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204話 アメリカ
しおりを挟む俺は近くの街にあった地図と方位磁針を拝借する。
流石に何も見ずにアメリカまで到達するというのは不可能だ。
少なくとも位置と方角は分からないと行くことは出来ない。
そして、俺は船を使おうと思うが、ひとつ余計な事を考えてしまう。
それは、どう考えても浮遊魔法を使って空を飛んだ方が安全で確実で早く目的地に到達できるという事だ。
船を使う時のように燃料が切れたり、船自体が壊れたりして行けなくなることもない。
まぁ、俺のスキルの輸送によってそんなことが起こることはほぼほぼありえないようだが、船を使うよりかは楽だ。
それに、そこまで行くために使う魔力もあまり早く飛ばなければそこまでのものでもなく、自然に周りから集められる範囲で使う事は可能だ。
それならばもう船よりも確実に浮遊魔法を使った方がいいという結論に至ってしまった。
俺は出来ればアメリカに行きたくは無い。
できるだけそれを阻止しようとしているくらいだ。
しかし、俺の思うことは全てモルフィスに筒抜けだ。
何かを考えたりすればその思考はモルフィスにも伝わってしまう。
モルフィスの考えも俺に伝わるので、俺の考えが伝わってしまったことも直ぐに伝わる。
まぁ、モルフィスがアメリカに行くというのは俺の目的にも近づくことになる。
俺のゆうちゃんは恐らくアメリカに居るだろう。
他の人類が住んでいる場所もここしかもう残っていないからな。
だからこそ、モンフィスには協力した方がいいかもしれないが、それは流石に出来ない。
だからそこ、抗うには抗うが、ゆうちゃんの所へいかせるために、今は俺の精神力は温存しておくことにしている。
モルフィスにはゆうちゃんの事も助けるように刷り込みをしている。
これの考えもモルフィスには伝わってはいるが、もうここまで来たらゆうちゃんを助けてやった方が楽なのではとモルフィスも思っているようで、少なくともゆうちゃんは助けてくれるみたいだ。
それならばモルフィスに協力などいくらでもするさ。
そうやって俺達はある程度協力しながら海を渡った。
目指すはニューヨークだ。
ニューヨークはここからから他のところと比べると近いし、それに人も沢山密集して住んでいるはずだから、ゆうちゃんや現人神もそこに居るかもしれない。
だからこそ俺達はニューヨークへと向かった。
ニューヨークにはそこまでの時間はかからずに着くことが出来た。
海上は思っていたよりも魔力が薄いなどといったことは無く、全然普通の速さで飛んでいくことができたからだ。
俺は海岸に降り立った。
その瞬間、四方八方から銃弾のようなもので体を撃ち抜かれる。
その後はまるで銃弾の雨の様だった。
初めは驚いてしまい、結界魔法をはるのが遅れ、銃弾を何発もくらってしまったが、すぐに結界魔法をはり、その後身体中を一瞬で治した。
周りを見ると誰も居ない。
スナイパーか。
それも四方八方に大量に居るみたいだ。
恐らく目的は俺を殺す事ではなく、あくまで時間稼ぎだろう。
四方八方に敵がいればそれを全員倒すのには時間がかかる。
だからそれを無視して行こうにも撃たれ続けていれば流石に俺も困る。
ある程度の速度を出して飛ぶことも出来るか、できる限り魔力は貯めておきたい。
海では魔力が貯められなかったため、他にもある程度魔力を貯めておきたいのだ。
しかも、その間もある程度攻撃を防いだり、攻撃をくらってしまえばそれを治すために魔力を消費してしまう。
だからといって全員を殺しにまわっていればそれこそ現人神の思う壷だろう。
俺がここに時間を割いているうちに精鋭を引き連れてここに来て俺を討とうという事だろう。
今の俺は本調子では無いし、そんな精鋭達で来られたら流石に負けてしまうかもしれない。
そうだとしたら、もう魔力など惜しんでいる余裕は無い。
俺は勢いよく飛び立った。
その速度にスナイパー達は反応できておらず、かなり精度が悪くなっている。
俺はその程度ならと結界ははらずに、最低限怪我をした時は自然治癒に任せてニューヨークの都市部に飛んでいく。
そこに人が居ることを願ってそこへ行くが、俺の希望は打ち砕かれる。
何故ならニューヨークの街並みは壊滅的だったからだ。
かつて堂々と林立していたであろう高層ビル群は見る影もなく、全てボロボロになっておりかなりの数が倒壊していた。
これじゃあ人間は住めなさそうだ。
俺は思いっきり落胆しながらも、次の所へと行く。
あの撃たれた場所から離れる事に攻撃される頻度は明らかに減っていっているため、進むのは少し楽になった。
俺は速度を落としてニューヨークを抜けていく。
その時、遠くに非常に大きな魔力を持った人間がいる事に気づいた。
これもモルフィスの能力だ。
俺はそこにゆうちゃんが居ることを願いながらそこへと飛んで行った。
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