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181話 過去11
しおりを挟むその日から俺は何日にも渡って監禁され続けた。
1日3食、必要最低限の食事があの黒い人によって運ばれてくる。
食事が運ばれてくる度に俺は黒い人に何度も何度も外に出させて欲しいと頼んだり、ある時は強硬手段を使ってでも外に出ようとしたりしたが、何をやろうともあの黒い人に阻まれて出ることは叶わなかった。
そのうちに俺は力がついていった。
俺はここから少しでも早く出られるように筋トレを始めたのだ。
やりすぎた筋トレをして俺が死んでしまうとまずいので何かがあれば直ぐに俺に栄養を与えたり、回復させたりしてくれるため、俺の体は異常な程強くなっていく。
そんな事をしてしまえば俺が多く魔力を吸収してしまうため何度もそれを止められたが、俺は筋トレをするのをやめなかった。
流石に黒い人は日曜の現人神様の付き人なだけあって俺を部屋から逃がすようなことは絶対になかった。
鍛錬を積んでいる期間が明らかに違うのだ、その強さに大きな差が開いていても何もおかしくない。
ここは俺を閉じこめるためにできたような場所でどうやっても自力で抜け出すことは出来なかった。
しかし、それでもこうやって抵抗を続ければ一月に何回かだけでも会いに行けるように出来るかもしれない。
日曜の現人神様、いや、もうこの際様なんて付けない。
日曜の現人神は強くなるためには俺の力が必要みたいだし、それが使えない状況になるくらいなら俺の言うことをある程度は聞いてくれるだろう。
俺はそう思って何があろうとも無茶な筋トレを続けた。
黒い人もその度に色んな方法を用いてそれを辞めさせようとするが、それのみんなに会いたいという想いの前には敵わなかった。
そんな事が何日も続いたある日、いつも通りに黒い人が俺の部屋に入ってきた。
「…………そろそろ俺の事を出す気になりましたか?」
俺はどうせ出してくれはしないと思いながらもそう言う。
「…………着いてきてください。」
「えっ!?」
男の人はドアを開け放ち、先に立った。
やっと外に出られる、俺の努力が実ったんだ!
俺は心の中で喜びながらもそれを外には出さずにただ無表情で黒い人へと着いて行った。
外に出るとそこには様々なよく分からないものが置いてあった。
鉄の棒やよう分からない素材の玉など本当に意味がわからないものばかりだったが、直感的にこれは俺が逃げ出した時用の捕獲武器なのだと理解した。
やはりこれだけのものがあれば力ずくで逃げ出すのは不可能だったな。
それにしてもここまでして俺を逃がさない様にしてるなんて、こいつらにとって本当に俺は重要な存在なんだな。
そうなんだとしたらもう少し丁重に扱って欲しいものだが…………。
まぁ、外に出られるのならそれでいい。
俺はスタスタと歩いて行く黒い人へ着いていく。
この不思議な道はこの人の案内がないと俺はすぐに迷子になってしまいそうだ。
俺はピッタリと後をつけて歩く。
連れてこられたのはひとつの部屋だった。
外に出してくれるのでは無いのかと思いながらその部屋に入る。
「…………ソル?」
俺はそこにいるはずのない人物の登場に動揺する。
どういう事だ?
ソルは少なくとも教会に住んでいるはずだ、こんなところにいるはずが無い。
それに今のソルは…………拘束具で動けなくされ眠っていた。
俺はすぐさまソルに駆け寄ろうとするが、それは黒い人によって阻止されてしまう。
「どういうつもりですか!?」
俺は黒い人に詰め寄る。
「つまり、こういう事です、私たちにはあなたのお仲間をいくらでも殺す事ができるということです。手始めにあの教会の人間を全員捕らえました。」
「全員…………って、みんなは無事なんだろうな!?」
「えぇ、あなたが大人しくしている限りは無事ですよ。もし暴れたりこの前みたいに無駄な動きをしたら…………分かってますよね?」
「くっ!?」
それじゃあ、俺が教会に帰ることはもうできないのか?
というか、教会のみんなは俺のせいでこんなところに拘束されてしまったのか…………。
俺はどうなってもいい、みんなだけは助けなくては。
「…………分かりました。もうあなた達に従います。だから、この子達だけは教会に帰してあげてください、まだまだこれから将来性のある子達なんです。」
俺は必死に懇願する。
だが、黒い人はそれを見て鼻で笑ったような気がした。
「それは無理ですね、この人達一人一人が一騎当千の強さを持っていました、この人達を逃がしてしまえばあなたを助けるために何をするか分からないんですよ、だから逃がす事は出来ません。」
「でも…………!」
「あなたが変な行動を取ればこの人達が死ぬ、それだけです。精々生かしていてあげたいのなら変な行動を取らないことです。まぁ、あなたと同程度の自由は与えますので安心してください。」
今まで俺に自由なんてあってないようなものだった。
武器になりそうなものや暇を潰すものだって与えられない。
ただ質素な飯を食べて寝るだけの生活、そんなのが自由だとは思えなかった。
しかし、俺は何も言い返せずに黙って部屋に戻った。
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