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十八話 ※肝心な時に使えない夫
しおりを挟む腹痛を感じ初めて三時間が経過してたらしい
途中で二回ほどトイレに行ったけど出ないし、逆に変な感覚に身体に力が入り、鋭い痛みに息は荒くなる
『 蓮さんんん……漏れそう……いっ!! 』
「 えっ、もれ……いや、…陣痛じゃないですか!!? 」
焦ってる蓮さんに珍しいと思うけど、そんな思考はない
只、ウ◯コと一緒に違うものまで出そうなほどに痛む感覚に横になってた身体は仰向けになりクッションを握り締めて痛みに堪えていく
『 っ……ンンッ!産まれるっ……! 』
「 ここで!?車!運べないか……あっ、えっと、えっと……はっ、タオル!! 」
予定日よりすごく早いじゃん、もしこれが赤ちゃん産まれる感覚なら日付が違う!!と泣きたくなる
吹き出すような汗に下着を取り付けるのが嫌になり、自分でズボンと下着を脱ぎ股を開けば焦ってる蓮さんは寝室を出て、風呂場からバスタオルやらタオルを持って来た
「 敷きますね! 」
『 っ!ぐっ……! 』
泣き叫ばないと隆一と約束してた
逃げて負けてきた私は、子供を産むときは負けないと約束したけど叫びそうな声を押し殺して、奥歯を噛み締めて、時より力を入れる
尻の下へと敷いてくれた蓮さんは、また寝室を出れば片手にスマホを持ち、病院へと連絡をいれた
「 産まれそうなんですが!えっと、頭……頭!?ちょっと出てます!!あ、はい……はい 」
蓮さんに見られるなんて、という感覚はもうない
痛みに堪える方がキツくて苦しくてなんとか堪えようとして、スマホに手を伸ばし隆一へと電話する
" もしもし、ルイ。どうかした…… "
「 っ……産まれる!! 』
" はぁ!? "
『 だから、あかちゃん……いっ、ぐっ……隆ちゃんんっ……かえって、きて!はやくっ! 』
" ちょっ、家なのか!?待て……蓮に確認とる。蓮!! "
おい、スマホを何個持ってるんだよ
きっと左右にスマホ持ってるんだろうけど、蓮さん掃除用のゴム手袋を着けて戻ってくればカッターシャツの袖を捲り上げて、湯を張った桶を持ってきてスマホを持つ
「 兄さん、ルイさん産まれそうというか。頭出てて……そう、寝室です!俺はルイさん見るんで、医者の手配してくれ! 」
『 ンンッ……れんっ、……れんっ!グッ! 』
蓮って呼んでる方がいきみやすいと、何度か叫び変わりに呼んでいれば、彼はスマホを置いてから告げる
「 ルイさん、いきんで!っ……破水かな、これ……破水が先……ハサミとタコ糸と持ってきます!いきんでてください! 」
いきんでてください!ってどういう事ですか
とりあえず力を入れてればいいんですね!
『( はっ、ウ◯コ漏れそう……独身の蓮さんに、ウ◯コ見せたくないんだけど…… )』
出産というよりウ◯コの波の方が酷くて、尻に力入れていれば、急に疲れてくる感覚が分かる
強くいきむのさえ痛くて止めそうになり、熱湯消毒終えたハサミを持って来た彼は、タコ糸を横に置き告げる
「 ちょっと、確認しますね!! 」
『 っ……れん、いっ、くっ……ぐっ……はぁっ、っ…… 』
「 いきんで、力入れて( 頭がこれ以上、出てこない?なぜ…? )」
もう見られてもいいけど、力が入らない感覚にどこでいきめばいいか分からなくなってきて混乱し始める
蓮さんはスマホを持ち、繋げていた医者に電話しながら対策法を考えてくれていた
「 分かりました、やってみます。ルイさん、俺の聞こえる? 」
『 んっ!蓮、さんっ……はっ、クッ…… 』
肩を叩き耳元で声を発した彼に合わせて、目を閉じたまま頷けば、言葉を続ける
「 一、二、三の、三で力を込めて下さい!いきますよ 」
『 くっ、ぁ、くっ! 』
「 一、二、三! 」
『 ンンッ!! 』
「 もう一回! 」
三のタイミングでいきんで、と言われた事に常に力を入れる訳じゃなくて、その瞬間だと分かれば
彼の声に合わせて、力を入れる
「 一、二、三 」
『 っ!! 』
「 よし…… 」
『 はぁ…… 』
凄く詰まっていたウ◯コがやっと出た瞬間だと分かり、その事でぐったりとした私は生まれた瞬間に聞くという赤ちゃんの声が無いことに、気付く
『 はぁ……蓮さん……あかちゃん、は? 』
「 泣かない…破水してから時間が経ったのかも。っ……確かあれがあるはず 」
破水して、頭が見えてから一時間近くは経過していたらしい
身体の脱力感や痛みより、赤ちゃんが気になって視線を落とせば、私が疲れてる間に手際よくタコ糸で二ヶ所キツくへその緒に結んで、熱湯消毒したハサミで切ってたらしく
赤ちゃんとは離れてる、でも動かないことに涙は溢れれば蓮さんは何かを持って来た
「 料理用のスポイトですが…… 」
調味料等に使う、スポイトを赤ちゃんの口へと差して喉に詰まった液体を取り出し
呼吸をさせるために何度も繰り返す彼と赤ちゃんを見ていれば、その産声は上がった
「 はぁ……良かった 」
『 っ……蓮さん、ありがとう……あかちゃん…… 』
「 いいえ。ちょっと待ってくださいね、洗います 」
湯の温度を確認して赤ちゃんを洗ってからタオルで綺麗に拭いて、他ので包み込んでくれた彼は私の腕へと抱かせてくれた
『 ん……あかちゃん…… 』
むにむにと小さく動く事に安心しては、蓮さんはゴム手袋を外し、一息付く
「 お疲れ様です……。もう少しで救急車来るので待ってて下さいね 」
『 ん……ありがとう…… 』
直ぐに救急車は駆けつけ、婦人科医も来てたらしく彼女によって私は少しだけ手当てされてから、病院へと移動した
疲れきって起きたときには輸血されてて、赤ちゃんは元気だと言う言葉を聞いた
「 蓮、御前よくやったな!!ありがとうな! 」
「 凄く焦りましたけどね…… 」
『 ふふっ、本当…蓮さんいて良かったよ 』
頭をくしゃくしゃと撫で回す隆一に、照れたように笑った蓮さんは大きな仕事を終えたようにホッとしていた
「 そういって貰えて良かったです。ルイさんと赤ちゃんがよく頑張ってくれたおかげですよ 」
『 またまた~、それに比べて隆ちゃん。来るの遅い…… 』
「 すまない……直ぐに抜けれなくてな…… 」
「 肝心なときに使えない夫ですね 」
「 なっ!だから、悪かったて! 」
隆一が来れないことは分かってたから、別にいいんだけど
赤ちゃん取り上げた蓮さんは、その事で一時兄をいじめていた
あの時に、早々にへその緒を切ってくれたから私が出血でショック死することも無かったし、赤ちゃんの産声の為に頑張ってくれた彼は、私達の命の恩人だと思う
『 この子は……一蓮。隆ちゃんと、蓮君の名前を貰うよ……いいでしょ? 』
看護師さんによって乳をお願いされて、抱っこした男の子は金色の髪をした、細身の子だと分かる
初めての子供であり、蓮さんによって助かった命
私は、優しくて判断能力に優れた子になって欲しくて、決めていた数多くの名前を無視していれば、二人は顔を見合わせた後に笑った
「 一蓮か、悪くないんじゃないか 」
「 俺の名前を……本当にいいんですか? 」
『 いいよ。蓮さん居なかったら私達は死んでたかも知れないからね。ねっ、一蓮 』
「 困りましたね……我が子みたいに可愛く思うじゃないですか…… 」
「 実際、御前はおじさんになるからな? 」
そうでした、と笑った彼に私は腕に抱く我が子に安心する
『 それより……どうしよ…… 』
「 どうした? 」
『 乳が出ないって事よりも……私の髪に似てるなんて…… 』
飲ませようとしても乳が余り出てないのが分かる
強く吸わないのか、それとも私が貧乳過ぎて大きくなってもよくないのか……
そんな事よりも、私に似てる外見に焦れば彼等は顔を向き合わせ告げる
「 髪色はルイさんですが、見た目は隆一ですよ?このふてぶてとした顔…… 」
「 はっ!?そうなのか? 」
「 母さんに聞いてみたらいいでしょ。来るみたいですし 」
蓮さんは隆一に似てると言うけど、どうなんだろ?
生まれて直ぐにDNA検査された為に、結果は二週間後だとしても、髪色はまさに私…
見た目はこの赤ちゃんじゃ分からないと思って不安になる
二人は病室にいるまま、話していればイザベラさんはやって来た
「 ルイちゃん!おめでとう!! 」
『 ありがとう、ございます…… 』
抱き締められた事に嬉しくなり、微笑みを返せば彼等は告げた
「 母さん、見た?一蓮の顔。蓮が俺に似てるって言うんだが 」
「 絶対に隆一でしょ、ルイさんならもっと優しい顔してる 」
「 ルイさん、もう一度授乳御願いしてもいいですか? 」
『 あ、はい! 』
丁度いいと言うタイミングで来た事に、看護師さんから渡された子を抱けば三人だけでカーテンの中に入り
授乳を挑戦する
「 ちょっと揉みますね。刺激すると出るんですが……最初の三日は飲ませたいですね 」
『 は、はぁ…… 』
「 あらやだ!隆一、そっくり! 」
「( ほら、言った通り! )」
「( マジか……ゴツくなる )」
カーテンの向こうで二人がこそこそ話してるのは分かるけど、母乳が出なくて揉まれる感覚は痛くて泣きそうだ
胸が小さいのが原因では無かったらしく、もう少し栄養のあるものを食べようと言われた
一蓮も男の子というより、女の子位の重さだったらしい
三日間程、入院してから赤ちゃんの正式な名前を提出して私はまた家へと帰った
スマホ片手に、調べる隆一に笑みは溢れる
そして母乳だが何度か吸って、一蓮が吸うのが上手くなれば出るようになったことに安心する
「 左が好きなのか、俺の胸が…… 」
『 黙れ、どっちでもいいじゃん 』
「 ……そうだな。少しは譲るさ 」
俺の胸ってなんだよ、知るか……
そんな胸フェチじゃないのに残念そうにする隆一に笑えるし、蓮さんやオリビアさんも頻繁に来てくれるようになった
沢山もらった服のおかげで着替えは沢山ある
クロは赤ちゃんが怖いらしく、近づく事がないために安心できる
「 ルイ……出産してばかりで、大変だろうが…… 」
『 なに? 』
真剣に言うもんだから子作り?嫌だよって睨めば、彼は髪に触れ告げた
「 結婚式を挙げよう。DNA検査の結果が出て……誰もが認めてくれた 」
『 そりゃ、そうでしょ! 』
あぁ、やっと……結婚式を挙げれることに喜んだ
他に誰の子なんだと笑えば、彼はそうだなと頷き口付けを落とした
生まれたての赤ちゃんの世話は大変で、直ぐに挙げようと告げた結婚式は二年後まで先延ばしになったけどね……
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