氏気取りかよ?突っ立ってねぇーで地面とキスしてな! 」

「 っ.... 」

こういう時にあの日の事を思い出す
忘れようとして、忘れることの出来ない酷くて怖いと言われる俺の事....

“ なんだ、コイツお前の友達か? “ 
 
“ 将汰、友達だよな?俺達.... “ 

俺は人を避けていた
騒ぎになる奴や目立つ奴は尚更嫌いだった
自由に生きて、自由に暮らしたかった  
この中で自分の大切ななにかを失っても自分を守ることしか出来なかった 

“ なぁ、将汰!! “

“ 誰?そいつ.... “

“ !! “ 

“ 悪いが知らねぇな....只のクラスメートだろ “

俺は虐められていた奴を助けられなかった

友達だと言ったのに、笑い合った日々もあったのに
自分が騒ぎを起こしたく無いからと、リンチされてるのを見て見ぬフリをした

今、周りにいる奴みたいに....

“ 将汰....御前って本当に怖いよな。人の心っての、あるのかよ.... “

“ さぁ、無いんじゃないか “

“ だろうな....御前って怖いよ “

友達は直ぐに転校して、俺の目の届く範囲での騒ぎは無くなった
その代わり、離れていく奴や遠巻きに見てる奴の方が増えて 
俺はその方がいいと思った
 
一人の方がいいと思ったのに....

“ パンツの色は何色ですか? “

“ なっ!!? “ 

彼女が来てから、騒がしいし
色々変なことに巻き込まれるし、それでも楽しいと思えて過去を知られるのが怖かった

怖がられるのが嫌だった

本当は弱い奴だと知られたく無かったんだ.... 
 
彼奴もそうだ、喧嘩できるやつと思われてたから嫌なんだ

負けたらきっと....

どのみち、嫌われるか....

「 いって、くそ....待て!! 」

シルキーに嫌われるならそれでいい 
負けてべそかいて弱いとか言われてもいい 
でも、もう見捨てるのだけは嫌なんだ

脚を動かして痛む腹を抑えて追いかけた

行く場所なんて直ぐに分かるから、追い付ける

『 くそ、離せ! 』

「 口悪いなぁ、可哀想に....あんな弱い彼氏じゃ助けは来ないな 」

「 回しましょうぜ、ヤりまくりたい 」

「 ....だから、待てっていってんだろ! 」

「 あ?なんだ、起き上がれたか 」

弱くてごめんね、喧嘩できるような見た目だけど本当は出来ないのを誤魔化してた
君に弱いところを見せたくないから、 

でも、逃げるのはもう....嫌なんだ

「 先にボコして見せ付けながらヤろうぜ
」 

「 いいなぁ 」

相手は成人男性の3人か、それも仕方ないかと諦めて拳を握り締める
巨漢の男が向かってくれば手を出す前に服を掴まれ腹へと蹴られた

「 ガハッ!! 」

胃液が込み上げるような感覚の後に、頬を殴られ笑いながら他の奴に殴られる

そうか、彼奴も痛くて怖くて俺に助けを求めたのに俺が見捨てたらもっと怖いよね 

「 はっ!!いっ.... 」

倒れた身体に起き上がることすら困難で、投げ掛ける言葉を聞くよりも、只シルキーに逃げる時間を与えたかった 

なのに彼女は俯いたまま動かなかった

「( 俺を幻滅したのかな....無理ないか.... )」

「 だせぇ、向かってきた割には手も足もでねぇのかよ 」

「 体系だけの男かよ、くそだな 」

「 マジ笑える 」

ホント笑える、女の子一人、友達一人守れないなんてカッコ悪すぎる.... 

『 本当....ダセェ.... 』

「 はっ、女にも言われ....っ!!? 」

「( えっ? )」 

俺に吐き捨てた後に告げた男は、シルキーの方へと振り返った瞬間地面へと伏せた

一瞬、何事かと思えば彼女は少し前に見た彼女の父親のように指を鳴らしていた

『 三下風情にしょーたが手を出すわけねぇだろ。黙って聞いてりゃダセェな。とりあえず....しょーたを殴った分を二倍にして、私に触れた分を合わせて返してやるよ 』

「「 !!!?? 」」

それはきっと、彼女の方が隠してた事なんだと知ったのは言葉通りに倍返しの半殺しにしてからだった
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