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178話 過去8
しおりを挟む馬車の中で俺達は何も話さずにただ時間を潰していた。
両者相手のごまをすっていたのもあり、世間話をする様な雰囲気でもなかったし、中央教会の長はなんでこんなやつなんかという雰囲気をダダ漏れにしていたため、俺からなにか質問をする様な感じでもなかった。
馬車は2時間ほどかけて俺達を目的地まで運んだ。
道中では日曜の現人神様を象った象などが沢山あり、中心地に近づくにつれてどんどんと建物も煌びやかなものになっていく。
成金達の道楽と言った感じがして虫酸が走った。
ここらの家を壊してその装飾を売っぱらってしまいたい気持ちに駆られるが、普通に犯罪なのでやめておいた。
やや経って俺達は目的地へと着いたようだ。
中央教会の長に促されて俺は馬車を降りた。
馬車をおりると金の鎧に身を包んだ数人の騎士のような人達に取り囲まれた。
俺はびっくりしながらも、これが持ち物検査の様なものだと伝えられ、素直に従う。
身体中をまさぐられ、もう一度スキルの検査をさせられたりするなど、ものすごい徹底ぶりだった。
一通り検査が終わり俺はそのままその人達に挟まれながら先へと進んでいった。
史上最悪の両手に花だ。
まぁ、ここを管理している人に会いに行くのだ、仕方が無いだろう。
「…………ここから先は日曜の現人神様の御前です、ご無礼のないように…………。」
「は、はい。」
俺は緊張しながら進んでいく。
日曜の現人神様はそれ事スキル至上主義社会のトップだ。
それこそトップクラスのスキルを持っているはずだ。
俺がどうあがこうとも一瞬で殺せる程の力を持っているだろう。
日曜の現人神様の力は何かあった時ように伏せられているが、一瞬にて数千の相手を塵に変えただとか、一瞬にて畑いっぱいの作物を成長させた等ととても人間業ではない逸話が残されている。
寿命も無限にあるらしく、日曜の現人神様が居たという歴史は300年前ほどからある。
それほどまでの人だ、信仰をしていなくともビビるに決まっている。
俺はとんでもなく大きな城の城壁をくぐっていった。
城下町は活気こそ無いものの、上品でいかにもお金持ちと言った人たちが住んでいるようなのでとんでもない大きさの屋敷が立ち並んでいた。
ここが本当の成金達の巣窟か、この人達の余った金の半分でもスラムに流れれば多くの人が救われるというのに…………。
本当に格差は酷い。
が、それに負けないように過ごしてかなくてはと今まで以上に思った瞬間だった。
その屋敷を見て行くと、次にまた城壁が現れた。
ここが日曜の現人神様の住居なのだろう。
その城壁の上にはものすごい数の兵器が備わっており、中には聞いたこともないようなものまであった。
俺はその横にある扉をビクビクしながら通っていく。
周りの中央教会の長なども少し緊張した様子だった。
それでも中に進んでいくと、今度は広い庭に出たその先を見るととんでもない大きさをしたドーム状の何かがあった。
「あそこが日曜の現人神様の住居です。」
「あそこが…………。」
ドーム状の建物は黒く光っており、まるでゴキ…………。
いや、これ以上は言わないでおこう。
とにかくあれがものすごくいい構造なのだろう。
やはり位の高い人達の感性は分からないな。
俺はその黒いドーム状の建物の近くまで連れてこられた。
しかし、そこには入口は見えない。
どうやってはいるのだろうかと思っていると、近くにいた中央教会の長がその黒い建物の1部に手を当てた。
「夢想というスキルを持っている少年を連れてまいりました、入室の許可を。」
「…………許可する。」
中央教会の長がそう言うと、突如としてあのドーム状の所に丸い穴が空いた。
「では、私たちはここまででおいとまします、くれぐれも無礼はないように。」
「わ、分かりました。」
そうか、この騎士たちであろうとこの中には入れないのか。
…………いやいや、だとしたら俺はなんで入れるんだよ!?
それほど俺のスキルは強いものなのか!?
そんなに強いスキルを持っていたのだとしたらオルクスだって救えたはずだ。
俺がそんな強いスキルを持っているなんて甚だ信じられない。
それでもここまで来てしまっては入るしかない。
中央教会の長はその穴の中を進んでいく。
俺もそれに続いて穴の中に入っていった。
入った中は暗いようで周りは見えると言った不思議な空間になっていた。
特に光源もなく普通なら真っ暗でもおかしくないような状態だが、そのお陰で特に転んだりすることなく進むことが出来た。
穴に入ってからは少し歩いた。
それ程日曜の現人神様の警備を厳重にしているということなのだろう。
周りに人などはいないようには思えるが、兵器などが沢山置いてあるのだろう。
そして俺達が怪しい動きをしたら即殺、という訳だろう。
俺はオドオドしたりしていると間違って殺されてしまいそうなためピシッとした姿勢で歩いていった。
やや経って中央教会の長が立ち止まる。
「ここです。ここの先に日曜の現人神様が居ます。」
遂に来てしまったか…………。
俺は怖くて仕方がなかったが、気を強く持つように気をつけた。
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