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205話 ドーム状の建物

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 大きな魔力があった場所に俺が向かうとそこには非常に大きな黒いドーム状のものが見えた。

 あの建物には見覚えがある。

 間違いない、日曜の現人神の持っている建物に酷似している。

 モルフィスの怒りが激しくなる。

 あの建物への恐怖と憎悪。

 それはモルフィスの中で計り知れないものとなっていた。


「殺す殺す殺す殺す殺す!」


 俺の口からそんな言葉が漏れる。

 モルフィスは考えも無しに俺の体をそのドーム状の建物に向かわせる。

 その瞬間、俺を頭から何かが貫いた。

 この感覚、明らかにあのサイコキネシスを使う金髪男の攻撃だ。

 その時に俺の中の怒りも燃え上がる。

 その黒いドームの中から金髪男は出てきた。


「やぁやぁ、晴輝君…………いや、モルフィス君かな? どっちで言ったらいいんだい?」


 その金髪男は僕の方を見てそう言った。

 まさかこいつ、俺の中のモルフィスの存在に気づいているのか?

 俺は何も答えずに周囲に結界をはりながら、警戒して金髪男に対する。


「あぁ、答えないなら体の持ち主である晴輝君と呼ばせてもらうよ。」


 金髪男がにんまりしながらそう言う。

 そして、金髪男はぱんっと手を叩く。


「さぁて、問題! 僕は一体誰でしょう!」


 いきなり手を叩くものだからなにかの合図かと思い警戒したが、そんな事は無く、ただ話を始めただけだった。

 しかし、誰でしょうだと?

 俺は分かっていなかったが、モルフィスは分かっているようだった。


「お前は…………土曜の現人神だな?」


 俺は震える唇でそう言い放つ。


「正解! やっぱりモルフィス君は分かっちゃうかぁ。僕は君からしたら宿敵だもんね!」


 そう言って笑う金髪男に俺は思いっきり炎魔法を放つ。

 金髪男は少し遠くに居るためそんな攻撃も軽々かわしてしまう。


「あは、やっぱり君は短気だねぇ。モルフィス君が短気なのか晴輝君が短気なのかは分からないけど…………今回は戦う気は無いんだよ。」


 そんな訳ないだろう、戦う気がないのならいきなりあんな攻撃はしてこない。

 俺は何発も魔法を放つが避けられたり、攻撃をくらってもしっかりとダメージを減らしたりしてのらりくらりと俺の攻撃を回避していく。

 俺が魔力を吸収しようと近づくも、かなりの速さで逃げ回るため、これ以上はかなりの魔力を消費してしまいそうなので、一旦戦うのをやめる。


「…………戦う気が無いのなら何の用だ?」

「あは、怖い怖い、もうちょっと優しく喋れないのかい? か弱い僕にそんな言葉かけちゃダメだよ!」

「…………今ここで殺されたいんだな?」

「…………分かった分かった。要件だったね? えーっと、ちょっと着いてきて欲しいところがあるんだ。」


 着いてきて欲しいところ?

 明らかに何か企んでいるに違いない。

 どこかに行かされても俺は何かされる未来しか見えないため、絶対にどこにも行きたくない。


「俺はついて行かな…………。」

「あ、ゆうちゃんと教会のみんなもそこに全員居るからね。」

「分かった、ついて行こう。」


 ゆうちゃんや教会のみんなの元へ連れていってくれるならばすぐについて行くとも。

 なんなら場所を教えてくれればこいつを担いででも連れていく。

 罠だとか何だとかそんなのは関係ない。

 ゆうちゃんに会えるなら、教会のみんなに会えるなら俺たちはなんでもいいのだ。


「分かった分かった、連れていくから…………しっかり着いてきてね?」


 あの金髪男はそう言うと猛スピードで飛び始めた。

 初めは低空飛行をして家同士の隙間を塗って進んでいく。

 そして広いところに出たあとも色んな所を曲がったりして飛んでいく。

 こいつ、できる限り俺の魔力を消費させておこうという魂胆だな?

 確かにそうすれば俺の魔力は消費される。

 しかし、俺は常に箱を開け続けているため、体外魔力が消費されたとしても体内魔力は少しづつ蓄積されていく。

 それによってモルフィスの力がどんどんと取り戻せている。

 元々この箱を開けて魔力を取り出すためには魔力を吸収する能力が必要だったみたいだが、今俺の持っているスキルは夢殺だ。

 どんな魔力を吸収するスキルよりも遥かに強いスキルを俺は持っている。

 だから俺は今までとは比べ物にならない程の魔力を吸い出せている。

 時間がかかればかかるほど俺の力は強くなっていくのだ。

 奴らはそれがわかっていないのだろうか。

 しかし、嫌な予感がする。

 確実に俺の魔力を消費させるよりももっと大事な事を隠しているような…………。

 俺が考えながらもついて行っていると、金髪男が急に止まった。

 そして、耳を抑えて何かを聞いている。

 あれは…………無線イヤホン?


「うん、うん、分かった、じゃあもう準備は終わったんだね? うん、それならいいんだ。今連れていくよ。」

「…………誰と話している。」

「んー? 秘密、さぁ行くよ!」


 くそ、やられた。

 確かに時間をかければかけるほど俺は強くなるが、あっち側も時間をかければかけるほど強くなるようだ。

 あそこにいたままなら俺の魔力は消費されないのに強さだけが強くなっていくという状態だったから、それならば少しでも魔力を消費させていた方が良かった様だ。

 これならあの金髪男をぶん殴ってでも早く連れて行かせればよかった。

 まぁ、過ぎてしまったことをずっと言っていても仕方がない。

 俺は金髪男について行った。
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