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151話 コナーの過去6

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 作戦決行の日、僕はいつも通り実験をされていた。

 この後部屋に戻っている最中は研究者のような男に連れられて行くだけなので、その時にカゲ君が何とかして僕を連れて行ってくれるらしい。

 そして、僕の役割はここから出るための道をカゲ君に教える事だ。

 僕はここに連れてこられている時のことを微かに覚えていた。

 微かに覚えているだけでもその記憶を鮮明に思い出すことが出来るのが僕の能力だ。

 僕はこの能力を使ってカゲ君と一緒に外まで出るというのが僕達の作戦だった。

 僕達の頭ではそこまでの計画しか建てることは出来ずに、それからどうやって生きていくのかなどは考えていなかったが、その時はとりあえず脱出する事で精一杯だった。

 こんな生活がこれ以上続くなど耐えられなかった。

 そのため僕達は焦っていたんだ。

 とにかく僕はこの実験が終わったらここからカゲ君と脱出することだけを考えて、この実験を乗り切ろうとした。

 その実験はいつも通り僕の体に色んな薬品を塗ったり飲ませたりするものだった。

 とても痛いし、とても気持ちが悪かった。

 けど、これが終わればここから脱出できると思えばその程度何ともなかった。

 そして何種類かの薬品を僕に使い、最後に1粒のカプセル錠を飲まされて実験は終わった。

 僕は拘束具などから外される。

 僕はその瞬間外に全力ダッシュしてみたが、研究員のような人にすぐに連れ戻され、しっかりと僕の事を掴んで部屋まで送られた。

 僕はいつも以上に周りをキョロキョロとした。

 周りにはカゲ君の姿はまだ見えない。

 薬品のせいかぼーっとする頭を必死で動かし、カゲ君を探す。

 そうしていると、いきなり僕を掴んでいた研究員の人が燃えてそのまま塵となった。


「コナー君、行こう!」

「カゲ君!」


 僕はすぐ後ろからカゲ君が来てくれたことに気づいた。

 カゲ君は本当に魔法のようなものを使って僕を救ってくれた。

 カゲ君は仕事をこなしてくれた。

 次は僕が仕事をしなくてはならない。

 そう思い僕は記憶を巡らせる。

 
「…………あれ?」


 僕は違和感に気づく。

 古い記憶から順番に僕の記憶が薄れていっていたのだ。

 僕は焦った。

 幸いなことにここに連れてこられた時の記憶はまだ覚えていた。

 だけど、これもいつなくなってしまうか分からない。

 僕は生まれて初めての現象に戸惑いを隠せなかった。


「コナー君、大丈夫?」

「あ、あぁ、うん、大丈夫だよ。」


 僕は自分に大丈夫だいいきかせた。

 僕は記憶をたどっていき、どこを通ったのか思い出す。

 僕は廊下を見るとどこを通ったのかがまだ鮮明に覚えていた。

 僕はカゲ君を連れてここから出るための廊下まで走った。

 間もなくして近くから警報が鳴り響き出す。

 そして女の人の声で僕達の居場所らしき場所を伝えている。

 僕達は急いだ。

 迫り来る人達はカゲ君が全員塵に変えていっていた。

 僕はその記憶すらも少しづつ薄れていくような感覚に陥り、焦って廊下の場所まで辿り着いた。

 後はこの長い廊下を渡りきるだけでいい。

 そうしたら僕がそこに着いているハッチのような場所にある20桁の暗証番号をいれれば良いだけだ。

 僕達は廊下を走った。

 廊下はとんでもない長さだった。

 到底僕くらいの体力の子供が走れる長さじゃなかった。

 しかし、カゲ君はそんな僕を見かねてか、僕を抱えて走り出した。


「ちょ、ちょっとカゲ君!? 何やってるの!?」

「ここを真っ直ぐ走ればいいんだよね? だったらこっちの方が早いから。」


 カゲ君はそう言って僕を抱えて走り続ける。

 その速度はまるで車に乗っているかのような速度だった。

 しばらくすると、あの時の扉のハッチが見えてきた。


「あった! これが出口だよ!」

「本当!?」


 僕達はそこでハイタッチをして互いに喜びあった。

 後は僕が暗証番号をいれれば良いだけだ。

 暗証番号は…………。

 僕は心臓が跳ね上がる感覚を覚えた。

 暗証番号が分からない。

 僕の記憶からその記憶までもが薄れていっている。

 
「開けられそう?」

「う、うん! 大丈夫!」


 僕は口が裂けても暗証番号が分からないなんて言えなかった。

 僕は大体で覚えている暗証番号を打ってみる。

 しかし、当然のごとくその暗証番号は当たらない。

 僕は焦って何となく覚えてる暗証番号を適当に撃ち込む。

 そうしばらくやっていると、なんとなくで入れた暗証番号のひとつが当たったようで、ハッチが開いた。

 しかし、その瞬間、1発の銃声が聞こえた。

 僕はびっくりして振り返る。

 そこには、胸を撃ち抜かれたカゲ君が居た。


「ば、化け物が! 死ね!」


 銃のようなものを持った研究者のような人や警備員のような人がカゲ君に向かって何発も何発も発砲した。

 しかし、カゲ君は倒れない。

 カゲ君はそこに仁王立ちしたまま、僕の事を守るように立ちはだかっていた。


「カゲ君!」

「こっちに来るな!」


 僕はカゲ君に駆け寄ろうとするが、カゲ君は大声を出して僕を遠ざけた。


「僕は大丈夫、コナー君は先にいってて!」

「け、けど…………。」

「大丈夫! 僕は必ずコナー君の元に帰るから、だから外で、どこか遠くのところで待ってて!」

「…………。」


 カゲ君のその言葉を聞いてますます僕は一人で行きたく無くなった。

 カゲ君は僕を守るために自分を犠牲にしてるんだ。

 その事は幼い僕でも理解出来た。

 けど僕はカゲ君の頑張りに応えるためにも、ハッチの外へと逃げ出した。
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