俺のお嬢様はおとめげーむ?の『悪役令嬢』らしいです

杏音-an-

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第二章 学園生活始動

24 攻略対象達 ②

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「……お久しぶりですわ、殿下。お会い出来て光栄です」


 俺はレイラ様に続いて静かに頭を下げた。隣にいたフローレス嬢も俺の姿を見て、慌ててペコリと頭を下げた。

「あぁ、パーティー以来だな。途中から何故か記憶が曖昧なんだがな……」

 あ、それ俺が作った麻酔弾ブレスレットのせいです。殿下。

「ん?そういえば、お前達は面識がなかったか?」

 殿下はそう言って後ろを振り返った。すると、眼鏡を掛けている男が「私は少しだけ……ジャックは初めてじゃないか?」ともう一人に訊ねた。すると、もう一人の強面な男は黙ったまま静かに頷いた。

「そうか。これからは学園の先輩だからな。まあ、一応紹介しておく。あー俺の側近達だ」

 殿下はそう言って面倒くさそうに頭を掻いた。

 いや、適当すぎるだろ、それは。
 まあ、紹介なんてされなくても貴族社会では知っていて当然のお二方であろう。眼鏡を掛けた如何にも秀才っぽい男の方はマーシュ・イビル・シュバリィー様。この国の宰相であるシュバリィー公爵の息子だ。因みにシュバリィー公爵家はグロブナー公爵家と並ぶ三大公爵の一つに入る名家だ。確かレイラ様とは昔、一度だけ面識があるはず……強面な男の方はジャック・ラオネル様。近衛騎士団長のラオネル伯爵の息子だ。

 俺がそんな事を考えていると、見かねたシュバリィー様が一歩前に出てて、胸に手を当て軽く会釈をした。

「お久しぶりです、グロブナー嬢。改めてマーシュ・イビル・シュバリィーです。後ろに控えている者はジャック・ラオネルと申します。以後、お見知りおきを」

 シュバリィー様がそう言うと、ラオネル様は胸に拳を当てて頭を下げた。

「お久しぶりですわね、シュバリィー様。それとはじめまして、ラオネル様。私はレイラ・エミリ・グロブナーと申します。おふたりにお会い出来て光栄ですわ」

 レイラ様はそう言って、にこやかに挨拶をした。すると、シュバリィー様はチラッとこちらに視線を移した。

「ところで、後ろにいるのは……平……特待生のおふたり、でしょうか?」

「あ、ええ。紹介しますわ。私の専属従者のノア・マーカスと友人のアリス・フローレス嬢ですわ」

 レイラ様がそう言うと、俺とフローレス嬢は改めて深く頭を下げた。すると、シュバリィー様はきょとんとした表情を浮かべて口を開いた。

「友人……平民とですか?」

 シュバリィー様にそう訊ねられると、レイラ様は少しだけムッとして「そうですが、なにか?」と答えた。すると、シュバリィー様はハハっと笑い声を上げた。

「あぁ、いや失礼。……ふっ、なんでもないです、グロブナー嬢」

「そうですか」

 レイラ様は少し不服そうにそう答えると、シュバリィー様はまたしても込み上げてくる笑いを堪えながら、レイラ様を見つめて「面白い御方だ」と呟いた。

「友人……ん?……お前……」

 そう言って何故か突然、殿下はフローレス嬢の姿をじっと凝視した。フローレス嬢はなんだか少し気まずそうに目線を反らしている。もしかして、あの2年前一目惚れをした初恋の相手だと気付かれたか?

「あぁ!思い出した!お前、昨日転びそうになっていた女か!」

「え、ええ……えっと、その節はありがとうございました」
  
 そう言ってフローレス嬢は気まずそうに答えた。すると、レイラ様は驚いてフローレス嬢の方へ視線を移し小さく耳打ちをした。

「ちょ、ちょっと!アリス、貴方まさか殿下との『出会いイベント』済ましちゃったの!?」

「う……うぅ。そうなんですぅ……」

 フローレス嬢は小さな声でそう言って半べそをかき始めた。

 あぁ、出会いいべんと……レイラ様からそういえば、そんな事聞かされてたな。俺とは入学式の会場で。殿下とは……確か、学校のエントランスで転びそうになるひろいんを偶然殿下が助けるという出会いだったはず。

 俺がそんな事を考えていると、突然殿下は何やらウンウンと頷き始めた。

「そうかそうか。まぁ、そんな気まずそうにするな。仕方ない事だ。お前もに惚れてしまった1人なんだろ?」

「……は、はい?」

 フローレス嬢は目を丸くさせながら思わず聞き返した。

「恥ずかしがるな、恥ずかしがるな。平民が皇太子である俺様に少しでも近づくには、婚約者のレイラ嬢に取り入るのが確かに一番手っ取り早いからなぁ。ウンウン」

 殿下がそう言うと、あまりの頭お花畑な発言にレイラ様もフローレス嬢も口を開けてポカーンとしていた。
 俺も殿下のバカさ加減がここまで悪化したのかと思うと、ため息しか出てこない。あ、いつもの事か。

 そんな俺達に対して殿下は突然フローレス嬢へと近づいて、クイッとフローレス嬢の顎を持ち上げた。

「まぁ、平民だとても魔力持ちでお前みたいな上玉……そうだな。妾くらいにはしてやってもいいがな」

 殿下はそう言って自慢家な表情を浮かべた。

 ん?このやりとり……ハッ!まさかこれはレイラ様から散々聞かされた、皇太子ルートに入ったときのセリフってやつじゃないか!?流石のフローレス嬢もあんな間近で実際にげーむでの体験したら、殿下にときめくんじゃ……そうなればレイラ様も婚約破棄できて万々歳だけど……俺はそう思ってフローレス嬢の顔を少し覗いてみた。

「………………(物凄く嫌そうな顔)」

 うん。
 やっぱり皇太子ルートは駄目みたいだ。

 まぁ、あんな事言われて惚れちゃったら、ただの変態ですもんね。はは。

 しかし、そんな光景を見ていた周りの何人かのご令嬢は「い、嫌~!!」と叫び始めた。そして「やっぱりあの平民、可笑しいと思ったわ。なんて卑しいのかしら」と眉をひそめてヒソヒソと話し始めた。すると、そんな周りの声に気付いたフローレス嬢は、ハッと我に返り殿下を突き飛ばして慌ててレイラ様の方へ視線を移した。

「ち、違います!そんな理由でわ、ワタシは……!!」

「分かってるわ、大丈夫よ。だからそんな半べそかかないで、アリス」

 レイラ様はそう言うと、今度は殿下の方へと視線を移した。

「殿下?」

「な、なんだ」

「殿下のその俺様キャラは正直、イタイ男って奴ですわ」

 レイラ様はそう言ってにっこりと微笑んだ。

「……は?どういう意味だ、それは」

 微笑むレイラ様に対し、殿下は目に角を立てた。
 場の空気が一気に凍り始めたが、そんな中でもレイラ様はにっこりと微笑んだまま話を続けた。

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