最も死に近い悪女になりました(完)

えだ

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20話

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 ノエルの提案は、確かにとても良い案だった。
バートン卿の騎士団長としての役割が、私を守り、そして見限った際に殺すことだったとすれば、バートン卿が離宮に常在することは本来おかしなことではなかった。

 ただ‥お互いに、過去の満月の夜のことを思えば気まずさしか残らない。

「おはようございます、皇女様」

「‥おはようございます、バートン卿」

 ノエルの案が採用されて、バートン卿は私の近くにいるのが常になった。『“何百回交わった”ことを考えてしまって嫌です』と口に出してしまえば、バートン卿は『やっぱり死にます』と平然と言ってのけそうだから、私は平気な顔で過ごすしかなかった。

 レオンとテッドは更に護衛が増えたことに、すごく違和感を感じているみたいだった。
 元々の護衛騎士からすれば、俺たちが信用できないのか、といった気持ちになってしまうかもしれないし、どういう経緯で騎士団長が離宮に来たのかも気になるところだと思う。

 まぁ‥素直に話せないから心苦しいんだけど。

 最近変わったことは他にもあって、新人メイドのベルタがやけに私に質問してくるようになった。

「皇女様、何故奴隷を解放したのですか?」
「何故飲酒を辞められたのですか?」
「もう夜に男性を部屋に呼ばないのですか?」
「バートン卿とノエル様は何故お近くで護衛されることになったのですか?」

 ‥と、まぁこんな感じに2人きりになると、何故か探るように聞いてくる。

 それに、ベルタは私の反応を推し量るように、敢えて私の目の前でを繰り返した。
 お皿やティーカップを割ったり、私のドレスの裾を踏んだり。次から気をつけてねとだけ言うと、怒らない私に驚くような反応を見せていた。

 たぶん、何かあるなぁこれは。
差し詰め、誰かに私の様子を観察させられている?ベルタは元々王宮のメイドだったし、王宮内の誰かが私を観察する目的で送ってきたんだろうな。
 まぁ、誰かと聞かれると心当たりが多すぎるんだけど。

 サリーに聞けば誰がベルタを送ってきたのかわかると思うけど、正直聞いてもキリがないというか‥。それに、もしもサリーまでそのの協力者だったとすれば、中々にショックが大きい。
 まぁ、全然あり得ることなんだけどね。王宮だってただ私を放置して終わりじゃなくて、私の様子を把握する必要があるもの。

 ーーそう思ってベルタに対する違和感を見て見ぬ振りをしていた私は、更なる死の危険がすごそこに迫っていることに気付くことができなかった。


 *王宮にてーー

 皇后の元にベルタからの手紙が届いた。その手紙を見た皇后は、酷く顔を歪ませて嫌悪感を滲ませた。

「‥‥なんですって‥?」

 手紙の中身は、ベルタから見たサマンサの印象だった。彼女は酒も男もやめ、従者に対しての態度も良く、ベルタが敢えて失態を犯しても怒ることすらないという内容だった。

 元々側室だった皇后は、当時正妃であったサマンサの母への嫉妬心が強かった。皇帝の愛を一心に受け、身も心も美しい彼女を憎んですらいた。
 そんなサマンサの母が病で死んだ時、現皇后はやっと嫉妬心から解放されたと喜んだのだが。
 皇帝が愛したのは美しい母に瓜二つだったサマンサだった。非の打ち所がないサマンサに、皇后は再び苦しむことになる。

 そんなある日、突然狂い始めたサマンサを見て皇后は心が舞い上がるような気がした。皆がサマンサに失望していくたびに皇后は満たされていった。

 それでもサマンサのことを完全に見放そうとしない皇帝に苛々が募っていく。サマンサがどこまで落ちていっても満足しきれない皇后は、ついにサマンサの死を望むようになった。

 そのための布石としてベルタを送り込んだというのに、ベルタから届いたサマンサの情報は、皇后が望んでいたサマンサ像とは真逆のものだった。

「‥‥消さないと」

 皇后は不気味にも瞳孔をくっきりと開かせて、ひとりそう呟いた。
もしも、サマンサが改心したと皇帝の耳に入ってしまったら‥。周囲の人々が、サマンサを再び認め出したら‥。皇后はまた自身が嫉妬の鬼になることが恐ろしかった。

 皇后は、暗殺者を雇うことにした。騎士団長がサマンサの身近にいることを踏まえて、ひとりではなく複数人を使うことにした。

 ここからサマンサに向けての怒涛の暗殺計画が幕を開ける。
ただし皇后はサマンサがリセット魔法を使えるということを、もちろん知る由もない。

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