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215話 最後の戦い6

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「陽夏! そいつは…………!」

「分かってる、今コナーに聞いた! けど、そいつを倒せば晴輝を元に戻すことも出来るかもって!」


 それは…………。

 まぁ、元に戻すことは可能にはなるだろう。

 俺の中に入っている意識はもう世界滅亡を目指している者はいない。

 だからこそ今なら戦闘にも参加出来るはずなのだが、今の俺にはそれが出来ない。


「すまない、今の俺には力が無くなってしまった、だから戦うことは…………。」

「わかってるって! 大丈夫、心配しないで、何があっても守るから!」

「っ!?」


 ゆうちゃんが俺の事をジト目で見ているような気がする。

 しかし、許してしまった手前何も言えないという状態みたいだ。

 …………俺にはもう陽夏を応援することしか出来ない。

 だが、あの土曜の現人神が言っていたことが本当なら、応援するだけでも、奇跡は起こせるかもしれない。


「最初っから本気で行くからね!」


 陽夏は初っ端から物凄いオーラを漂わせる。

 コナーもその後ろでとんでもない存在感を放っている。

 陽夏は俺の分身体に勢いよく斬りかかった。


【七月流華】


 陽夏のその華が咲くかのような可憐な一撃は俺の分身体を易々と切り裂くと思われた。

 しかし、実際はそんなことは怒らなかった。


「…………結界魔法だ。」


 俺達が幾度となく助けられたこのスキルのせいで今度は俺達がピンチに陥っているとは、皮肉なものだ。


「頑張れ!」


 俺はエールを送る。

 陽夏はそれに反応はしないが、きっとこの想いは届いているはずだ。

 陽夏の可憐な連撃は結界魔法の隙間を縫うように攻撃が当たっている。

 その姿はまるで俺達の敵を薙ぎ倒すヒーローのようだった。

 しかし、陽夏の攻撃は結界魔法によって防がれ、俺の分身体にはダメージが通らない。

 しかし、その瞬間、陽夏が攻撃した訳でもないのに俺の分身体の頭が弾け飛ぶ。

 その瞬間、陽夏の後ろで叫び声が聞こえた。


「コナー!」


 俺は奥にいるコナーのものに駆け寄る。

 コナーの頭も弾け飛んでおり、頭から夥しい量の血が溢れ出している。

 俺は微弱な魔力でコナーのことを治す。


「あ、はは、こうやってると最初に僕の事を治してくれた時の事を思い出すよ。」

「いいから、黙っていろ! 今は治療中だ!」

「…………ありがとうね、晴輝君、そして、盟友も、僕は君達にあえて幸せだよ!」


 コナーは俺の事を押しのけ、ほとんど治療が終わっていない血だらけの頭で前に進む。


「陽夏ちゃん! 聞いてくれ! 僕は君たちと出会えて幸せだった! ありがとう!」

「ちょ、ちょっと! そんな縁起の悪いこと言わないでよ! 一緒に帰るんでしょ!?」

「…………うん、そうだね。」


 コナーははにかむ。


「陽夏ちゃん、今隙を作る。だから、その間に魔力を練って。」

「け、けどそれじゃあコナーが!」

「君は! 君は晴輝君を助けたいんだろう! だったら、僕の事は気にしないでくれ! さぁ、魔力を練るんだ!」

「…………分かったわ!」


 陽夏はコナーの言う通り俺の分身体から距離をとって魔力を練り始める。

 まずいな、これは確実にコナーは死にに行っている。

 あんな怪我をしながら負荷のかかる能力を使ったら、どうやってももう命は助からないだろう。

 だが、そんな2人を俺はただ見ている事しか出来なかった。


「くっ、ぐぅ、あっ、あぁっ!? 痛い!」


 突然コナーが呻きだす。

 俺はコナーに近寄るが、手で制されてしまう。


「晴輝君、そっ……その、ま、魔力は………陽夏ちゃんの…ために取っておいて……………よ。」

「っ!?」


 コナーは、本当に死にに行っている。

 俺の夢にはコナーと過ごすことだって入っているって言うのに…………。

 だが、コナーは止まらない。

 コナーが呻き初めてから、俺の分身体の動きは止まった。

 何らかの方法によって動きを止めているんだろう。

 しかし、あれ程の強さの存在の動きを止めるなど、普通に出来ることでは無い。

 尋常じゃないほどの負荷が掛かっているはずだ。


「ぐうううぅ…………あっ。」


 その瞬間、コナーの体の糸が切れたかのように倒れた。

 コナーからは、もう、命の灯火は感じられない。


「コナー!」


 俺はコナーに駆け寄るが、それと同時に俺の分身体も動き出す。

 もうダメだ。

 俺はそう思った。

 しかし、そこへ向かって陽夏は歩き出す。


「ありがとう、コナー、これで決める。」


 陽夏は天高く飛び上がる。

 その姿はまるで天に輝く月のような凛とした姿だった。

 爆音とも無音とも取れるそんな音が鳴り響き、陽夏の魔力が増幅する。


【天月龍落】


 その技によって全ての勝敗が決まった。
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