45 / 123
44話
しおりを挟む今回確かめたことで『猫の正体はレオン』であり、私が負わせた傷はリセットをしても『持ち越される』ことがわかった。
いつもと変わらず爽やかに笑うレオンを見ていると苦しくなってしまうけど、彼は敵なのだ。
レオンの正体が分かったけど、テッドとノエルにはまだ言わないでおこうと思う。
仮にレオンが『正体がバレた』と気付いたときに2人に危害が及ぶかもしれない。
魔女が猫を止めているうちは猫は私に危害を加えないだろうから、いまはバートン卿が帰ってくるのを大人しく待つべきだと思う。
1週間後ーーー。
今日は公爵から依頼されたピアノ演奏の日。
思いの外細々と出番を貰っていると思う。ルイーズ嬢のパーティーと同じ規模の催し事なんて滅多にないから、今回も演奏会場は地元の小さなお祭りなのだけど。
レオンは記憶を持ったままリセットしている。だから私はこの間の情事に違和感を持たせないよう、時折レオンのことを熱っぽく見つめることにした。
レオンはその度に少し頬を赤くして、困ったように眉を下げている。
私がレオンの正体に気付いていると悟られない為には、レオンに気があるふりを続けていかなくてはならない。
そのうえ、出来る限りリセットをしたくないけれど、ある日を境に突然全くリセットをしなくなることにも違和感を与えてしまうはず。
だから私は2日に一回だけ、レオンの目を誤魔化す為にリセットを行っている。
そんな中迎えた今日のピアノ演奏では、早速事件が起こった。
ドラージュ公爵が派遣してくださった沢山の騎士たちがパタパタと倒れだしたのだ。
倒れている波はまだ私たちからは距離がある。騎士に四方を囲まれたピアノと私は、思わず演奏をやめてそちらを見やった。
たちまち事態に気付いた市民たちからも悲鳴があがり始め、会場は一気にパニックになったのだ。
なにかしら‥?毒‥?
「こちらへ!」
テッドに腕を引かれながらピアノから離れた。ノエルとレオンもすぐ近くで私を守ってくれている。
ノエルから渡された布で口元を覆いながらその場を離れようとすると、レオンがその場から突然駆け出していった。
「レオン!どこへ行く!」
テッドがレオンに声を掛けるも、レオンは大勢が倒れている方へと自ら近づいていく。
そしてーーーザシュッ、と血飛沫をあげながら見知らぬ男の背中を斬りつけたのだった。
「え?暗殺者?見つけるの早っ」
ノエルの言葉にテッドは頷く。
「あいつは昔から、人より秀でたものを持ってる奴だった」
「へぇ~!すごいんだね!正直尻尾振ってるだけのワンちゃんだと思ってた」
ノエルったら‥可愛い顔して平気で毒を吐くんだから‥。その“ワンちゃん”は実は“猫”で、貴方はレオンに負けたのよ‥。
結局この日の暗殺者はレオンが斬り付けた1人のみが捕らえられた。背中を斬られたことでふらふらになっていたけど命には別状がなく、公爵邸に移送されていった。
ちなみにバタバタ倒れていった人たちは皆無事だった。どうやら撒かれていたのは毒ではなく噴霧化された睡眠薬のようなものだったらしい。
暗殺者の仲間は他にもいたのかもしれないけど、レオンが1人を斬りつけたのを見て分が悪いと思い撤退したのかもしれない。
結果、死人はゼロ。リセット魔法を使わなくて済んだのだった。
ただ私は今日の騒ぎを見て心が痛んだ。私の命を狙っている暗殺者たちは、私以外の人々にも平気で危害を加えようとする。
ピアノ演奏を通して人々に音色や癒しを届けたり、ピアノの良さを知ってもらいたかった。
リセット魔法もあるのだし、私だけが狙われるのならそれでいいと思っていた。
だけど一般の人にも危害が及んでしまうなら‥大手を振ってできることではない。今回誰も死ななかったとしても、人々の心に植え付けられた恐怖心は消えるものではないし、倒れた人々はその拍子に怪我をして流血している人もいる。
リセットをしたとしても、今回に至っては暗殺者の全貌がよくわかってない。レオンが斬り付けた男を事前に確保できても、他の暗殺者たちがどう動くか分からない。今回よりも被害が大きくなってしまう可能性もあるから、迂闊にやり直すこともできない。
今後もピアノの演奏を続けていいものか考えものだけど‥幸いにも暗殺者を捕らえることに成功したし、これで首謀者にまでつながればいいな‥。
ここから先の尋問は公爵にお願いするしかないわね。
0
あなたにおすすめの小説
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる